アダルトチルドレンカウンセリング

アダルトチルドレン(AC)とは、一般的に、子ども時代に、親との関係の中で受けた様々なネガティブな影響によって、心に傷を負ったまま大人になった人々のことを指します。
本質的に言えば、親として未熟であったり、問題を抱えていたりする養育者から、十分な愛情や安心感を得られずに成長した子どもは、大人になってからも、様々な「生きづらさ」や心の苦しみを抱え続けてしまうことがあるのです。

目次

アダルトチルドレン(AC)とは?:様々なタイプと特徴

「アダルトチルドレン」と聞くと、どんなイメージを持たれますか?
もしかしたら、「大人になっても、子どもっぽいままの人?」と思われるかもしれません。しかし、それは誤解です。

アダルトチルドレンとは問題のある親のもとで生まれ育ち、心に傷を負ったまま成人した人のこと

アダルトチルドレンとは、元々はアルコール依存症の親を持つ家庭で育ち、子ども時代に心に傷を負ったまま大人になった人たちを指す言葉でした。
しかし現在では、より広く、幼少期に、両親や家族から、本来受けるべきであった健全な愛情やケア、安心感などを十分に得ることができず、心に様々な傷や未解決な問題を抱えたまま成人してしまった人々、を指す言葉として使われています。

(アダルトチルドレンの頭文字をとって、単に「AC」と呼ぶことも多いですね。)

アダルトチルドレンは、学術的に確立された診断名ではないため、正式な定義は今のところありません。しかし、共通して見られるのは、理不尽な親や、機能不全な家庭環境の中で育った影響が、大人になってからも心の傷(トラウマ)となり、様々な問題を引き起こしてしまう、という点です。

  • 自分自身が、本当は何を感じ、何を望んでいるのか分からない
  • 心から楽しむことが苦手で、罪悪感を感じてしまう
  • 自分に自信が持てず、常に劣等感を抱えている
  • 人間関係を築くのが苦手で、トラブルを繰り返してしまう

など、人生の様々な場面で「生きづらさ」を日常的に感じてしまうことが多いのです。

アダルトチルドレンにも、様々なタイプがあります

アダルトチルドレンと言っても、その特徴の現れ方は、本当に人それぞれです。実は、一見すると正反対とも思えるような、色々なタイプが存在するのです。

それは、育ってきた家庭環境や、そこで担ってきた役割によって、様々な傾向が現れるからです。
例えば、非常に控えめで、大人しい性質のアダルトチルドレンもいれば、逆に、感情的で、周りを巻き込むような、積極的な(ように見える)アダルトチルドレンも存在します。

ですから、アダルトチルドレンの特徴として挙げられる項目の中に、当然、ご自身に当てはまるものと、当てはまらないものがある、という認識で、この先を読み進めていただければと思います。
すべてに該当する必要はありませんし、どれか一つでも、強く当てはまると感じることがあれば、それはあなたが抱える「生きづらさ」のヒントになるかもしれません。

アダルトチルドレンの背景:「機能不全家族」とは?

私たちは、愛されるために生まれてきたはずなのに…どうして、こんなにも生きることが辛いのだろう…


もし、あなたがそう感じているとしたら、その背景には、アダルトチルドレンという状態が関係しているのかもしれません。

先ほども触れたように、アダルトチルドレンが大人になると、理不尽な親や、問題を抱えた家庭環境の中で受けた、幼少期の心の傷が原因となって生じた、様々な生きづらさや問題に苦しみます。

アダルトチルドレンの「生きづらさ」の根本的な原因は、多くの場合、その人が育った家庭環境にあります。そして、アダルトチルドレンを育ててしまうような、問題を抱えた家族のことを、「機能不全家族」と呼びます。

「機能不全家族」とは、家族が本来持っているはずの機能(安心感を与える、子どもの健全な成長を支える、など)が、うまく働いていない家族のことを指します。
具体的には、親が子どもを支配しようとしたり、虐待があったり、親が依存症を抱えていたり、夫婦仲が悪かったり…といった状況が挙げられます。(これらはあくまで一例です)

