過敏性腸症候群カウンセリング

過敏性腸症候群(IBS)は、実はご自身の心のあり方や考え方のパターンが大きく影響していることがあります。下痢型、ガス型、お腹の音(腹鳴り)型など、症状は様々ですが、いずれにしてもご本人が抱える不安やつらさは計り知れないものがあります。周りの人にはなかなか理解されにくく、学校や職場、通勤・通学など、日常生活の様々な場面で行動が制限されてしまい、人生において大きな損失となっていることも少なくありません。
過敏性腸症候群は「恐怖症」とも言える側面があります
過敏性腸症候群(IBS)に関するご相談は、中高生、大学生から社会人の方まで、非常に多く寄せられています。ストレス社会と言われる現代ならではの「現代病」の一つと言えるかもしれませんね。
どんな時に症状が現れる?

通勤や通学の電車の中、大切な会議や授業中など、緊張する場面になると、過敏性腸症候群(IBS)の症状が現れやすくなります。
急にお腹が痛くなったり、お腹の調子が悪くなったり…。そうした経験が繰り返されると、「また、あの時みたいになったらどうしよう…」という予期不安が生まれ、やがてその状況自体に恐怖すら感じるようになってしまうのです。
様々な症状のタイプ
他にも、下痢や便秘を不規則に繰り返すケースや、自宅では何ともないのに、学校や会社など人前で緊張を感じると、おなら(ガス)が頻繁に出たり、止まらなくなったりして、それを我慢するのが非常につらい、と感じるケース。あるいは、静かな場所で突然お腹がゴロゴロと鳴ってしまい、恥ずかしい思いをするのが怖い、といったケースなど、過敏性腸症候群(IBS)のお悩みには、本当に様々な種類があります。
検査では異常が見つからないことも
お腹の調子が悪いので病院で検査を受けても、腸やお腹には特に異常が見つからない、という場合も少なくありません。そのような場合は、日頃感じているストレスや、人前での緊張などが、過敏性腸症候群(IBS)やその他のお腹の不調を引き起こしてしまっている可能性が考えられます。また、過敏性腸症候群の症状、特に特定の状況への強い不安は、「恐怖症」にも分類されることがあります。
過敏性腸症候群は、主に「下痢型」「ガス型」「腹鳴り型」の3つのタイプに分けられます。
過敏性腸症候群「下痢型」について
「下痢型」の過敏性腸症候群とは、会議や会食、電車やバスなどの交通機関、学校行事といった、特定の場面を前にすると、急に強い腹痛を催し、「お腹が痛くなったらどうしよう」という精神的な不安と、「実際に下痢や腹痛が起きてしまうのではないか」という身体的な不安が、一気に高まってしまう状態です。その恐怖感が頭から離れなくなってしまいます。

日常生活への支障
職場での勤務中や、学校、通勤・通学の電車やバスの中などで、腹痛や下痢といったつらい経験を繰り返してしまうと、その悪いイメージが心に強く定着してしまいます。そうなると、常に「お腹の調子は大丈夫だろうか?」ということばかり考えてしまい、思考や行動の中心が過敏性腸症候群になってしまい、日常生活に相当な支障をきたしてしまいます。
下痢型の特徴と改善への道
過敏性腸症候群の下痢型の方には、非常に真面目で責任感が強く、我慢強い、いわゆる「優等生タイプ」の方が多い、という特徴があります。下痢や腹痛といった症状だけでなく、極度の不安や緊張を感じると、無意識のうちにお腹周りを中心に、体全体が硬直と言っていいほどに力んでしまう、といった「身体のトラウマ」とも言える反応が、しっかりと形成されてしまっていることが多いのです。
改善の方法としては、心理療法の中でも、特に「お腹に働きかける暗示(ヒプノセラピーなど)」が有効であり、高い効果が期待できます。実際に、このアプローチによって、多くの方が改善されています。腹部の検査の結果、明確な病気(疾患)が見つからない限り、下痢や腹痛といった症状は改善に向かい、やがてお腹を中心とした体の過剰な緊張(硬直)も和らいでいきます。
これまで、まるで喧嘩ばかりしてきたような、あなたのお腹と、そろそろ仲直りしませんか?
