不眠症・睡眠障害カウンセリング

不眠症、いわゆる睡眠障害の根本的な原因は、多くの場合「不安」にあります。それには、ご自身で自覚している不安と、まだ気づいていない(自覚なき)不安の両方があります。そして、眠れないことへの不満を、まるで小姑のように細かく指摘したがり、必要以上に「眠れないこと」に執着してしまう…。過度な不眠へのとらわれが強迫的な思考や行動に発展することもあり、その背景には性格傾向や考え方の癖が関係していると考えられています。

【注意】
認知症やむずむず脚症候群など、明らかな身体疾患やそれに付随する症状として起こることも多々あるため、まずは医療機関の受診をお勧めします。
ここでの不眠症の記述は、主にメンタル面や心理的な側面に焦点を当て、お話をすすめていきます。

目次

不眠症・睡眠障害とは

眠れぬ夜は、どうしてこんなにも長く感じられるのだろう…

まるで世界中で、たった一人ぼっちになってしまったような、恐ろしいほどの孤独感…

時計の針がカチカチと時を刻む音が、やけに神経に障る…

眠りたい… でも、眠れない…

本当に、朝は来るのだろうか…

もし、毎晩のように、こんな恐怖にも似た感覚に襲われているとしたら、それは「睡眠障害」と言えるかもしれません。

不眠症と睡眠導入剤について

人は本来、「睡眠欲」という、生きていく上で欠かせない本能を持ち合わせています。眠ることは、普段は当たり前のことであり、特に意識することもないかもしれません。しかし、心の中に未解決の問題や、強い不安を抱えていると、睡眠に影響が出やすくなります。眠りたいのに眠れない「不眠」は、誰にとっても本当につらいものですよね。

薬物療法への依存リスク

薬物療法のリスク 病気で睡眠薬(睡眠導入剤)を処方される 眠れない日が続くと薬が増えたり強い薬に変更することも 長期的に使用することで「薬物依存」に陥ってしまう危険性も

睡眠障害となり、病院で不眠の症状を訴えた場合、ほとんどの医師はまず睡眠薬(睡眠導入剤)を処方します。それでも眠れない状態が続くと、薬の量を増やしたり、さらに作用の強い薬に変更されたりすることがあります。

その結果、薬の影響で日中にぼんやりしたり、動作が緩慢になったりして、日常生活に支障をきたしてしまっている方も、実は多く見受けられます。

日々のストレスは常に変化しますから、薬だけでそのすべてに対応できるわけではありません。また、薬によっては、日中の倦怠感を感じたり、長期的に使用することで「薬物依存」に陥ってしまったりする危険性もあります。薬によって心身がさらに不調になってしまう、という本末転倒な状況にもなりかねません。

もちろん、薬の有効性を完全に否定するものではありません。しかし、不眠症の多くには、その背景に「心の問題(心的要因)」が隠れているのです。その根本的な原因を解決することができれば、薬に頼らなくても、自然で質の高い睡眠を手に入れることができるようになります。

不眠症の定義と現状

「不眠症」とは、「睡眠障害」の代表的な症状の一つです。睡眠が十分に取れないために、「疲れがなかなか取れない」「日中、集中できない」といった身体的な症状や精神的な症状が現れ、昼間の生活に支障をきたす状態が続くことを言います。

必要な睡眠時間には個人差が大きく、3時間程度の睡眠で元気に活動できる人もいれば、8時間たっぷり寝てもまだ眠気を感じる人もいらっしゃいます。

現代のようなストレス社会においては、子どもから大人まで、不眠症・睡眠障害に悩まされている人は非常に多く、日本人の約21%、つまり5人に1人が、眠りに関する何らかの問題を抱えていると言われています。

不眠がもたらすリスク

不眠・睡眠障害が長く続くと、集中力の低下や、日中の強い眠気、倦怠感などの症状が引き起こされます。極端な場合には、居眠り運転による事故などを起こしてしまい、周りの人に迷惑や心配をかけたり、あるいは内臓機能の低下などを招き、生命に関わる危険に繋がってしまったりする可能性さえあります。