理不尽な親や問題を抱えた家庭環境で受けた心の傷が原因 根本的な原因は、育った家庭環境 機能不全家族

そのような機能不全家族の中では、しばしば、言葉にはされない「暗黙のルール」が、家族全体を支配していることがあります。例えば…

  • 「家族の問題について、外で話してはいけない」
  • 「自分の本当の気持ちを感じたり、表現したりしてはいけない」
  • 「人を心から信頼してはいけない」
  • 「問題を問題だと、認めてはいけない(見て見ぬふりをする)」

…などです。
そして、子どもは、その暗黙のルールを敏感に察知し、それを守ることで、何とか親からの愛情(あるいは、罰を避けること)を受け取ろうと、必死に努力するのです。

このようなルールの中で育ってしまったアダルトチルドレンは、子ども時代に、本来であれば親から無条件で与えられるべき「安心感」や「愛情」を受け取ることができずに育っています。
そのため、自己信頼感や、心の豊かさといった、幸福度の高い人生に必要な能力を、十分に得ることができないまま大人になってしまった、という場合がほとんどです。

機能不全家族で生き残るため自分を抑え 特定の役割を演じる 本当の感情を表現することが難しくなります

アダルトチルドレンは、機能不全家族の中で生き延びるために、本来の自分を押し殺し、特定の「役割」を演じることで、何とかその場に適応しようとします。

その主な役割(タイプ)については、後ほど詳しく説明しますが、子ども時代を、常に理不尽な家庭環境の中で、自分を押し殺し、特定の役割を演じ続けて育ってしまったために、大人になってからも、自分の本当の感情を表に出して、自然に生活することが、非常に難しくなってしまうのです。

その結果として、

  • 人間関係を築くのが、極端に苦手になる
  • 何か問題が起こると、「白か黒か」といった極端な判断をしがちになり、すぐに「転職」や「離婚」といった結論に飛びついてしまう

など、かえって自ら、生きづらい人生を選んでしまう、という悪循環に陥ってしまうことがあります。

また、アダルトチルドレンは、このような常にストレスにさらされやすい思考回路や、不本意な行動パターンによって、ストレスを過剰に溜め込みやすい傾向にあり、「うつ病」「不安症」「パーソナリティ症」など、様々な精神疾患を発症してしまうことも少なくありません。

さらに、「共依存」の関係にも陥りやすく、問題を抱えた人(例:アルコール依存のパートナーなど)の世話を、過剰に焼いてしまう傾向が強く見られます。
常に頭の中が、相手のことでいっぱいになり、相手の問題に振り回されるうちに、ますます自分の本当の感情や欲求が分からなくなってしまう、という悪循環にも陥ってしまうのです。

アダルトチルドレンの主な5つの役割(タイプ)

アダルトチルドレンは、機能不全家族という、安心できない、予測不能な環境の中で、自分自身の心を守るために、本当の自分(ありのままの感情や欲求)を心の奥底に押し殺し、無意識のうちに、いくつかの特定の「役割」を演じるようになります。
以下に、代表的な5つのタイプについて説明しますが、これ以外にも様々な役割が存在しますし、複数の役割を併せ持っている場合も少なくありません。

1.ロスト・ワン(いない子、関心の薄い寂しい子)

親や周りの人に、何も求めず、期待せず、まるで存在を消しているかのように、こっそりと、家庭の片隅で息を潜めて生活します。
家族関係から意識的に距離を置き、自分の内側の世界(空想など)に閉じこもることで、身の安全を守ろうとします。
内気で、孤立しているように見えるため、周りの人からも、あまり期待されたり、注目されたりすることがありません。

心の中では、「誰からも愛されていない」「私なんて、いてもいなくても同じなんだ(無価値感)」といった深い孤独感や諦めを抱え、自分を表現することを諦め、人との深い交流を持つことができません。
親が未熟で、子どもの気持ちや存在に目を向けることがなく、ただ「手のかからない、大人しい子」くらいにしか思われなかった結果、とも言えます。
非常に寂しい状況の中、誰にも助けを求めることなく、社会の片隅で、ひっそりと孤独に生きていくことを選んでしまう、非常につらいタイプです。

2.ヒーロー(英雄、良い子、頑張り屋)

