依存性パーソナリティ症カウンセリング

依存性パーソナリティ症(依存性パーソナリティ障害)とは、大切な決断を他人に委ねてしまったり、自分で責任を負うことを避けたりして、精神的にも物理的にも自立することを望まず、放棄してしまいがちな心の状態を指すことがあります。しかし、それでは「自分の人生を生きている」とは言えませんよね。ご自身の人生の主体性を取り戻していくことが、とても大切になります。

目次

依存性パーソナリティ症(依存性パーソナリティ障害)とは

依存性パーソナリティ症の特徴 過度な依存心 決断の困難 分離不安 自信の欠如 批判の過敏さ

依存性パーソナリティ症(依存性パーソナリティ障害)は、他者への過度の依存と自立の困難さを特徴とする精神疾患です。依存性パーソナリティ症の人は、日常生活のさまざまな面で他人の助けや支援を必要とし、自分で決断することに強い不安を感じます。

依存性パーソナリティ症(依存性パーソナリティ障害)の主な特徴は、以下のとおりです。

  1. 過度な依存心:他者に頼りすぎる傾向がある
  2. 決断の困難:日常的な些細なことでも決められず、他人の助言を求める
  3. 分離不安:一人でいることを極端に恐れる
  4. 自信の欠如:自分の能力や判断を信じられない
  5. 批判への過敏さ:他者からの批判や拒絶に対して強い不安を感じる

依存性パーソナリティ症は、人口の約1%弱が罹患していると考えられており、男性よりも女性に罹患率が高い傾向があります。思春期や成人期早期に発症することが多いとされています。

自立とは少し距離がある「依存性パーソナリティ症」

親御さんや恋人、配偶者、あるいは友人など、経済的に頼れたり、自分の世話をしてくれたりする人に、様々な理由をつけて過度に頼ってしまい、自分自身の成長や自立を妨げてしまっている場合、それは「依存性パーソナリティ症(依存性パーソナリティ障害)」と見なされることがあるかもしれません。

「依存性人格障害・依存性パーソナリティ障害」は、最近では「依存性パーソナリティ症」と呼ばれることが一般的になってきました。この障害は、「誰かに守ってもらいたい」「認めてもらいたい」という気持ちが常に強すぎて、無意識のうちに誰かに頼ることで、自分の人生の責任から逃れようとしてしまう心の状態を指します。

特徴と背景

男女比で見ると、女性に多い傾向があると言われています。頼りにしている相手から「嫌われるのではないか」「見捨てられるのではないか」という「見捨てられ不安」を常に抱えているため、相手に従順に振る舞うことで、自分への関心や世話、愛情を引き出そうとすることがあります。

ご自身の欲求や考えをあまり主張せず、受け身な態度をとることが多いかもしれません。周りの人からは、その様子が少し不自然に映ることもあるでしょう。しかし、「一人では生きていけない」と感じているご本人にとっては、それが自然な心の動きであり、ある意味、生きていくための術(サバイバル手段)なのかもしれません。

また、依存性パーソナリティ症の傾向がある方は、リーダーシップのある人や、頼りがいのある賢い人を強く求め、その人に自分の人生の舵取りを委ね、安全な方向へ導いてもらおうとする傾向があります。

時には、相手の気を引くために、わざと病気のふりをして世話を焼いてもらおうとしたり、無力で弱い自分を演じることで、相手を依存的な関係に引きずり込もうとしたりすることも、残念ながら見られます。

面倒見の良い相手をうまくコントロールし、一時的に安心感を得られたとしても、その関係が崩れてしまった途端、心のバランスを大きく崩し、自分の人生に対する自信を失い、抑うつ状態が続いてしまうこともあります。その結果、一部の方がひきこもりやニートと呼ばれる状態になってしまうことも少なくありません。

他のパーソナリティ症との違い

「依存性パーソナリティ症」の方は、「相手から世話をされなければ、この厳しい現実を生きていけない」と考えてしまうため、相手に「しがみつく」ような行動をとることがあります。この行動は、「回避性パーソナリティ症」の方が、他人との関係を避けようとする(回避する)のとは、対照的な行動パターンと言えるでしょう。

また、この依存性パーソナリティ症の傾向がある方には、「分離不安症」や「共依存症」、「恋愛依存症」といった他の心の状態を併せ持っている場合も多く見られます。

もしかして?「依存性パーソナリティ症」セルフチェック

以下の項目に、あなたはいくつ当てはまりますか?

