自閉スペクトラム症(ASD)カウンセリング

自閉スペクトラム症(ASD)は、心の病気や問題ではなく、生まれつきの脳機能の発達の偏り(障害)によるものと考えられています。そのため、社会生活を送る上で、様々な支障や問題が生じることがあります。その中で、ご家族、特に養育者や保護者の方の精神的な負担は非常に大きいものとなりがちです。疲れ切ってしまう前に、適切な対応やサポートを求めていくことが大切です。
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴を知りましょう
自閉スペクトラム症(ASD)は、心の病気ではありません。生まれつきの脳機能の特性によるものであり、対応する上で注意すべき点はいくつかありますが、ご本人がより生きやすいように環境を整えたり、関わり方を工夫したりすることは十分に可能です。
ASDは「脳機能の障害」
「自閉スペクトラム症」と聞くと、「何かあるとすぐに心を閉ざしてしまう人」「自分の殻に閉じこもっている人」といったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは正確な理解ではありません。自閉スペクトラム症は、現在では先天的な脳の機能障害であると考えられています。
「自閉」という言葉から、ひきこもりや対人恐怖症などを連想されるかもしれませんが、これらは心の病気であり、ASDとは異なります。ASDは、多くの遺伝的な要因が複雑に絡み合って起こるとされており、はっきりとした診断がつく典型的なケースだけでなく、その傾向がある(グレーゾーン)とされる軽症の方まで含めると、100人に1人くらいはいると言われており、決して珍しいものではありません。
情報処理の特性と困難さ

自閉スペクトラム症の人は、目や耳から入ってくる様々な情報を、脳がうまく処理することが苦手な場合があります。
そのため、その場の状況に応じた適切な発言や行動をとることが、難しいと感じることがあります。
また、ご自身の体験や感情を他の人と共有したり、相手の立場に立って物事を考えたり、自分の行動が相手にどう影響するかを想像したりすることが、非常に困難である、という特性もあります。
自閉スペクトラム症の症状の現れ方は本当に人ぞれぞれですが、基本的には3歳までにその特徴が現れることが多く、それ以降に診断されることになります。
そもそも「自閉スペクトラム症」とは何でしょうか?
そもそも「自閉スペクトラム症」とは、どのような概念なのでしょうか。
これまでの分類と「スペクトラム」という考え方
自閉スペクトラム症は、これまで「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」など、様々な名称で分類されてきました。1970年代以降、発達障害の一つとして自閉症が注目されるようになると、自閉症に似た様々な症状(いわば自閉症の親戚のような状態)が存在することが分かってきました。そのため、発達障害の診断をより細かく分類しようとする動きが進んだと考えられています。
しかし、実際には、典型的な自閉症と診断されるケースは少数で、多くの場合、様々な発達障害の特性を併せ持っていることがほとんどでした。そのため、一つの障害名だけでその人を診断し、理解することが難しい、という背景がありました。
そこで、「自閉症」「アスペルガー症候群」といったように、別々の障害として捉えるのではなく、それぞれの特性を境界線のない、連続したもの(スペクトラム)として、一つの大きなグループとして捉えよう、という考え方が出てきたのが「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」です。「スペクトラム」とは、「連続体」という意味です。診断名だけに固執するのではなく、一人ひとりが持つ多様な特性を理解し、その人に合った柔軟なサポートを提供していくことの重要性に、注目が集まってきたことが、この考え方が広まった大きな背景にあります。
多様性を理解する
発達障害の症状は、まるで色のグラデーションのように、その濃淡も、重なり具合も、人によって全く異なります。大枠として「自閉スペクトラム症」という診断名はありますが、具体的な症状の現れ方や、日常生活で感じる困難さの程度は、本当に様々です。ご自身の特性の理解や、周りの人との関わり方、適切な対応方法などに悩まれて、カウンセリングを訪れる方もいらっしゃいます。
自閉スペクトラム症(ASD)の代表的な5つの特徴

自閉スペクトラム症は、主に以下の5つの特徴によって定義づけられることがあります。
(ただし、これらの特徴の現れ方や程度は、人によって大きく異なります。)
1.社会性の障害