親や周りの人々の期待に応えようと、常に努力を惜しまず、頑張り続けることで、「家族の誇り」「期待の星」といった役割を担います。「優等生タイプ」とも言えます。
親の期待を満たすため、あるいは、親の気を引くために、勉強やスポーツなどで、人一倍努力し、目標を達成しようとします。
しかし、たとえ目標を達成したとしても、親からはさほど気にも留められなかったり、「できて当たり前」という扱いを受けたり、あるいは「もっと上を目指しなさい」と、さらに高い期待をされてしまったりするため、達成感よりも、むしろ「失敗感」や「不全感(まだ足りないという感覚)」を、常に抱えてしまいます。

目に見える実績を上げることが、自分の価値を証明する唯一の方法であるかのように思い込んでしまうため、本来の子どもらしい遊びや、楽しい時間、自分自身の喜びといったものを、すべて犠牲にしてしまいがちです。そのため、心の温かさや、人との繋がりといった、人間的な豊かさを育むことができません。

社会に出ても、その「努力しすぎる」癖が抜けず、常に上司や会社の評価を気にしながら、自分を追い込み続けてしまいます。楽しむことに対して、罪悪感を感じてしまう、という人も少なくありません。

3.ケアテイカー(世話役、なだめ役)

家族の愚痴を聞いたり、機嫌をとったり、あるいは兄弟の面倒を見る保護者のような役割を担ったりすることで、家族間の問題を調整し、バランスを取ろうとする役割です。
周りからは、「優しい子だね」「思いやりのある子だね」と評価されることが多いのですが、その背景には、「誰かの役に立つことで、自分の居場所を確保したい」「良い子でいれば、見捨てられないかもしれない」といった、無意識の心理が働いています。

いつも誰かの役に立とうと行動し、自分の都合よりも、相手の都合を優先してしまうため、自分自身の本当の感情や欲求を、常に後回しにし、犠牲にしてしまいます。
その結果、「自分が本当に何をしたいのか、何を感じているのかが、分からなくなってしまう」ということが起こります。

親(特に母親)の愚痴を、子どもが聞く。それは、「家族なのだから、助け合うのは当たり前」といった、一見すると美徳のように思えるかもしれません。しかし、それは子どもにとっては、非常に重い負担であり、親が本来負うべき責任を、子どもに押し付けている、という間違った関係性なのです。
人のストレスを一身に受け止めすぎて、自分自身が精神的に消耗しきってしまう方が、このタイプには多く見られます。

4.ピエロ(道化師、お調子者)

主に、末っ子に多く見られるタイプと言われています。
家庭の中に緊張感や、不穏な空気が漂うと、わざと面白いことを言ったり、おどけたり、馬鹿なことをしたりして、周りの注目を自分に集めることで、家族間の対立や、他の兄弟姉妹が犠牲になるのを、防ごうとします。
常に明るく、楽しく振る舞っているため、周りからは「陽気で、悩みなんてなさそうな、明るい性格の子だね」と見られがちです。

しかし、実際には、それは家族の問題から目をそらさせ、場を和ませるための「演技」であり、ご本人は、自分の本当の感情(悲しみ、怒り、不安など)を、全く表現できていません。
大人になっても、そのパターンは続き、周りの雰囲気が暗かったり、誰かが落ち込んでいたりすると、「自分のせいではないか」と思い込んでしまい、場を盛り上げようと、一生懸命になってしまいます。

常に周りにばかり気を配り、自分自身のことは後回し。笑顔の仮面の下で、本当は泣いている…。その情景は、とても切ないものです。

5.スケープゴート(問題児、いけにえ)

家や学校で、わざと暴れたり、非行に走ったり、様々な問題行動を起こすことで、家族の中に存在する、より深刻な問題(例:夫婦の不和、親のアルコール問題など)から、周りの目をそらさせようとする役割を担います。「トラブルメーカータイプ」とも言えます。
反発心や怒りを、行動という形で全面的に表現するのが特徴です。トラブルを起こすことで、自分の存在を主張すると同時に、無意識のうちに、家族が抱える、より根深い問題から、目を逸らさせようとしているのです。

自ら「悪い子」「問題児」という、嫌われ役を演じているように見えますが、その行動の裏側には、「寂しい」「助けてほしい」「もっと私を見てほしい」といった、満たされない、切実な感情が隠されています。
そして、親や周りの大人から「悪い子だ」「不良だ」「問題児だ」とレッテルを貼られるたびに、ご本人は深く傷ついているのです。

