潔癖症カウンセリング

潔癖症は、不安症の一種と考えられています。「潔癖」という行動自体は、実は表面的な問題（枝葉の問題）であり、その根底にある「不安」が原因となって引き起こされている結果に過ぎません。しかし、多くの方がその根本的な原因に気づいていないのが現状です。潔癖症の根本を理解し、考え方の偏り（認知の偏り）を修正していくことで、ご自身を苦しめている要因を解消することができますよ。

潔癖症は、単なる「綺麗好き」とは違う、つらい強迫観念です

綺麗好きな方はたくさんいらっしゃいますが、中には、「不潔であること」を極端に嫌い、「不潔でいることは絶対にいけないことだ」と強く感じて、周りから見ると少し異様に思えるほどの、潔癖さへの強いこだわりを見せる場合があります。ご本人も、その過剰な反応を繰り返す中で、相当に悩み、つらい思いをしている…。それが「潔癖症」であり、強迫性障害の一つとされています。

潔癖症がもたらす影響

状況がエスカレートすると、人間関係に亀裂が生じたり、場合によっては夫婦関係が壊れてしまったりすることにも繋がりかねません。最近では、除菌効果を謳う洗剤やスプレーなどのテレビCMが多く流れ、まるで国民全体を潔癖症へと誘導し、その傾向を助長するかのような状況も見られます。しかし、そうした情報に一喜一憂したり、惑わされたりすることなく、心に余裕を持った生活を心がけることが大切ですね。

近年、新型インフルエンザの流行や、様々なアレルギーを持つ方が増えていることなどもあり、テレビやインターネット、新聞、雑誌など、あらゆるメディアで、目に見えない菌やウイルスなどの恐ろしさに関するニュースが、世界中から日々報告されています。そうした情報が社会に溢れているせいもあって、日常生活において「菌」は、私たちにとって良くも悪くも、非常に身近な存在になっています。

しかし、そのような「菌」を意識しすぎるあまり、最近では「潔癖症」になってしまう人が急激に増加しており、特に若い女性にその傾向が多いと言われています。

潔癖症の定義と症状

潔癖症とは、「強迫神経症」の一種であり、別名「不潔恐怖症」や「潔癖性」とも呼ばれています。細菌や病原菌などに汚染されることを極端に恐れ、汚れが体に付着しないように、常に特定の行動（例えば、過剰な手洗いや掃除など）をしてしまう症状です。

何度手を洗っても、「まだ汚れが落ちていないのではないか」という気がして、繰り返し手を洗い続けてしまう、というのが代表的な症状です。潔癖症の症状が悪化すると、手洗いなどに何時間も費やしてしまい、日常生活に大きな支障をきたしてしまうことも少なくありません。

手だけでなく、体全体が汚れているような感覚があると、一日に何度も、それも長時間お風呂に入り、石鹸でゴシゴシと洗いすぎて、かえって肌が荒れてしまう、といったことも起こります。誰でも、不潔なものに対して不快感を抱くことはありますが、このように身体的な傷まで作ってしまうようでは、心身ともに、ますます自分自身を苦しめることになってしまいます。

「綺麗好き」と「潔癖症」の違い

単なる「綺麗好き」は、「潔癖症」とは明らかに違います。「綺麗好き」な人は、清潔さを保つことを、生活の中にバランス良く取り入れることができ、日常生活に支障が出るほど掃除に没頭したりはしません。

それに対して、「潔癖症」の人は、自分が「不潔だ」と感じる特定の物や状況に対して、異常なほどの恐怖心を抱き、ご自身が安心できるまで、徹底的に綺麗にしようとします。しかし、不思議なことに、それ以外の部分では、一般的には汚いと思われるような物であっても、ご本人が「不潔だ」と感じなければ、特に気にせず、そのままの状態で過ごしている、という特徴が見られることもあります。

潔癖症がエスカレートしてしまうと、友人を家に招くことができなくなったり、他の人がわざわざ作ってくれた料理やお弁当を食べることができなくなったりして、その結果、相手を不快にさせてしまうことも多くあります。さらに、パートナー（夫や妻）や自分の子どもに対しても、同じレベルの清潔さを強制してしまい、対人関係に深刻な影響を及ぼすことも少なくありません。

もしかして潔癖症？セルフチェック

以下の項目に、あなたはいくつ当てはまりますか？

• 床に落ちたものを拾うことに、強い抵抗を感じてしまう。
• 手を何度洗っても、まだ汚れているような感じがする。
• 温泉やプールなどが、不潔に思えて苦手である。
• 他の人が使ったパソコンのキーボードに触れることができない。
• 病院や施設などで用意されている共用のスリッパを履くことができない。
• 電車やバスのつり革が汚く思えてしまい、触ることができない。
• 念入りに掃除をしても、「まだ不潔なのではないか」という考えが頭から離れず、恐怖心さえ感じてしまう。
• 友人や家族など、親しい間柄であっても、飲み物を回し飲みすることができない。
• たとえ恋人であっても、手を繋いだり、体に触れたりすることを拒んでしまうことがある。
• ドアノブに直接触れることが難しく、もし触れてしまっても、その後すぐに手を洗わないと気が済まない。
• トイレの便座に、菌が付着しているような気がして、そのまま座ることができない。
• レストランなどで外食をする時に、厨房の衛生状態が異常に気になってしまう。