赤ちゃんは、通常、「笑う」「泣く」といった感情表現を豊かに行いますが、ASDの傾向がある場合、こうした表現や反応が乏しいことがあります。そのため、周りの大人は単に「おとなしい赤ちゃん」という印象を持つにとどまり、特性に気づきにくいことがあります。
やがて成長していくにつれて、人との関わりを極端に避けたり、逆に、相手の状況や気持ちを考慮せずに一方的に、あるいは過剰に関わろうとしたりするなど、対人関係において適切な距離感を保つことが難しくなっていくことがあります。
「なかなか目を合わせようとしない」「呼んでも振り向かない」「興味のあるものを見つけると、周りを気にせずどこかへ行ってしまう」といった、幼児期によく見られる特徴的な行動が、成長とともに、「相手の気持ちを読み取るのが苦手」「他人に対して無関心に見える」といった、社会性の困難さへと繋がっていくことがあります。
2.コミュニケーションの障害
言葉の発達の面では、初期においては、なかなか言葉が出なかったり、年齢相応の言葉の発達に遅れが見られたりすることがあります。言葉を話せるようになっても、一方的な「独り言」のような話し方になったりすることがあります。
成長し、青年期や成人期を迎えても、人から話しかけられた時に、相手の言った言葉をそのまま繰り返してしまう(オウム返し・反響言語)ことや、その場の状況や文脈に合った適切な返事をすることが難しいなど、スムーズな相互のコミュニケーションが、思うように上手くとれないことがあります。
3.想像力の障害(と、それに伴う対人関係の困難)
私たちは普段、相手の目線や表情、声のトーン、身振り手振りなど、様々な非言語的な情報から、その人がどのように感じているのかを、無意識のうちに推測しようとします。しかし、自閉スペクトラム症の場合、そうした非言語的な情報を読み取ったり、相手の意図を推測したりすることが苦手です。そのため、「相手が何を考えているのか分からない」「その場の空気が読めない」といったことが起こりやすくなります。
また、会話における皮肉や冗談、比喩表現などを文字通りに受け取ってしまい、相手の真意を理解することが困難なため、誤解が生じたり、対人関係のトラブルに発展してしまったりすることもあります。特に日本語は、直接的な表現を避け、曖昧な言い回しをすることが多い言語であるため、相手の真意を正確に理解することが、より一層難しく感じられるのかもしれません。
4.強いこだわりと限定された興味・行動
特定の物事に対して、非常に強い興味やこだわりを示すことがあります。例えば、ミニカーを一列に並べる、くるくる回るものをいつまでも眺め続ける、電車の時刻表や特定の標識、数字などをすべて覚えてしまう、といった行動が見られます。周りの人から見ると、あまり意味のないことのように思えるかもしれませんが、ご本人にとっては非常に興味深く、いつまでも飽きることなく続けてしまいます。
また、「物事を常に同じ状態にしておきたい」「決まった手順通りに行いたい」という同一性への強い欲求を持つため、家具の配置が変わっていたり、いつもの手順や道順が違っていたりすると、強い不安を感じ、元の状態に戻そうとする傾向があります(常同行動・同一性の保持)。
5.感覚の過敏さ、または鈍感さ(感覚異常)
音、光、匂い、味、触覚、痛みといった感覚の受け取り方に、偏りが見られることが多くあります。特定の感覚に対して非常に敏感(感覚過敏)であったり、逆に非常に鈍感(感覚鈍麻)であったりします。
例えば、特定の音(掃除機の音、サイレンの音など)を極端に嫌がり、耳をふさいでしまったり、特定の服の素材やタグが肌に触れるのを嫌がったり、逆に、痛みや暑さ・寒さなどを感じにくかったりすることがあります。また、味覚や嗅覚が人と極端に違うために、極端な偏食になったりすることもあります。脳が、入ってくる感覚情報をうまく処理できず、普通の人とは異なる反応を示してしまうのです。
併存しやすい他の障害や症状
自閉スペクトラム症は、他の様々な病気や障害を併発することがあり、半数以上は知的障害を伴っていると言われています。また、児童期や青年期には、注意欠如・多動症(ADHD)や、てんかん、学習障害/限局性学習症(SLD)などが併存しやすいことが知られています。
さらに、自閉スペクトラム症のお子さんの約80%から90%が、何らかの睡眠障害を抱えていると言われ、夜なかなか寝付けなかったり、数時間おきに目が覚めてしまったりするため、不規則で不健康な生活リズムになってしまう傾向があります。
周囲の不安や理解不足が、二次的な問題を引き起こすことも
自閉スペクトラム症のお子さんを持つ親御さんは、「きっと、自分の育て方が悪かったせいで、この子が障害になってしまったんだ…」と、ご自身を責めてしまい、人生そのものを悲観的に捉えてしまう方も、少なくありません。
「目に見えない障害」への戸惑い