過敏性腸症候群「ガス型」について
- 「ガス(おなら)が、慢性的に出続けている気がする…」
- 「不思議と、家にいる時はガスはあまり出ないのに…」
- 「ガスを我慢するのが、もう限界で本当につらい…」
- 「後ろの席の人は、私のことを臭いと感じているに違いない…」
- 「ガスが出るせいで、私の人生は何もかもうまくいかないんだ…」
- 「電車やバスの中で、乗客にガスのことで睨まれた気がする…」
- 「ガスのせいで、友達ができないし、友達も離れていってしまった…」
- 「教室では、ガスで周りに迷惑をかけるのが怖いから、一番後ろの席に座りたい…」
- 「職場での周りの視線を感じると、ガスでお腹がどうにかなりそうになる…」
- 「自分では匂わないけれど、周りの人たちは『臭い』と感じて反応しているようだ…」
思春期から成人期、そして中年期へと年齢を重ねるにつれて、過敏性腸症候群のガス型に悩む方の割合は、一般的に少しずつ下がっていく傾向にあります。しかし、特に思春期の女性にとっては、この症状は耐えがたいほどの苦痛であり、大切な学生生活や、時には人生そのものを台無しにしかねない、恐るべき症状、それが「過敏性腸症候群のガス型」と呼ばれるものです。
過敏性腸症候群 ガス型の特徴
この過敏性腸症候群のガス型の特徴は、病院で検査を受けても、お腹(腹部)には特に異常が見つからない点にあります。お腹のことですから、最初は内科や胃腸科などを受診されることが多いでしょう。しかし、「特に異常はありませんね。あまり気にしすぎないようにしてください」と言われ、次に勧められるのが「心療内科」などである、というケースが少なくありません。
心の問題との関連
もちろん、この過敏性腸症候群のガス型の症状を持つ方の多くは、薬物療法だけでは、思うような効果が得られないことが多いのです。
それもそのはずです。「ガスのコントロールができない」という身体的な症状が現れてはいますが、それはあくまで「結果」に過ぎません。問題の根本は、意外に思われるかもしれませんが、「物事の捉え方(認知の歪み)」や、「身体のトラウマ(無意識の緊張)」、「予期不安による恐怖」、「人間不信」、「自己嫌悪」など、様々な心の問題が、過敏性腸症候群の症状の中に隠れている(内在化されている)のが実情なのです。
薬によって、一時的に苦しさを多少は紛らわすことができるかもしれません。しかし、薬だけで「考え方や性格」そのものが変わるわけではありませんから、根本的な解決には至らないことが多いのです。
過敏性腸症候群「腹鳴り型」について
「人前で、自分ではコントロールできないお腹の音(グルグル、ゴロゴロなど)が鳴ってしまう…」
「静かな場所で、腸や胃などのお腹の音が鳴るのを、いつも恐れている…」
「お腹の音が、尋常ではないくらい大きく鳴ってしまって、周りの人に不快な思いをさせているのではないか…」
こんな症状に怯え、深く悩んでいる方もいらっしゃいます。「そんなことくらい、誰にだってあるよ」「気にしないのが一番だよ」と、周りの人に必死な気持ちで相談しても、なかなか真剣に取り合ってもらえない、という経験をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、ご本人にとっては、特に女性にとっては、非常に恥ずかしく、つらいことです。「このお腹の音(腹鳴り)さえ無くなれば…」と、いつも腹鳴りに怯えながら生活されているのです。
この過敏性腸症候群の腹鳴りは、「腹鳴り恐怖症」として、特定の恐怖症の一種に分類されることもあります。