強迫観念と強迫行為

「強迫観念」とは、「自分の体に汚れがついてしまったのではないか」「このままでは病気になるのではないか」といった、強い不安を伴う思考のことで、考えないようにしようと思っても、頭にこびりついて離れません。

「強迫行為」とは、その強迫観念から来る不安や恐怖を取り除こうとするあまり、例えば「長時間にわたって手を洗い続ける」「何度も同じ場所を消毒する」といった特定の行動を指します。

しかし、この強迫行為によって得られる安心感は、一時的なものに過ぎません。そのため、また時間が経てば、再び「強迫観念」が湧き起こり、それを打ち消すために「強迫行為」を繰り返す… という「悪循環」が生み出されてしまうのです。

問題の本質

潔癖症に悩んでいる方の多くは、「不潔」であることを「異常なこと」「絶対にあってはならないこと」とみなす傾向があります。そのため、必死になってそれを排除しようとしてしまいますが、それによって強迫観念が消えることはなく、むしろ際限なく恐怖心を増幅させ、潔癖症をさらに進行させてしまうのです。

問題なのは、「不潔」であることそのものではなく、「不潔」であることを「絶対にいけない事だ」「恐ろしいことだ」と捉えてしまう、その考え方（認知）にあるのです。

潔癖症にも、必ず原因があります

潔癖症の根底にある考え方や行動は、いわば氷山の一角であり、その水面下には、抑圧された「不安」や「恐怖心」が根本原因として存在しています。そして、何らかのストレスなどをきっかけにして、「潔癖症」という形で表面化しているものなのです。

その他にも、幼少期に不潔な物に触れて、非常に大きなショックを受けた、といった体験が原因となることもあります。いずれにしても、潔癖症の心の奥底には、何らかのネガティブな感情や経験が潜んでおり、それが症状を引き起こしていることに違いはありません。

人が触ったものに触れられない、というつらさ

潔癖症になると、トイレのドアノブや電車のつり革など、不特定多数の人が触ったものに対して、「汚い」という強い感情を抱き、それを過度に避けようとする行動に出ます。

最近では、除菌効果を謳う洗剤やスプレーなどのテレビCMが頻繁に流され、それが人々の菌に対する不安感を煽り、過剰な反応を引き起こし、結果的に潔癖症の方が増える傾向にある、とも言われています。そうした社会的な風潮に惑わされすぎず、もう少し肩の力を抜いて、余裕を持った生活を心がけることも大切ですね。

潔癖症のこだわりの強さは「強迫性障害」のサイン

小さなお子さん、特に赤ちゃんがいるお母さんなどは、衛生面に気を配り、菌に対して敏感になるのは、ある意味当然のことかもしれません。しかし、お子さんも成長するにつれて、様々な菌に触れることで免疫を獲得し、徐々に体も強くなっていきます。

しかし、先ほども触れたように、最近の洗剤などのテレビCMでは、まるで家の中のありとあらゆる場所に恐ろしい菌が付着しているかのように、神経質なまでの除菌や殺菌を訴えかけるものが多く見られます。こうした情報が、結果的に強迫性障害である潔癖症の傾向を、さらに煽る結果となっている可能性も否定できません。

周囲を巻き込んでいないか、振り返ってみましょう

潔癖症の傾向は、若い女性に多い、というデータもあります。そのため、例えば、小さなお子さんに対して、神経質に「汚い！」と怒ってしまったり、あるいは旦那さんに対しても、ご自身と同じレベルの清潔さを求め、ヒステリックになってしまったりすることは、健全な家族関係を築いていく上で、大きな問題となり得ます。

潔癖症特有の完璧さが、周囲を緊張させることも

潔癖症の方自身が、幼い頃から親御さんに「常に綺麗でいるように」と、厳しくしつけられてきた、という経験をお持ちのことも、実は少なくありません。

相手の一挙手一投足を取り上げて、いちいちイライラしてしまうのは、ご自身の心の健康（精神衛生）にとっても、決して良いものではありません。聖心こころセラピーでは、そうした強迫観念や強迫行為の根底にある考え方の偏りを改善する心理療法なども行っています。もし、強迫的な考えや行動に悩んでいらっしゃる場合には、ぜひ一度、ご相談にいらしてください。

カウンセリングの中で、どうしてそのように考えてしまうのか、その原因を一緒に探り、不潔なものに対する過剰な恐怖心を和らげていきます。そして、ご家族やご友人、恋人といった大切な人たちと、明るく、温かい関係を築いていきましょう。

潔癖症克服に向けて、認知行動療法などが有効です

潔癖症は、「とにかく綺麗にすれば大丈夫」「菌を完全に取り除き、無菌状態にすれば安心できる」といった、単純な問題ではありません。

関係性への影響と孤独感

認知行動療法によるアプローチ

そうならないためにも、「不潔＝絶対にいけない事」という、もしかしたら幼少期から潜在意識に刷り込まれてしまったかもしれない、歪んだ考え方を、より現実に即した、バランスの取れた認識へと修正していくことが重要です。そうすることで、過剰な不安や恐怖から解放され、快適な日常生活を取り戻すことができるようになります。

名古屋聖心こころセラピーでは、認知行動療法をはじめとする、あらゆる心理療法やカウンセリング、コーチングの手法を用い、この潔癖症という、ある種の「世界の抑圧」からの解放を目指します。

潔癖症からの解放へと導くための手段と対策は、私たちが心得ています。