また、自閉スペクトラム症やその他の発達障害は、「目に見えない障害」であるために、周りの人からはその困難さが理解されにくく、親御さん自身も、大きな不安や混乱を抱えてしまうのは、無理もないことでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、発達障害は決して親御さんの育て方が問題なのではありません。お子さんが生まれ持った脳の特性なのです。最近では、発達障害についての社会的な認知も広がりつつありますが、それでも、周囲からの十分な理解が得られているかと言うと、まだまだ不十分な状況です。一見すると普通に見えるお子さん(あるいは大人)が、通常とは異なる関わり方や言動をすることに対して、理解が乏しく、否定的な目を向ける人も、残念ながらいらっしゃいます。
親御さん自身の心のケアも大切
そのため、ご夫婦の間や、親戚との関係がうまくいかなくなってしまったり、周りの人に知られないように、お子さんの障害を必要以上に隠そうとしたり、あるいは、自分自身を責め続けた結果、親御さん自身が「うつ病」などの精神的な不調を抱えてしまうことも、少なくありません。そうなる前に、どうか一人で抱え込まず、当セラピーのような専門機関にご相談ください。
我が子への心配が募り、対応に疲れ果ててしまう親御さんへ
自閉スペクトラム症のお子さんは、独特な感覚やこだわりを持っていることが多く、周りの人が予期しないようなことに、ひどく動揺したり、パニックになったりすることがあります。また、周りの状況や人の気持ちを読み取ることが苦手なため、コミュニケーションを取ることが難しいと感じられたり…。その対応に、お母さん(お父さん)が疲れ果ててしまう、というお話をよくお聞きします。
日常生活での困難さ
変化に対して、非常に適応しにくい、という特性もあります。自分の中での決まった手順やルールに強くこだわり、それが崩れると、行動できなくなってしまったり、強い不安を示したりすることもあります。親御さんも、その特性に慣れるまでは、本当に大変な思いをされることと思います。
幼稚園や小学校など、集団生活の場でも、お友達と思うように遊べなかったり、子ども同士でコミュニケーションを取りながら、一緒に遊ぶ輪の中に入っていくことが難しかったりする場合もあります。
他の子と比べて、発達がゆっくりであることに、不安や心配が尽きない、という親御さんもいらっしゃるでしょう。しかし、お子さんたちの発達のペースは、本当に一人ひとり違います。少し周りの子と違うところがあったとしても、過剰に心配しなくても大丈夫なことも、たくさんありますよ。
人との意思疎通が苦手で、相手の立場に立ちづらい特性について
自閉スペクトラム症のお子さんと話をしていて、「この子は、他の子とは少し違うな」と感じることがあるかもしれません。しかし、全く話ができないというわけではありませんし、お子さんなりに、自分の主張や思いは持っています。周りの大人が、その子の表現方法を理解し、気持ちを受け止めてあげることが大切です。
コミュニケーションの難しさ
ただ、やはり自閉スペクトラム症のお子さんは、相手の気持ちを推測したり、その場の空気を読んだりすることが苦手な傾向があります。そのため、周りの人が予期しないような、唐突に見える行動をとってしまったり、相手を傷つけるつもりは全くないのに、結果的に傷つけてしまうような発言をしてしまったりすることもあります。親御さんとしては、お友達との関係などで、ハラハラドキドキ、心配する場面も多くなるかもしれません。
知的な遅れがない場合も
自閉スペクトラム症の場合には、知的障害を伴っている場合も多いですが、知的な遅れがない、あるいは非常に高い知的能力を持っている場合もあります。そのため、学力的な面で心配になることもあるかもしれませんが、一概には言えません。現在では、教育機関においても、自閉スペクトラム症など、特別な支援が必要なお子さんたちへの指導体制やサポート体制も、少しずつ充実してきているようですので、過度に心配しすぎなくても大丈夫です。
早期発見・早期療育の重要性
自閉スペクトラム症は、多くの場合、3歳以前にその特徴が現れるため、1歳半健診や3歳児健診で指摘されたり、あるいは幼稚園・保育園での集団生活や、就学前健診、小学校での生活場面などで、周りの大人がその特性に気づいたりすることがあります。早期に特性に気づき、療育(障害のあるお子さんの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組み)に繋げることで、お子さんが生活していく上でのスキルを早くから身につけられるように支援していくことが、現在では一般的になってきています。
アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症の違いは?