「睡眠」は、脳や身体の疲労を回復させ、免疫機能を強化するなど、私たちの健康を維持するために、必要不可欠なものなのです。

睡眠障害の種類は多岐にわたります

「睡眠障害」という言葉は、「睡眠に関する様々な障害の総称」として、ここ数年の間に広く使われるようになりました。睡眠障害の中には、代表的な「不眠症」だけでなく、「いびき」や「寝言」なども含まれます。

代表的な睡眠障害

代表的な睡眠障害の例としては、以下のようなものが挙げられます。

代表的な睡眠障害 精神生理性不眠症 睡眠時無呼吸症候群 ナルコレプシー
精神生理性不眠症

眠ろうと意識しすぎるあまり、かえって眠れなくなってしまう状態。

ナルコレプシー

日中に耐え難いほどの強い眠気に襲われる、過眠症の一種。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に、一時的に呼吸が止まってしまう状態。

不眠症の4つのタイプ

「不眠症」は「睡眠障害」の中に含まれ、睡眠障害の中で最も多く見られる症状です。「不眠症」と言っても、単に寝付けないというだけでなく、夜中に目が覚めてしまうなど、その現れ方は様々であり、主に以下の4つのタイプに分けることができます。

1.入眠障害(入眠困難)

これは、いわゆる「寝つきが悪い」という症状で、不眠症の中で最も訴えの多いタイプです。一般的には、布団に入ってから眠りにつくまでに30分~1時間以上かかってしまう状態を指します。ただ、一旦寝てしまえば、朝まで眠り続けられる、という特徴もあります。

しかし、「今夜はちゃんと眠れるだろうか…」「もし眠れなかったらどうしよう…」と、布団に入る前から眠ることに対して過剰な意識が働き、「不眠恐怖」と呼ばれる状態に陥ってしまうことがあります。そして、眠れないことへの不安や、「眠らなければならない」という焦りといった心理的な要因から、ますます眠れない状態が続いてしまうのです。このような状態を特に「精神生理性不眠症」と呼び、ストレスによる緊張や興奮が原因で起こると考えられています。

入眠障害 精神生理性不眠症

2.熟眠障害

熟睡障害 熟睡感が得られない

寝つき自体は悪くなく、睡眠時間も十分に取れているはずなのに、「ぐっすり眠れた」という満足感(熟睡感)が得られないタイプの不眠症状です。比較的、若い世代の方によく見受けられます。

睡眠が浅く、夢ばかり見てしまうため、朝もスッキリと起きることができず、日中の仕事や授業中に集中力が続かなかったり、肉体的な疲労感や倦怠感がいつまでも残ってしまったりします。周りからは、単なる睡眠不足だとは思われにくく、「やる気がないんじゃないか」「本気を出していないだけだ」などと誤解されやすく、そのことでさらに悩んでしまう、という特徴があります。

3.中途覚醒

寝つきは良いにも関わらず、夜中に何度も目が覚めてしまう症状です。男性よりも女性に多く見られ、基本的に、朝までに2回以上目が覚めてしまう、という特徴があります。

一度目が覚めてしまうと、その後なかなか寝付けなくなることもあり、結果的に睡眠不足の状態となり、体に疲れが残ってしまうことが多くあります。「お酒を飲まないと眠れない」という理由で、寝る前にアルコールを摂取すると、かえって睡眠の質が悪くなり、中途覚醒が起こりやすくなるため、控えた方が良いでしょう。

中途覚醒 夜中に何度も目覚めてしまう

4.早朝覚醒

早朝覚醒 意図せず早く目が覚めてしまう

朝の4時や5時など、特に早く起きる必要がないのに、意図せず早く目が覚めてしまう症状です。これは、加齢によって自然に起こる場合と、うつ病やストレスなどの心理的な要因によって起こる場合があります。

加齢によって起こる場合は「老人性早朝覚醒」と呼ばれ、年齢と共に睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌量が減少することで、朝早く目が覚めやすくなります。

一方、うつ病などの精神的な要因からくる早朝覚醒の場合は、中途覚醒や入眠障害なども伴うことが多く、睡眠全体の質が悪くなってしまうことも少なくありません。

不眠症の根源は「不安」にあります

ストレスの多い現代社会において、多くの方々が睡眠時間の短さや質の低下に悩んでいるかもしれません。考え事や心配なことがあると、それがきっかけで眠れない夜が続き、次第に「眠れない」というサイクルに陥っていきます。