腹鳴り型の特徴と原因
この症状を持つ方の特徴としては、「人間関係が苦手」「緊張しやすい」「自己否定感が強い」「人をなかなか信頼できない」「本当の自分を見せられない」「プライドが高い」といった性質(パーソナリティ)を持っている方が多いように感じます。そして、こうした性質から生じる様々なストレスが、無意識のうちにお腹周りの筋肉の緊張(力み)につながり、胃腸に過度のストレスを与えてしまう。その結果、「お腹が鳴る」という、まるで自動的なシステムが働いてしまうのです。
腹鳴りという過敏性腸症候群の症状もまた、やはり心と体のトラウマ(無意識の緊張パターン)が原因となっていることが多いと考えられます。
その他の「お腹のお悩み」について
また、過敏性腸症候群(IBS)と診断されなくても、特に女性の場合、生理中や生理前のお腹の不調に悩まされる方もいらっしゃいます。これも、ストレスが原因となっている場合があります。
生理とストレスの関係
生理前や生理中は、ホルモンバランスの変化などによって、神経が過敏になりやすい時期です。そのため、普段なら気にならないような小さなことでも、大きなストレスとして感じられてしまうことがあります。その結果、生理痛がいつもよりひどくなる、といったことも起こり得ます。
また、普段は便秘気味なのに、生理中になると下痢をしやすくなる、という方も多いようです。もし、生理前や生理中のイライラ感や、お腹の不調でお悩みでしたら、リラクゼーション目的でカウンセリングにお越しいただくことも可能です。カウンセリングを通して、イライラ感を和らげ、下痢や生理痛などの症状を軽減するお手伝いができればと思います。
過敏性腸症候群(IBS)克服に向けて
ここまで、過敏性腸症候群(IBS)の主な症状や特徴について見てきました。下痢、腹痛、ガス、腹鳴り… こうした症状に常に囚われている状態では、仕事や勉強に集中することも難しくなります。常に「お腹の調子は大丈夫だろうか?」という不安や恐怖に苛まれ、緊張を強いられ、お腹のことばかりに神経を使ってしまい、集中力が低下します。
悪循環からの脱却
外出すること自体に抵抗を感じるようになり、人との交流も避けるようになってしまう…。その結果、「不登校・ひきこもり・ニート」や「うつ病」といった、さらなる問題に陥りやすくなってしまいます。
とても疲れているはずなのに、体の緊張が抜けず、夜もぐっすり眠ることが難しい… そんな「不眠症」の悪循環に陥っている方も、少なくありません。「お腹の悩みと、心の悩みは関係ないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、お腹と心は非常に密接に関係しているのです。
聖心こころセラピーのアプローチ
名古屋聖心こころセラピーの心理カウンセリングでは、まず、過敏性腸症候群の根本的な原因を、あなたと一緒に丁寧に探っていきます。そして、「物事の捉え方」や「考え方の癖(認知の歪み)」などを、より楽なものへと改善していくお手伝いをします。
同時に、ヒプノセラピー(催眠療法)などの心理療法を用いて、心と体の無駄な力を抜き、リラックスした状態を作り出していきます。そうすることで、ストレスに対する体の過剰な反応(感じ方)が軽減されるように導き、お腹周りの力みや硬直といった「身体のトラウマ」を解消していくことを目指します。
過敏性腸症候群克服プログラムを通して、一刻も早く、そのつらい症状からご自身を解放してあげませんか?
どんな人が、どんな場面で、過敏性腸症候群を発症しやすいのか?