少し前までは、「アスペルガー症候群」という診断名が使われていましたが、現在では、自閉スペクトラム症(ASD)という大きな枠組みの中に含まれるようになりました。
アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群(現在はASDの一部とされます)は、対人関係におけるコミュニケーションの困難さや、限定された興味や活動への強いこだわり、といった特徴が見られますが、言葉の発達や知的な発達には、明らかな遅れが見られないことが特徴とされていました。そのため、一見すると問題がないように見え、一般的な社会生活を送っている方も多くいらっしゃいます。
しかし、個人で黙々と行う仕事や、一人で生活する分には特に問題がなくても、社会では、他者とのコミュニケーション能力や、状況に応じた柔軟な対応力が求められる場面が多くあります。そういった場面で、生きづらさを感じてしまう方は、少なくありません。
「少し変わった人」?
周りからは「少し変わった人だな」と思われていても、言葉の発達や知的な能力には問題がないため、日常会話程度の言語的なコミュニケーションは、問題なくできることが多いです。また、学業成績が良い場合も多いため、大人になるまで、ご自身や周りの人が、その特性に気づかない、という方もいらっしゃいます。
一方で、抽象的な指示や、曖昧な表現を理解するのが苦手な場合も多く、「あれ、適当にやっておいて」といった、ざっくりとした指示や要求に対しては、どうして良いか分からず、固まってしまう、というケースもあります。そのため、例えば家庭生活においては、奥様から「あなたは、どうしてそんな簡単なことも分からないの!?」と、厳しく責められてしまう、といったことも起こりがちです。
しかし、逆に、論理的にきちんと組み立てられたことや、ルールや手順が明確なことに対しては、非常に高い集中力と能力を発揮し、正確に、そして粘り強くこなしてくれる、といった強みを持っていることも、このタイプの方の特徴です。
このように、自閉スペクトラム症(ASD)と言っても、その特徴の現れ方は本当に様々であり、ご相談いただく内容も多岐にわたります。ですから、お一人おひとりの状況やお悩みを丁寧にお聴きし、その方に合ったオーダーメイドの対応や支援方法を考えていくことが、何よりも重要であると考えています。
自閉スペクトラム症の子を持つ親御さんへ:個性を楽しむ視点も
いつも自閉スペクトラム症のお子さんに寄り添い、対応されているお母さん(お父さん)が、最も大変な思いをされ、苦慮されていることと、心からお察しいたします。
「なぜ?」ではなく「どうすれば?」
「どうして、この子はこうなんだろう…?」と、悩んだり、時には腹立たしく思ったりすることも、たくさんあるかと思います。しかし、それはお子さんが生まれ持った脳の特性によるものなので、無理に周りの子と同じようにさせようとするよりも、まずはお子さん自身のペースでの成長を見守り、「どうして、こんな行動をとるんだろう?」と感じた時には、その背景にある理由を理解し、お子さんが納得できるような説明を心がけてあげると良いでしょう。
一見すると、周りの気持ちを考えない、配慮に欠けるように見える発言や行動も、「この子は自閉スペクトラム症なんだ」という事情を周りの人が理解していれば、「悪気はないんだな」と、案外すんなりと受け入れてくれる人も、実は多くいます。可能であれば、学校の先生や、親しい友人などに、お子さんの特性について説明しておくことも、助けになる場合があります。そうすることで、周りの人の見方も変わり、親御さん自身のネガティブな感情も、少し和らぐかもしれません。
抱え込まずに相談を
現実的には、定型発達のお子さんを育てるよりも、はるかに大変なことが多いのも事実です。お母さん(お父さん)も、一人で悩みを抱え込んでいると、本当につらくなってしまいます。カウンセリングなどを利用して、ご自身の心の内を誰かに話すことも、とても大切ですよ。
お子さんが、周りの目を気にして萎縮してしまい、自分の気持ちを話せなくなっている、ということもあります。診断名がついたことに一喜一憂する気持ちも、もちろんあると思いますが、そこから一歩進んで、「これから、どうすればこの子がもっと生活しやすくなるか」という視点で、具体的な行動を考えていくように、努めていきましょう。
特性を活かして、その人らしさが輝くように
「普通にできなければならない」という社会からのプレッシャー。周りからの理解が得られにくいことへの孤独感。そして、自分自身でも、なかなか受け入れるのが難しい発達障害の特性。「変わった人だね」と、心ない言葉をかけられたり…。様々な葛藤や困難の中で、日々を暮らしていらっしゃる方も多いでしょう。
「普通」とは何か?