本来、愛情の薄い、未熟な親に育てられた結果として、そのような行動に至っているにも関わらず、その責任をすべて子どもに押し付け、非難する親に対して、子どもは、行き場のない、さらなる怒りを増幅させていきます。

複合型タイプ:複数の役割を併せ持つ

上記に5つのタイプを挙げましたが、多くの方は、どれか一つのタイプだけにきれいに当てはまる、というわけではありません。状況に応じて、複数の役割を使い分けたり、いくつかのタイプの特徴を併せ持っていたりすることが、むしろ一般的です。
そのため、より複雑で、絡み合った感情を抱え、つらい思いをされていることでしょう。

アダルトチルドレンが抱える「生きづらさ」

自分自身に自信が持てない

アダルトチルドレンの方は、自分自身の人生を主体的に生きるために、様々な努力や工夫をされている方も多いのですが、その一方で、根深い自信のなさを抱えています。
それは、子ども時代から、「しっかりしていなければならない」ということを、親から過剰に要求されて育っている場合も多く、子どもながらその期待に応えるために、懸命に行動してきたことが多かった筈です。

一見、しっかりしているようにも見えるのですが、その反面どこか崩れそうなもろさもあり、はたから見た場合、自信なさげに見えることもあります。また、その自信の無さを本人が気付いていない場合も多く見受けられます。

しっかりしていないと生きていけない環境にあったからそう見えるように演じてきましたが、心の芯には、もろさも抱えており、何かあれば途端に心が折れてしまうこともあります。

要求・希望を伝えられない

しっかりしていることが求められてきたために、無理をしがちになることもアダルトチルドレンの特徴です。人に助けてほしいと頼むことや、これはやりたくない、と思っても、嫌だとハッキリ断ることが出来ません。

また、人に尽くしたい、人に喜んで貰いたいという気持ちのバイアスがいつも掛かっているので、無意識の内に人が喜ぶ行動を取ることや、気を遣い過ぎていることも多いので、人疲れを起こす事も頻繁です。そのようにして自分の気持ちを押し殺して無理をしているのに、本人は全く気付いていない場合もあります。

また気付いていてもそれが自分の役割だと盲信し、その行動を変えることが出来ない方も多くいます。

大切な人からの「見捨てられ不安」

誰かに見捨てられたら辛く悲しく寂しい、と感じることは多かれ少なかれ誰しも持っている感情ですが、アダルトチルドレンでは見放され感、見捨てられ感が特徴のひとつに挙げられます。

幼児期に親との関わりが希薄だった場合には、見捨てられ感の強い人間になることが多くあります。そのため、ワザと相手の気持ちを試すような発言や行為を行ったり、相手を束縛したりする行動に出ることもあります。

見捨てられないよう、必死で相手の気持ちを察しようとします。また、自分の希望を正直に伝えることが難しいので、相手に自分の気持ちを察してくれるように切望することも多いです。

しかし現実は希望通りに察してもらえることは少なく、その度に傷つきますが、無理だと分かっていても、察して欲しい、解って欲しいという気持ちをなかなか止めることが出来ないためいつもイライラしたり寂しい思いをしたりの繰り返しとなります。

自分と他人との「境界線」があいまい

自分と人の境界線を設定することが苦手であり、相手に土足で踏み入られるような場合もあります。自分自身の問題か相手の問題か区別できず、自分のことのように考えてしまい、結果利用されるということもしばしば起こります。

人の心にグイグイと入り込んでくるような人に対してはその境界線が曖昧になってしまうこともあります。人との適切な距離を保ちにくく、よそよそしいかと思えば、好きな人に対しては、その境界線なくベッタリと一緒にいたいというような感情を持っていたりします。

恋愛依存症にも陥りやすいのがアダルトチルドレンの特徴でもあります。
幼少期の体験からくる思考や行動のパターンを丁寧に見つめ直し、自分らしい人生を歩んでいくための支援を、心理カウンセリングを通して行っております。