  • ひとりでいると、見捨てられたような、強い不安を感じてしまう。
  • 自分の生活の面倒を誰かに見てもらい、その人にすべてを委ねたいと感じる。
  • ひとりでいると落ち着かなかったり、言いようのない虚しさを感じたりする。
  • 自分で計画を立てたり、何か新しいことを始めたりすることに強い不安を感じる。
  • 周りの人の助言や指示がないと、物事を判断したり、決断したりすることができない。
  • 人から嫌われたり、拒絶されたりするのが怖いため、自分の意見と違っていても、相手に合わせてしまう。
  • 他人からの愛情や保護を得るためなら、自分が不快に感じることでも我慢して受け入れてしまう。
  • 頼りにしていた親密な関係が終わってしまうと、すぐに自分を支え、世話をしてくれる他の誰かを必死に探してしまう。

もし、上記のうち4つ以上当てはまるようでしたら、依存性パーソナリティ症の傾向がある可能性も考えられます。一度、専門家にご相談されることをお勧めします。

依存性パーソナリティ症のタイプ分類

依存性パーソナリティ症は、その現れ方によって、大きく以下の5つのタイプに分類できると考えられています。(これはあくまで傾向であり、明確に分けられるものではありません。一例として、現れ方の違いが見られることがあります。)

不安を与えるタイプ

このタイプの方は、周囲の人に対して「自分がいかに弱いか、無力か」を強くアピールし、相手に不安感や心配を抱かせることで、関心や世話を引き出そうとします。

「回避性パーソナリティ症」の方と似て、社会的な活動や責任のある立場を避けようとする特徴が見られます。「自分一人では何もできない」という感覚が強いため、自分を守ってくれそうな強い人物には非常に従順になり、自分の人生の責任を委ねようとします。

しかし、その頼りにしている人が「どこかへ行ってしまうのではないか」という強い不安を常に抱えており、孤独になることを極度に恐れます。

社会的責任を回避したいという思いから、病院や福祉施設のような、保護されていると感じられる環境を好む傾向があるため、結果として一般社会から遠ざかり、孤独に陥りやすいという問題も抱えています。

適合的なタイプ

このタイプの方は、他のタイプと比べて、最も服従的で協調性が高い傾向があります。「他者から見捨てられたら、自分は何もできない」という強い不安から、常に相手の顔色をうかがい、相手の気分に合わせて明るく振る舞ったり、相手に気に入られようと努めたりします。一見すると、社交的で人付き合いが上手なタイプに見えるかもしれません。

しかし、その裏側には孤独に対する強い恐怖心が潜んでおり、「自分が独りになることは、自分の存在価値を失うことだ」と感じてしまうのです。そのため、相手からの世話や愛情を引き出すために、自分自身の気持ちや欲求を犠牲にしてしまうことも少なくありません。

「自分がどうしたいか」よりも、「どうすれば相手に好かれるか」を常に優先して考えてしまいます。他人の反応によって自分の存在価値を確認しているため、頼りにしていた大切な人からの支えを失うと、社会環境への適応が極端に難しくなり、抑うつ状態に陥ってしまうことが多いのが特徴です。

未成熟なタイプ

このタイプの方は、成熟した大人になることや、精神的に自立することから、無意識的に遠ざかろうとします。自分自身が未成熟であることを理由にして、自分の人生に対する責任から逃れようとするため、常に「自分はまだ未熟だ」ということを周りにアピールするような言動をとる傾向があります。

例えば、年齢にそぐわない子どものような外見や態度、話し方をすることで、「私はまだ一人で生きていけません」というメッセージを周囲の人に伝えようとします。子どものように保護される環境や生活を好むため、社会的に責任のある立場や役割を引き受けることはありません。

ご本人は、「自分一人では生きていく力がない」と強く信じ込んでいるため、周りの人が無理に自立させようとしたり、厳しく接したりすると、かえって心のバランスを崩したり、ひきこもってしまったりする可能性が高いです。

自己無きタイプ

このタイプの方は、「他人の人生」に「自分の人生」を重ね合わせ、融合させようとする傾向があります。「相手の幸せ」が「自分の幸せ」であると捉えるため、自分を犠牲にしてでも相手に尽くそうとします。