ここからは、過敏性腸症候群を発症しやすい方の特徴や、症状が出やすい状況について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ストレスに過剰反応してしまうタイプ
過敏性腸症候群は、もともと胃腸があまり強くない、と感じている方に起こりやすい症状です。原因は人によって様々ですが、何らかのストレスが引き金となり、その刺激が脳に伝わり、さらにその信号が腸の働きを乱してしまう、というメカニズムが考えられています。その結果、腸が正常に機能せず、急な下痢などを引き起こしてしまうのです。内科などを受診しても、特に明らかな原因が見つからない、というのも特徴の一つです。
胃腸が過敏な状態になると、お腹の動きや軽い痛みにも敏感になり、それがまた気になってしまい、さらなるストレスとなる… という悪循環を繰り返してしまいます。誰かに叱られたり、強いプレッシャーを感じたりした時、あるいは強烈な不安感や恐怖心に襲われた時に、特に腹痛や下痢といった胃腸の変調が現れやすくなります。
会社でのストレスが引き金になるケース
過敏性腸症候群の症状がある方は、ご自身の感情を素直に表現するのが苦手、と感じている場合が多いようです。例えば、子どもの頃に威圧的な父親に育てられ、常に顔色をうかがってビクビクしながら過ごしてきた、という経験があると、大人になってからも、会社で上司や同僚の顔色を過剰にうかがってしまい、気を使いすぎて、大きなストレスを溜め込んでしまうことがあります。
また、人前で叱責されたり、怒鳴られたりといった経験も、脳にとって強烈なストレスとなり、腸に過剰な反応を引き起こす原因となります。
さらに、幼少期や思春期に、家庭内でリラックスできる安心感が得られず、常に緊張を強いられていたり、あるいは、子どもが親に甘えることを通して健全な心を育んでいく機会が十分に得られなかったりした場合、その成長過程での歪みが、大人になってから過敏性腸症候群という身体的な症状として現れてくるケースも、実は少なくないのです。
子どもの頃の経験がフラッシュバックする?
「上司なども参加する大切な会議の前になると、必ず、数日前から腹痛や下痢が始まる…」
これは、過敏性腸症候群の方には、よく見られるお馴染みのパターンかもしれません。
ご本人は気づいていないかもしれませんが、子どもの頃の経験が影響している可能性があります。例えば、権威のある立場の人(上司や目上の人など)を目の前にすると、かつて支配的だった父親のイメージと重なってしまい、無意識のうちに極度の緊張状態に陥り、過敏性腸症候群の反応がひどくなってしまう、というケースです。
目の前にいる相手は、父親とは全くの別人であるにも関わらず、過去の似たような経験によって、体がその「ストレス=下痢」という反応パターンを覚えてしまっているのです。誰だって、人から叱られたり、怒られたりするのは嫌なものですし、ましてや怒鳴られたりすれば、それだけで精神的に大きなダメージを受け、つらい気持ちになりますよね。
そんなストレスが、胃腸の不調、特に下痢という形で表面に現れ、結果的にご自身をさらに苦しめてしまうのです。
子どもの頃の性格や家庭環境が影響することも
過敏性腸症候群になりやすい方の背景には、威圧的な父親に育てられた、というケースだけでなく、逆に、心配性で過干渉・過保護な母親に育てられた、というケースも見られます。
何か新しいことに挑戦しようとした時に、「それは本当に大丈夫なの?」「あなたには難しいんじゃない?それでもいいの?」などと、母親から過剰に心配され続ける経験が多いと、大人になってからも、何か物事を決めようとする際に、「これをやって大丈夫だろうか…」「もし失敗したらどうしよう…」と、行動する前から過度に心配してしまい、その不安感が大きなストレスになっていく、ということがあります。
何か行動を起こす時には、「えいや!」と勢いで飛び込んでみたら意外と良い結果が出たり、あるいは、入念な準備を重ねることで自信を持って臨めたりするものですが、心配性の傾向が強すぎると、どんなに準備をしても、「あれが足りないかもしれない」「これもダメかもしれない」と、次から次へと不安が湧き上がってきてしまうのです。
そのようなご自身の不安感を、上手に解消していくことができれば良いのですが、特に生真面目な性格の方の場合、なかなか考え方を変えることが難しい、というのも現実かもしれません。