小中学校では、15人に約1人、クラスに2人程度は、何らかの発達障害の傾向が見られる、という調査結果もあります。
社会では、しばしば「普通」であることが求められ、「普通の人」になれるように、と頑張り続けてきた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、周りからの理解が得られにくいと、いじめの対象になってしまいやすかったり、「どうせ自分なんて…」と、自己嫌悪に陥り、塞ぎ込んでしまったりすることもあります。
支援の活用と環境調整
ご自身が抱えている苦しんでいる状態を、正しく理解し、サポートしてくれる専門機関(医療機関、療育センター、相談支援事業所など)を受診したり、行政の支援制度を活用したり、あるいは、同じような特性を持つ人たちと交流できるデイケアや自助グループなどを利用したりすることも、有効な方法です。ご自身の発達の凸凹(得意なことと苦手なこと)を客観的に知り、無理なく生活していけるように、具体的な方法を考えていきましょう。
発達障害への社会的な認識は広まりつつありますが、自閉スペクトラム症など、それぞれの特性に応じた具体的な支援や、社会全体の理解・環境整備は、まだまだこれから、と言える状況です。
特別に大掛かりな支援が必要というわけではなくても、周りの人のちょっとした配慮や理解があるだけでも、ご本人の過ごしやすさは大きく違ってきます。自閉スペクトラム症は、一部の発達に未熟さがあるかもしれませんが、人はいくつになっても成長できます。周囲の理解と適切な支援があれば、苦手なことを抱えたままでも、得意なことを伸ばし、その人らしく生活していくことは、十分に可能です。人間、誰にだって得意なこともあれば、苦手なこともありますよね。
体格も、性格も、誰一人として同じ人はいません。自分を無理に抑え込んで苦しむのではなく、家族、恋人、友人、クラスメイト、職場の仲間として、お互いに関わりを持ちながら生活する中で、生き生きと過ごせるように、周りのサポートを得ながら、「その人らしさが輝く」ことができるように、一緒に考えていきましょう。
それでも対応に疲れた時には、カウンセリングへご相談ください
「普通の子とは、少し違うかもしれない…」
自閉スペクトラム症である我が子への日々の対応に、疲れ果ててしまった…。そんな時には、どうぞ聖心こころセラピーにお越しいただいて、その胸の内にあるつらいお気持ちを、私たちにお話しください。話すだけでも、少し心が軽くなるかもしれません。
心配しすぎないことも大切
それに、「うちの子は、もしかしたら自閉スペクトラム症なのでは?」と心配になって、ご相談に来られる方も、時々いらっしゃいます。しかし、詳しくお話を伺ってみると、案外、お母さん(お父さん)が必要以上に心配しているだけで、実際には個性豊かな「普通の子」の範囲内である、ということも、実はとても多いのです。
ですから、「自閉スペクトラム症と言われてしまった…」「アスペルガーかもしれない…」と、過度に心配になりすぎる前に、まずはカウンセラーや、あるいは気の許せるご友人など、信頼できる相談相手を見つけて、話をしてみましょう。そして、ご主人にも協力してもらい、子育てのストレスを一人で溜め込まないようにすることが大切です。
「子どもが健やかに育つためには、どうしたらいいのだろうか?」
そんな親御さんの切実な思いに寄り添い、一緒に考えていくお手伝いも、聖心こころセラピーでは行っています。どうぞ、お気軽にご相談ください。
参考文献・参考資料
- 傳田健三(2017) 自閉スペクトラム症(ASD)の特性理解 心身医学 57巻 1号
- 下山晴彦・黒田美保(監修)・高岡佑壮(著)(2021)『発達障害のある人の「ものの見方・考え方』 ミネルヴァ書房
- アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院