不安と睡眠の関係

睡眠障害が続くと、精神的にも肉体的にも疲れが取れず、日中の集中力が低下し、目の前にあるやるべきことに対しても、なかなか意欲的に取り組めなくなってしまいます。

ご自身でストレスをうまくコントロールできないような状況に陥ってしまうこともあり、まずはぐっすりと眠ることが、心と体の休息を取り、ストレスを解消する上でも、非常に重要になります。

睡眠障害が一体どこから来るのか、その原因を特定するのは、なかなか難しい場合も多いです。仕事上の心配事、日々考えている悩み、何かを「こうしなければならない」という強迫的な考え、あるいは人生そのものについての深い悩み… などなど、本当に様々な理由で、眠れなくなるケースがあります。

しかし、その根底にあるものは、多くの場合「不安」です。その不安に対してご自身で気づいていなかったり(無自覚)、あるいは無意識のうちに避けようとしていたりすると、睡眠障害という身体的な反応が現れやすくなるのです。当セラピーにお見えになる方の中にも、ご自身の不眠症や睡眠障害の原因を、分かっているようで、実は本当の意味では理解できていない、という方が多くいらっしゃいます。

根本的な解決に向けて

カウンセリングにお越しになり、ご本人がまだ気づいていない「不安」の正体を明らかにし、それを解消していくこと。そして、それと同時に、最も大きな問題であるかもしれない、「一つのことを必要以上に考え込み、思い悩んでしまう性格(考え方の癖)」を改善していくこと。そうでなければ、この睡眠障害を根本的に解決することは難しいでしょう。

不眠症の辛さを追求しすぎると、強迫性障害に陥る可能性も

一日眠れなかったとしても、普通は次の日にはその反動でぐっすり眠れる、というケースが一般的です。しかし、何日も不眠症が続く場合、それはご自身の中に何か解消できない不安があって、それを拭い切れないでいる、というサインなのかもしれません。

眠れないことへの囚われ

仕事のこと、将来のこと、家庭のこと… あれこれと考え始めると、なかなか寝付けなくなり、その結果、気力や体力が回復できず、元気に毎日を過ごすことが困難になってしまう、という場合があります。

眠れない日々が続くと、気力もどんどん低下していきます。ですから、眠れるように、寝室の環境を整えたり、リラックスできる方法を試したりするなど、眠るための準備をすることは大切です。しかし、それと同時に、「眠れないこと」をそこまで深刻に考えすぎない、という意識も重要かもしれません。「眠たくなれば、人間は自然と眠るものだ」というくらいの、少し大らかな気持ちでいることも、時には必要です。

休息の重要性

現代社会は変化が激しく、私たちは常に新しい情報に触れ、世界の動きに遅れまいと、日々神経を研ぎ澄ませて生きている、という方も多いかもしれません。しかし、そんな時だからこそ、意識的に休息時間を取り、ゆっくりと心と体を休めることができれば、リフレッシュでき、体も楽になり、気分も明るくなります。

「それができないから困っているんだ!」とおっしゃる方には、ぜひ一度、当セラピーにお越しいただきたいと思います。カウンセリングと共に、コーチングやヒプノセラピー(催眠療法)などの心理療法も組み合わせながら、不眠症からの脱却をサポートさせていただきます。

不眠症・睡眠障害は、薬に頼らない方法もあります

睡眠薬を飲み始めると、それが習慣になりやすく、「薬がないと眠れないのではないか」という不安から、さらに薬に頼ってしまい、飲み続けるという負のサイクルに入ってしまう場合もあります。

薬物療法の限界と心理療法の可能性

最近の睡眠薬の中には、睡眠に関わるホルモンのバランスを調整することで、体への負担が比較的少ないとされるものも増えてきています。そうした薬によって、脳のホルモンバランスを整え、自然な眠りに近づけていくことも、もちろん可能です。

しかし、現実には、ご本人のその日の体調や精神状態は常に変化しますから、薬の効き目が強すぎたり、逆に足りなかったりして、薬だけで細かく調整するのは難しい面もあります。また、「朝起きた時の倦怠感がつらい」と訴える方も、依然として多くいらっしゃいます。

このように、薬物療法にも限界があります。ですから、それ以外の方法として、ご自身の不安を根本的に解消するために、カウンセリングなどのセラピーを受けることも、非常に有効な選択肢の一つです。