抜け出しにくい「負のループ」
過敏性腸症候群になると、腸が非常に過敏な状態になっていますので、ちょっとした刺激でも気になってしまい、不快感を覚えやすくなります。例えば、電車に乗っていても、「いつトイレに行きたくなるか分からない…」と常に心配し、そうした不安感がさらにストレスとなって、腸を刺激してしまう… という悪循環(負のループ)に陥っている場合が多いのです。
過敏性腸症候群を改善していくためには、まず、その根底にある不安感を取り除き、「きっと大丈夫だ」と思えるようになることが必要です。しかし、長年しみついたご自身の考え方の癖(認知の歪み)がなかなか抜けないと、またすぐに不安のサイクルに戻ってしまう、というケースも少なくありません。
カウンセリングでは、そうした物事のネガティブな捉え方を、よりポジティブで楽な考え方に少しずつ変えていくお手伝いをします。常に不安を感じてしまうような状況に対しても、「大丈夫だ」と捉えられるような、しなやかな考え方を身につけていくことを目指します。
「緊張=お腹が痛む」という方程式
社会生活を送っていると、私たちは何度も緊張する場面を経験したり、予期せずそうした状況に遭遇したりします。会社であれば、大切な会議やプレゼンテーションの前。学校であれば、発表会や試験、受験などがありますね。
十分な準備ができていれば、「きっと大丈夫」と思えることもあるでしょう。しかし、「想定外の質問が飛んできたらどうしよう…」「何を聞かれるんだろう…」「これで本当に大丈夫だろうか…」といった不安な気持ちが頭の中を駆け巡り、落ち着かなくなるケースもあります。そして、そうした強いストレスを受けると、お腹が痛くなり、下痢をしてしまう… というのが、典型的なパターンです。
このようなパターンに陥りやすいのは、実は、きちんと準備をする真面目な優等生タイプの人にも多いのです。不安を少しでも和らげるために、一生懸命に準備をするのですが、それでも不安な気持ちは消えず、「もし失敗したらどうしよう」「怒られるのではないか」「これで本当に大丈夫なのだろうか」と、不安感がどんどん大きくなっていってしまうのです。
人から何か指摘されたり、意見を言われたりするのが、極端に苦手なタイプの方にも、この傾向は多く見られるでしょう。もし、その根本にある性質(考え方の癖や過剰な不安感)自体を変えることができれば、過敏性腸症候群の症状も、きっと消えていくはずです。
自己肯定感の低さが影響している可能性
過敏性腸症候群になりやすい方の中には、幼い頃に、失敗したり、何かうまくできなかったりした時に、親からいつも厳しく叱られてきた、という経験をお持ちのケースもあります。その小さい頃のつらいイメージや感覚が、大人になってからもトラウマのように残り、努力家である一面も持ち合わせているにも関わらず、失敗を極度に恐れるあまり、過度なストレスを感じてしまう、という場合があります。
また、上司や先生など、権威のある人の前に出ると、ひどく緊張してしまう、という方もいらっしゃいます。それは、幼い頃から体に染みついてしまった反応であり、体が反射的に、無意識のうちに緊張状態を作り出してしまっている可能性が、十分に考えられます。
カウンセリングなどを通して、ご自身のそうした過去の経験と丁寧に向き合い、その影響を和らげていくことでも、心の持ちようが変わり、過敏性腸症候群の症状も改善していくことがあります。
また、常に「大丈夫なの?」「あなたにはできないかもしれないわよ?」といったように、行動を起こす前から心配されたり、不安感をぶつけられたりしてきた経験があると、それが連鎖し、「自分にはできないかもしれない」「失敗したらどうしよう…」という考えに、強く囚われてしまっている可能性もあります。
もし、そのような親御さんからの「負の遺産」とも言えるような考え方のパターンを受け継いでしまっているとしたら、それときっぱりと決別し、もっと前向きで、建設的に物事に取り組んでいけるように、考え方を変えていくことが必要になってきます。
過敏性腸症候群であると自覚がないことも
幼少期や思春期など、子ども時代の親や周りの大人からの影響というのは、非常に大きなものであることが多いです。子どもは、世の中のことがまだよく分かりませんから、「世の中とはこういうものなのだ」「こうしないと、大変なことになるよ」といった価値観を、素直に受け入れてしまう場合が多いのです。