家庭内での不適切な養育が、アダルトチルドレンを生む

安心できない家庭環境

家族仲・夫婦仲が悪く、常に誰かの悪口を言っているような場合においては、家庭の仲がいつもギクシャクし、明るい笑い声などは聞こえない状態になっており、とても安心出来る家庭ではありません

そんな家庭で育ったとしたなら、お互いを敬い楽しい時間を過ごすということが理解できないために、いざ自分が楽しい時間を過ごしたいと思ってもどうすれば良いのか分からない場合も出てきます。

また、幼い頃から厳格な父親がいることや、愚痴っぽい母親がいることで、自分がその愚痴の聞き役になっているなど、子どもらしい成長を妨げられている場合もあります。ともすれば、いつもどこかで心が緊張しており、休まる時が無いことも多いでしょう。

本来受けるはずだった愛情が受けられていなかった場合には、自分が相手にどのようなことをしてあげたら良いのかということが分からない場合もあります。同時に、相手に喜ばれることを最優先に考えてしまい、自分に無理がかかるほど頑張ってしまう人がいるのも事実です。

アダルトチルドレンにはこのようなマルトリートメント(不適切な養育)を経由している状況があります。「どこの家だってそんな事ぐらいはあるのでは?」と考えるあなたは、やはり親と同じような事をしてしまう可能性があり、クールに親に対し批判的な精神を育てなければ、またアダルトチルドレンを次の世代に伝承してしまう危険性が伴うでしょう。

世代間で引き継がれてきた生きづらさの連鎖を見直し、自分らしく生きる一歩を踏み出していきましょう。

子どもは親の不仲に気付いています

親が不仲であっても、立派に成人している人も確かにいます。一概に親の仲が悪いからと言って、子どもが全員アダルトチルドレンになるということではないのですが、感受性の強い子どもであれば、家庭の雰囲気を敏感に感じ取りその場を和ませるために一生懸命になることもあるでしょう。

自分を犠牲にすることで家庭が上手く回ればそれでよいと考えている子もいるのですが、でもどこかその子の心に亀裂が生じており、結果自分のことを肯定できない場合や常に抑うつ感などを感じて苦しくなるケースもあります。親の場合には、子どもに無理をさせていないか、子どもに親の役割をさせていないかを今一度考える必要があるでしょう。

愛情への渇望感

通常であれば、幼い子どもは泣くことによって意思表示をし、それを受け止めお母さんが抱っこしたり、ミルクをあげたり、おむつを替えるなどして安心感を与えることで愛情に満たされますが、お母さんが無反応だったとか、あまり構って貰えなかったりして、自分の要望や欲求が叶えられず一方通行で満たされないと不満がいつまでも残り、愛情を渇望するようになります。

相手の都合などもあるので、求めた愛情の100%が返ってくる訳ではないのですが、その度合いによって、自分は愛されているなとか、お母さんに対する親しみが湧いてくることや、信頼感が生まれることが多くあります。

もちろん、お母さんだけにではなく、周りの人に対しても、何かして貰ったことの積み重なりにより、信頼感が築かれていきますがその体験がなく育ったアダルトチルドレンの場合には、その信頼感が低かったり、どんなものが信頼感なのかが分からなかったりする場合も多いです。

そして、その信頼への渇望を甘えの効く恋人や友人に求める場合もあります。
凄く仲の良い人に対しては、全身全霊で尽くすことになりますが、それ以外の人に対しては、興味を持てず、周囲に自分を表現出来ないなど疎外感のあるような対応を取ることもあります。

「絶対的な信頼」を他者に求める

自分が愛されている存在であり、価値のある存在であると確信するには、親からの愛情を受けていることなどが挙げられています。幾つになっても、親は子どもを心配し、味方になってくれる存在である場合も多いのですが、中にはそういった機会に恵まれずに、愛情らしいものを感じられないまま大人になっている場合もあります。

アダルトチルドレンの場合は、愛情よりも、自分を犠牲にすることで、相手に迎合しようとする意識が働いており、自分の存在が希薄な状態でいる場合もアダルトチルドレンにはあります。

自分がこうしたいからこうする、というよりも、誰かがこう言うから、こう言うと誰かが喜んでくれるからなどが行動の源になっており、それ自体が自分に無理や負荷が掛かっている場合があります。自分の人生を生きているという実感が乏しい場合もあり、そこに歪みが生じます。