思考パターンを変える

眠ろうとすると、次から次へといろいろな心配事が浮かんできてしまう…。それは、ご自身の考え方が、常に同じような堂々巡りをしてしまう癖を持っていることも、原因の一つかもしれません。そうした思考パターンそのものを変えていくことは、不眠の改善にとって、非常に有意義なアプローチです。

しかし、自分一人だけで、長年しみついた根本的な考え方を変えることは、なかなか難しいものです。どうしても不安が拭いきれない、という場合もあるでしょう。そのような場合には、カウンセラーという第三者のサポートを得て、考え方を少しずつ、不安を感じにくい、より楽な方向へと変えていく練習をすることも、良い方法です。

不眠症解消には、スポーツなどで肉体的な疲労を促すことも有効です

子どもの頃は、通学路を毎日歩いて往復したり、体育の授業で走り回ったりと、意識しなくても体を動かす時間がたくさんありましたよね。しかし、大人になると、仕事の忙しさなどを理由に、定期的に体を動かす時間を十分に確保できていない、という方も多いのではないでしょうか。

運動と睡眠の関係

適度に体を動かすことで、心地よい疲労感が得られ、その結果、夜ぐっすりと眠れるようになる、という場合もあります。もし、ご自身で運動不足を感じている場合には、定期的かつ適度な運動(スポーツなど)で、意識的に体を動かすことも、不眠解消には必要かもしれません。

休みの日にご家族で公園に出かけて体を動かすのも良いでしょう。学生時代にやっていたクラブ活動などを、大人になって再開してみるのも良いかもしれません。あるいは、気分転換に、軽く散歩をするだけでも効果があります。散歩をすることは、何か新しいアイデアが浮かんできたり、気分が前向きになったりすることも多いので、特にお勧めです。

不眠症の方は、寝る前のスマホは控えましょう

現代社会では、スマホやパソコンなどから情報を取り入れる時間が、非常に長くなっています。しかし、睡眠障害でお悩みの方は特に、眠る前の1時間程度は、スマホやパソコンの画面を見ることを、意識して止める必要があります。

ブルーライトと睡眠ホルモン

スマホやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、視神経を刺激し、脳を覚醒させてしまうため、睡眠障害を引き起こす大きな要因になります。寝る前は、部屋の照明を少し落とし、暖色系の穏やかな光にするなどして、自然な眠りを誘うホルモンである「メラトニン」が、きちんと分泌されるような、リラックスできる就寝環境を整えることも大切です。

また、仕事などで疲れを感じているのであれば、週に1回でも良いので、意識的に仕事の時間を短縮するなど、積極的な休息時間をとることも必要です。何も考えずに、ただウトウトとできるような時間を持つことで、質の高い睡眠が得られれば、心も体も回復していきます。

心配しすぎは、不眠症・睡眠障害の元です

様々なことに関して、過剰に不安感を持つことは、眠れないサイクルに入っていく大きな原因となります。

夜中のネガティブ思考

また、夜中に目が覚めて眠れない状態で、あれこれと考え事をしても、あまり良い考えには至らないものです。取り留めのないことを延々と繰り返し考えてしまい、どんどん暗い考えや不安が増していき、ネガティブな発想ばかりが頭の中を支配してしまいます。

まずは、そうしたネガティブな思考のサイクルを断ち切ることが大切になってきます。「眠れないこと」自体を悩みすぎると、それがまたプレッシャーとなり、余計に眠れなくなってしまう、という悪循環にもなります。やるだけのことはやったら、あとは「眠れなくても、まあいいか」「くよくよ考えても仕方ない、眠って忘れよう」くらいの、少し開き直るような気持ちでいることも、時には有効かもしれません。

ぐっすりと眠ることができれば、朝には頭がクリアになり、たとえ同じような一日を過ごすとしても、昨日よりもずっと前向きな気分で過ごせるようになることも多いのです。質の高い睡眠を取り戻す、という意識を持つために、時にはカウンセリングや、必要であれば一時的に睡眠薬の力を借りることも選択肢の一つとして考えながら、改善に向けて具体的な行動を起こしていきましょう。

睡眠障害・不眠症特有の「心配性」を返上しましょう

不眠症をはじめとする睡眠障害を抱えている方のほとんどは、実は、不眠症になる以前から、「心配性」や「不安症」とも言えるような性質を、すでに身につけてしまっていることが多いのです。