年齢を重ね、様々な経験をしていく中で、「このくらいのことなら、この程度で大丈夫だな」といった、自分なりの物差しができてくることもあります。しかし、若い頃はまだ人生経験も浅いため、そういう感覚が分からず、未知の物事に対する不安感なども、当然強く感じやすい時期です。
そんな多感な時期に、親御さんから不安を煽るようなことを言われたり、厳しく叱責されたりすると、それは大変なストレスとなり、体に不調(変調)をきたしてしまうこともあるのです。どんなに万全の準備をして臨んでいても、予期せぬ出来事が起こることはあります。その際に、落ち着いて柔軟に対応できれば良いのですが、それが難しいと感じるケースもあるでしょう。
もし、子どもの頃に、親御さんの前で萎縮してしまったり、常に不安を感じたりする傾向が強かった場合には、大人になってからも、その考え方のパターンが心に深く植え付けられていて、なかなか抜け出せずに、つらい思いをし続けている、というケースもあります。
自信を持つための「成功体験」の重要性
過敏性腸症候群の根本にある「不安」などを取り除くためには、何か新しいことに挑戦し、「なかなか上手くいったぞ!」と感じたり、誰かに「すごいね!頑張ったね!」と褒められたり、といった「成功体験」を積み重ねていくことが、とても大切になります。
しかし、もし幼少期にそうした肯定的な経験が少なかった場合、大人になってからどんなに褒められても、それを素直に受け入れることが難しく、「どうせお世辞だろう」「本当はそう思っていないに違いない」といった懐疑的な受け止め方をついしてしまいがちになります。その結果、いつまでたっても自分に自信が持てなかったり、どんなに万全の対策を立てていても、それでも不安になってしまったり、というケースも多いのです。
また、「できないこと」を厳しく叱られてきた経験が多い場合には、その行動をとること自体に不安感や恐怖感が常に付きまとってしまい、再びそれに挑戦するのが嫌になってしまう、というケースなどもあります。
不安感というのは、実は人から人へと伝染しやすいものです。例えば、お母さんがいつも心配性で、お子さんのやることに過度に干渉してきた場合、その不安がお子さんにも伝わり、自分の行動に自信が持てない、といった状況になっている可能性もあります。
そんなご自身の幼少期の体験などを、一度ゆっくりと思い出してみて、「自分の性格や行動パターンに、どんな影響があったのかな?」と考えてみること。そして、その考え方を少しずつ変えていくことで、気持ちが楽になり、ストレスが和らぎ、過敏性腸症候群の症状も改善される可能性があります。
根本を解決すれば、過敏性腸症候群は怖くない
下痢などの症状が、ストレスから来ているものである、ということがご自身で理解(認知)できれば、「じゃあ、そのストレスを和らげる方向に進めば良いんだな」と分かり、カウンセリングなども受けやすくなるかもしれません。
薬だけでは解決しない理由
しかし、「ただの下痢だ」と思い込んでいたり、あるいは過敏性腸症候群であると診断されても、その根本的な問題に向き合わずに、ただ薬だけで症状を抑えようとしてしまうと、ストレスは解消されないまま溜まっていき、下痢の頻度は増し、症状はさらに悪化していく可能性があります。そして、「また下痢になったらどうしよう…」と、お腹のことばかりに囚われすぎて、仕事や勉強が手につかない、といった悪循環に陥ってしまう場合があるのです。
ストレスの原因を探る
病院で検査をしても、特に悪いところが見つからないのに、下痢が止まらない…。そんな場合には、「これはストレスによるものではないか?」ということを、一度意識してみるのが良いでしょう。不安になったり、緊張したりする、ご自身の「心の状態」に目を向けることで、自分の気持ちの棚卸しを行い、「自分は、どんなことに不安や緊張を感じやすく、それがストレスになっているのだろうか?」を知ることが、改善への第一歩となります。
ストレスの原因が分かるだけでも、気持ちはずいぶん楽になるものです。まずは、あなたのストレスの原因を、カウンセリングなどを通して、徹底的に探ってみましょう。
過敏性腸症候群の解決は「思考の修正」にある
ご自身の考え方が、ある特定のパターンに凝り固まってしまっていると、不安や恐怖感が、どんどん雪だるま式に増幅していくことがあります。そんな時には、その考え方自体を、少し見直してみませんか?