「ほどほど」の感覚が分からない

愛情を受けて育っている中でも、100%要求に応えてくれる場合などは現実の世界では余りありません。相手の都合などもあるので、100の要求のうち、60~70が達成されれば、「まぁ、こんなものかな。」といった感情が湧いてくるのですが、アダルトチルドレンの場合には、10~20程度の返信しかなかったために、愛情に対する渇望感が一般の場合よりも非常に大きくなっている場合もあります。

それを交際相手に望んだりぶつけてしまい、自分の思ったような反応が得られなければ、必要以上に落ち込み、不信感と自己否定感を募らせていくことにもなります。

その、ほどほど加減というのをそんな経験から学べるといいのですが、幼いころからの体験により、大人になった今でも赤ちゃんのように全身全霊でぶつかって要求を満たそうというパターンもアダルトチルドレンにはあります。

また「どうせ私の気持ちなんて分かってくれるはずが無い」と決め込み、恋愛にも友人関係にも自分が傷つきたく無いので踏み込まず、避けて生きていくアダルトチルドレンのパターンもあります。

親の望む人生を歩まされた自分

本来人生は、失敗から学び成功で自信を積み重ねることにより、自分自身で作り歩んでいくものなのですが、親の中には幼い頃より子どもに過大な期待をかけ、自分の意のままに動かそうとしたり、逆に子どものことを無視して、自分は関係ないという態度を取り続け、子どもの成長のチャンスを妨げる親もいます。

そのような態度に子どもは違和感や抵抗感をを覚えたとしても、子どもであるために、親の庇護なしでは生きていけないので割り切れない思いを抱えたまま大人になります。

何かどこかで、親の愛情を感じられることがあると良かったのですが、自分のことで精いっぱいになっている親を見て、子どもは自分の気持ちを抑え、我慢していた部分も大きかったでしょう。

アダルトチルドレンの人の場合には、大人びているように見える人もいますが、子どもの時に子どもらしさを持って成長できなかったことで、どこか、もろさを抱えている場合も多いです。

機能不全家族は、思うよりも身近に

随分以前のアメリカでは相当な家族が機能不全家族だと言われていた時代がありました。そして子どもを育てる環境において各家庭で不備があり、その反省に基づき様々な啓蒙活動や子を守るために法整備が行われ現在に至っています。
そのようにして現在のアメリカでは親が子に与える環境を考慮しルールを厳格化したため、以前よりは機能不全家族が減る方向へと向かっています。

例えば父親は自分の娘が幼児であろうが二人きりで一緒に風呂に入る事を許されません、法律により罰せられます。そう聞けば、アメリカ人はそんなに酷い親が多いのか?と疑問を持つと思われますが決してそうでは無く、それ位に子どもを守ろうとの精神が高い国であるとも言えます。

日本では機能不全家族が未だに多く存在しています。アダルトチルドレンの温床とも言える機能不全家族とはどう言うものか、「親の資質を持ち合わせていない者が子を育てた場合、子は人生において生きづらさを抱きながら苦しい人生を余儀なくされる」それが機能不全家族の本質です。

夫婦仲の良くない家庭も多くあり、表面的には仲良くしているけれどという仮面夫婦の家庭も多いです。しかし、そんな中でも、子どもは親をよく見ていますので、親の弱いところも納得のいかないところも受け入れた上で、「そんなものだ」と割り切っている場合もあります。

でも、そこで辛い思いがあるとすれば、その思いを吐き出して、本心は、「自分はこうしたかったのだ」とか、「こう生きて行きたい」ということを、表に出さなければなりません。

それが親と離れて、親の期待に背く生き方であったとしても、人は自分の人生を幸福なものにするために、自分で決定する権利を持っています。親も完全な人間ではないことを知り、自分の中で折り合いをつけつつ日々過ごせると良いのですが、幼い頃からの育成環境などは大人になってからも大きく影響するため難しくなります。

否定的な言葉や愚痴を吐く親の影響

家庭において否定的な言葉が飛び交っている場合には、子どもたちの中でも、否定的なコミュニケーションという認識を持ちます。父親が常に叱責していたり、あるいは無視していたり、また、母親が常に父親の悪口を言っている、家族が悪口を言い合っているなどの環境にいることで、そのようなコミュニケーションが普通だと感じてしまい、自分の考え方も否定的なものに凝り固まっていく可能性が高くなります。