心配性との向き合い方

仕事のことや家庭のことなどで、心配事が次から次へと出てくることもあるでしょう。しかし、時には「まあ、なんとかなるさ」という、少し楽観的な心持ちでいることも大切です。

仕事のことなどは、できる限りの準備をし、最善を尽くしたら、「あとは、なるようになるさ」と、天命を待つくらいの、ある種の割り切りも必要かもしれません。自分でできることを精一杯やったら、あとは周りの評価に委ねるしかありません。人が自分に対して何を言おうと、それはその人の自由なのだから、と、自分の中で思い詰めすぎないことも大切です。

コミュニケーションによる悩み解消

家庭の悩みについては、ご家族の間でよくコミュニケーションをとることでも、状況が変わってくることがあります。もちろん、言い方などには注意が必要な点もありますが、お互いに歩み寄る姿勢を持つことで、少しずつ関係が和らいでいく場合も出てくるでしょう。もし、仕事などで毎日忙しく、ご家族との時間が十分に取れていないと感じる場合には、少し意識して家族との時間も取るようにして、コミュニケーションを復活させることも、良い方法です。

心配事を減らしていくことが、睡眠障害を克服する鍵となります。そして、そのためには、まずカウンセリングなどを通して、ご自身の「心配性」や「不安症」といった性質そのものにも、向き合っていくことが有効です。

不眠症と思っていても、案外眠れている場合もあります

「眠れない、眠れない」ということに意識が集中しすぎると、実際には眠っている時間があるにも関わらず、「全く眠れていない」と思い込んでしまう場合があります。一緒に寝ているご家族から見ると、「いや、結構ぐっすり眠っていたよ」と言われる、というケースも少なくありません。ですから、そこまで神経質になる必要はないのかもしれません。

眠りへの囚われを手放す

人間の眠りには、自然なサイクル(波)があります。ぐっすり眠れる時期もあれば、寝つきが悪かったり、途中で目が覚めやすかったりする時期もあります。また、仕事などで日中、気を張っている状態が続いていると、眠りが浅く感じてしまうこともあるのかもしれません。

あまり「眠れないこと」に気持ちを砕きすぎずに、「眠れない日もあるけれど、食事はちゃんと摂れているし、まあ大丈夫だろう」というくらいの、大きな気持ちでいることも、時には大切です。

リラックスできる工夫

不眠症を解消するために、ご自身に合った眠りやすい枕を選んでみたり、寝室でアロマを焚いてリラックスできる空間を作ったりするのも良いでしょう。仕事が立て込んでいる場合には、意識的に休息を取りつつ、何かリラックスできる趣味などを持つことも、気分転換になります。

眠ることに対して、あまり神経質にならないこと。そして、何か不安を感じることがあれば、一人で抱え込まずに、カウンセラーに相談してみるなどして、少し心を休ませてあげるのも良い方法です。不安感は、自分の中だけで持ち続けていると、どんどん増幅してしまうことが多いものです。ですから、その不安になる考え方の「元」となっている部分を、根本から正していくことも有効です。

ご自身の考え方が、あるパターンに凝り固まってしまっているな、と感じる場合には、カウンセラーという第三者から客観的な意見を聞いて、ご自身の考え方を少し見直してみることも大切です。一人で悩んでいないで、人に相談することで、心の重荷を下ろし、新しい視点を得ることができますよ。

不眠症・睡眠障害の原因と克服に向けて、もう一度

そもそも不眠症は、ちょっとしたストレスが原因で眠れない日々が続くことから始まり、それがやがて習慣となり、眠れない状態が固定化されてしまう、というケースが多いです。簡単に言うと、寝付きが悪かったり、夜中に何度も目を覚ましてしまったりする「」がついてしまった、というわけです。

睡眠の重要性と悪循環

しっかりと睡眠がとれないと、気分が落ち込むのはもちろんのこと、体調さえも崩しがちになり、日常生活に様々な支障をきたしてしまいます。言うまでもなく、本来、人間は眠るようにできています。

「陽が落ちて暗くなると、自然と眠くなる」というのは、人間が本来持っている自然な生体リズムであり、誰もが持つ当たり前の欲求です。ですから、その「眠くなる」という感覚を取り戻すことは、それほど難しいことではありません。