カウンセリングによる思考パターンの見直し
自分一人で考えていると、どうしても堂々巡りになってしまい、いつものネガティブな思考パターンにはまり込んでしまう、という場合も多いですよね。カウンセリングなどを受けて、専門家と一緒に、より楽になれる考え方に変えていくことで、ストレスが減り、症状も改善していくでしょう。
過敏性腸症候群などは、長年の考え方の癖などが影響し、いわばご自身でご自身にストレスをかけている状態とも言えます。ですから、ご自身の考え方を変えていくだけでも、ずいぶんと楽になれる症状なのです。
自分の気持ちを理解する
ご自身の考えていることや、本当の気持ちなどが、よく分からない、という方にも、この病気は多いようです。ですから、まずは、あらゆる事柄に対するご自身の気持ちなどを、言葉にして外に出してみて、「これは自分にとって有害だな」「これは辛いけれど、役に立つことだな」「これは、どちらでもないな」といったように、分類し、整理していくのも良い方法です。
ただ漠然とした不安を抱え続けるのではなく、ご自身の心の中をよく知り、理解していくことが、とても大切になってきます。その不安感は、もともと幼少期から、誰かによって植え付けられてしまったものなのかもしれません。そうした根深いものは、一朝一夕に変えていくのは難しい場合もあります。しかし、決して変えられないものではありません。ご自身の心の中をよく知り、丁寧に整理整頓していくことで、道は開けていきます。
過敏性腸症候群の克服は、ストレスの本質を正すことから
ご自身の心の中に隠れている(内在化している)ストレスが、一体どんなものであるのかを、はっきりと認識(認知)できるようになれば、それに対する具体的な対策なども立てやすくなります。そして、様々なストレスに対しても、上手に対応していけるような心の強さを、次第に身につけていくことができるようになります。
自信を取り戻し、考え方を変える

過敏性腸症候群に悩む方は、実は真面目で能力のある方も多いのです。ですから、ご自身が本来持っている力や良い点を、きちんと認めてあげられるようになることでも、自信に繋がっていきます。過去のつらい体験によって、「自分はダメだ」と思い込んだり、威圧的な態度にさらされて抑圧されてきたりした経験から、萎縮してしまっている場合も多いので、「自分は大丈夫なんだ」と心から思えるようになることで、状況は大きく変わってくる場合があります。
時には、怖がらずに、新しいことに挑戦してみることも必要になるかもしれません。また、責任感が強く、何でも自分で抱え込んでしまう性格の方も多いので、一人で抱え込まずに、誰かに相談したり、自分の気持ちを表に出したりすることも、ストレスを溜めないための大切な行動の一つになってくるでしょう。
根本原因への気づき
幼い頃からの経験やパターンが体に染みついて、それが病気の症状として現れている、とも言えます。ですから、そのことにご自身で気づくことでも、状況は変わってきます。「お腹が痛い…」「また下痢になったらどうしよう…」といった考えから意識を切り離すために、まず、ご自身の中にあるストレスの原因をはっきりと認識し、それを改善するように、考え方のパターンを少しずつ変えていく練習をしていきましょう。
過敏性腸症候群の本来の原因は、ご自身の幼少期などの育った環境によって形成された、性格や考え方のパターンに深く関わっていることが、当セラピーでの多くの経験からはっきりと断言できます。そのことに気づくだけでも、過敏性腸症候群からの完全な回復(脱却)への、大きな第一歩となるのです。
過敏性腸症候群の解決策は、私たちが心得ています。一緒に、早期の回復(脱却)を目指しましょう。
参考文献・参考資料
- 日本消化器病学会(監修)(2013)『過敏性腸症候群診療ガイドライン』 南江堂
- 伊藤克人(2011)『最新版 過敏性腸症候群の治し方がわかる本』 主婦と生活社