それは自分自身が、何か行動を起こそうとしたとしても「そんなことをしても失敗する」「自分はそんな人間に値しない」と考えてしまい、自らの可能性を狭めてしまうことにもなるでしょう。

アダルトチルドレンから抜け出すために、そんな親からの負の教育の影響を受けた考え方を取り去り、自分を認め新しい肯定的な考え方を受け入れる、などの機能不全家族である親からの間違った教育を排除すると共に、認知を改めることが必要になってきます。

子ども時代に、十分に褒めてもらえなかった経験

虐待がなかった家庭であっても、どことなく子どものすることに否定的であったり、子どもの価値観を馬鹿にしていたり、褒められることが少なかった場合にも、「自分はこれでいいのだ」というような自己肯定感を持てない場合もあります。

親自身が自分に自信が持てないために、親の持つ劣等コンプレックスにより子どもを馬鹿にした育児をしがちになるという傾向もありますので、自分にアダルトチルドレンの傾向がある場合には、まずは、自分の自己肯定感を高める認知療法を行っていく必要もあるでしょう。

虐待などはなかったけれど、「親はいつも自分を否定することを言っていたなぁ」とか、「褒められることや認められている感じがしなかったなぁ」という場合には、その育成環境が自分の性格形成に大きな影響を及ぼしていることを知り、自分自身の考えを少しずつ変えていくことも必要になるでしょう。

アダルトチルドレン克服に向けて:自分らしい人生へ

アダルトチルドレンにとって大切な事は、自分にとって生きづらい考え方の癖を知り、大きく変化させる事です。しかし考え方・生き方の癖はその家庭の中で長い時間を掛け培われたものが潜在意識に染み込んでしまっている為、自分の意思だけで変えていく事はとても難しいことです。
その為、心理カウンセリングや心理療法などの手法が必要になってきます。

名古屋聖心こころセラピーでは、心理療法やコーチングなども交え、顕在意識及び潜在意識に直接働きかける事で、不幸に導く考えかたの癖を、幸せになるための思考・行動へと書き換えていくためのアダルトチルドレン克服プログラムを用意しています。

今の生活がとても生き辛いと思っている方。
「言いたい事がなかなか言えない。」
「こんな事を言ったら嫌われてしまうかも知れない。」
「人に合わせてばかりいたら、自分が本当に何をしたいのか分からなくなってしまった。」
…例を挙げればキリがありません。

自分の考え方・行動パターンに生き辛さを感じておられるようなら、一度当セラピーの心理カウンセリングにお越しください。名古屋聖心こころセラピーでは、専門的な知見を活かして一人ひとりに合わせた支援を行っております。

恐らく、アダルトチルドレンとしての考え方が染み付いてしまっている方にとっては「アダルトチルドレンだからそういう考え方をしてしまうのだ」と思うことさえもはばかられることでしょう。

あなたがどう思いどう感じようと、それは自由であり、なにひとつ悪いことではありません。

ほんの少しだけ勇気をだして 自分を信じてみてください。
自分がどうしたら幸せになれるのかを考えてみてください。

幸せになっていけない人など 誰一人としていないのですから。

人生はあなたが思うよりも本当はずっと楽しいものです。
アダルトチルドレンの傾向を丁寧に理解し、回復のサポートを行っています。

参考文献・参考資料

  • 斎藤学(1996) 『アダルト・チルドレンと家族:心のなかの子どもを癒す』 学陽書房
  • 西尾和美(1997) 『アダルト・チルドレンと癒し』 学陽書房
  • 諸井克英(2007) 家族機能認知とアダルト・チルドレン傾向 同志社女子大学学術研究年報 第58巻

この記事の著者

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

この記事の監修者

医師。藤田医科大学医学部を卒業後、臨床医として救急・集中治療など幅広い分野で経験を重ねる。現在は稲沢市民病院に勤務。ACLSプロバイダー認定を受け、急変対応やチーム医療の現場に携わる。心理領域への関心も深く、臨床現場での視点から本サイトの監修に協力。

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