心因的なストレスと「不眠の癖」

不眠症の原因としては、不規則な生活習慣や、睡眠環境の変化(引っ越しなど)、あるいは精神的なショックなどが挙げられます。しかし、いずれの場合も、その根本(ベース)には、心因的なストレスがあり、それが「不眠の癖」を作り出してしまっていることが多いのです。「不眠の癖」は、体内時計を乱すだけでなく、精神的なバランスをも崩してしまうため、潜在意識のレベルから「眠れる癖」を再学習し、浸透させていく必要があります。

性格や考え方の影響

「不眠症」は、実のところ、“不眠”という症状自体が問題なのではなく、もしかしたら、あなたが幼少期の成育環境によって作り上げてきた、特定の性格や考え方のパターンが、根本的な問題である可能性もあります。育った環境や、関わってきた人々の影響によって、ちょっとしたことで不安を感じやすい性格を持ってしまうと、結果的に「トラウマ性のうつ」のような状態を発症し、「不眠」に陥ってしまう、というケースが、実は非常に多くあります。

また、その逆で、不眠が続くことによって、うつ的な状態になる、という場合も珍しくありません。

睡眠状態誤認とその影響

「不眠症」の方は、眠れないことのつらさを強く訴えますが、実際には、ご自身が思っているよりも眠れていることが多い、という特徴もあります。

眠っているのに、「全然眠れない」「一睡もしていない」と、ご自身の睡眠時間を過小評価してしまう状態を「睡眠状態誤認」と言います。睡眠状態誤認は、不安傾向が強い方やストレスの高い状況で見られることがあり、正確な自己評価が難しくなることがあります。

「明日の朝、大事な会議があるのに、眠れない…」「もし寝坊して遅刻したら、どうしよう…」
そんな風に考えて、なかなか寝付けなくなる、という経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。しかし、「不眠症」になり、このような不安を毎晩のように抱いていては、心身ともに疲れ果ててしまいます。

名古屋聖心こころセラピーでは、不安を持ちやすい考え方を修正し、「眠れる癖」を潜在意識レベルから浸透させていくことで、薬に頼らなくても、質の良い睡眠を取り戻すことを目指していきます。

薬に頼らず、深い睡眠を実現しましょう。心を整えれば、それは十分に可能です。

(参考)不眠が続いていたKさんのケース

Kさんは、仕事でとても疲れているにも関わらず、なかなか寝付けず、夜中に何度も目が覚めてしまい、疲れが全く取れない、という状態が長く続いていました。いつしか、「何とかして眠らなければ…」と、ご自身を追い込んでしまうようになり、不眠の症状がさらにひどくなってきたため、当セラピーにご相談にいらっしゃいました。

Kさんからじっくりとお話を伺うと、仕事に対する強い責任感や義務感などからくる精神的な疲れと共に、配偶者との関係がうまくいっていないことなども、大きな心理的負担となっていることが分かりました。

そこで、仕事に対する考え方や向き合い方を改めるための認知行動療法と、心身のリラックスを促すヒプノセラピーを複合的に取り組むことにしました。その結果、長年染みついていた「ストレスを受けやすい考え方」を、より柔軟で楽なものへと刷新することができました。

また、Kさんは、意識的に毎週スポーツで体を動かす時間を作るようにしました。それによって、適度な肉体疲労が得られるようになり、夜には深く心地の良い眠りにつくことができるようになりました。

現在、Kさんは、仕事とプライベートの区別をつけ、それぞれに充実した時間を過ごすことができるようになり、長年悩んでいた不眠を克服することができました。

参考文献・参考資料

  • 田ヶ谷浩邦(2007) 不眠症薬物療法の臨床 日本薬理学雑誌 129巻 1号
  • 綾部直子・三島和夫(2019) 睡眠障害と心理社会支援 精神保健研究 第65号
  • アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院

この記事の著者

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

この記事の監修者

公認心理師・臨床心理士。教育支援センターやスクールカウンセラーとして不登校支援や保護者相談、教職員へのコンサルティングに従事。心療内科や児童発達外来にて心理検査・カウンセリングも担当。現在はオンラインカウンセリングや、心理学と仏教を融合させたセミナー活動などを行っている。

目次