例えば、献身的な妻が、自分のすべてを投げ打って夫を支えようとするような姿は、このタイプの方に見られることがあります。自分と他人との境界線が曖昧になっているため、自分の存在価値のすべてが相手に依存している状態になります。

そのため、相手との関係が壊れてしまうと、まるで自分のアイデンティティそのものを失ったような感覚に陥ってしまいます。
その結果、重いうつ病や「境界性パーソナリティ症」などを併発する危険性もあり、特に注意が必要なタイプと言えるかもしれません。

無気力なタイプ

このタイプの方は、自発的な行動力や、物事に対する情熱、エネルギーが不足しているように見えることがあります。

周りからは「やる気がない」といった印象を与えがちで、社会活動へのモチベーションが低く、喜びや楽しみといった感情をあまり表に出しません。対人関係においても、「人と親密な関係を築きたい」という欲求が希薄に見えることがあります。

この点は「シゾイド(分裂病質)パーソナリティ症」と類似している部分があると考えられます。しかし、「無気力なタイプ」の方は、「シゾイドパーソナリティ症」の方のように他人の感情に共感できないわけではなく、単に対人関係を築くことへの熱意や意欲が湧いてこないために、結果として人との距離を置こうとするのです。

このタイプの方にとっては、自分の人生がどうなろうと、それほど重要ではないと感じている節があり、自分自身を幸せにしようと積極的に行動することが少ないかもしれません。自分自身への関心が低いことから、依存的な状態を改善したいというご本人の意欲も乏しい場合があり、改善へのプロセスが困難を伴うことがあるのが特徴です。

依存性パーソナリティ症の原因とは

子どもは、生まれてからしばらくの間、母親(または主な養育者)による全面的な保護や世話、そして愛情を必要とします。これは当然のことです。お腹が空いた時、寂しい時に、それを満たしてくれる母親の存在は、子どもにとって絶対的で、偉大なものです。

健全な発達と依存

乳児期や幼少期には、母親に依存することで、子どもは安心感を得て、健やかに成長していきます。しかし、やがて成長するにつれて、「自分と母親は別の存在なんだ」ということを認識し始め、親から精神的に自立したいという気持ち(自立心)が芽生え始めます。

健全な生育環境であれば、母親との間に築かれた信頼関係を土台にして、子どもは少しずつ自立へのステップを踏み出していくことができます。

過保護・過干渉の影響

もし母親が過保護であった場合、子どもが成長しているにも関わらず、いつまでも子ども扱いをしてしまうことがあります。身の回りの世話を焼きすぎたり、子どもが直面する問題を親が先回りして解決してしまったりすることで、子どもは「自分は何もできない、無力な存在だ」と感じるようになり、親から精神的に自立する機会を奪われてしまいます。

そのような環境で育った方は、大人になっても、まるで未熟な子どものように泣きわめいたり、「自分は無力だ」とアピールしたりすることによって、相手をコントロールしようとする欲求が現れてしまうことがあるのです。

不安定な家庭環境の影響

家庭内に暴力があったり、親がアルコールなどに依存していたりするような不安定な環境で育った場合、子どもは「自分はありのまま受け入れられている」という安心感を得ることが難しくなります。そのため、常に親の顔色をうかがったり、時には「良い子」を演じたりして、親からの愛情や関心を得ようとする必要が出てきます。

このように、十分な保護や安定した愛情を受けられなかった子どもは、親からの「見捨てられ不安」を人一倍強く抱くようになり、誰かに依存することでしか安心感を得られない、という心の状態になってしまうことがあるのです。

常に誰かに頼り、依存し続ける心理

成人し、大人になれば、自分の力で生きていく(自立する)のが、人間として自然な姿です。しかし、依存性パーソナリティ症の傾向がある場合、他者に過度に依存する形で、自らの安全や安心感を確保しようとする傾向が見られることがあります。常に誰かに頼り、助けてもらい続けることで、かろうじて自分を保とうとします。

自立への意欲の欠如

相手に頼り切る 自立心が乏しい

根本的に、「自分一人の力や能力では生きていけない」という強い思い込みがあり、周りに心配をかけるような行動をとったり、まるで保護が必要であるかのように、年齢にそぐわない幼い振る舞いをしたりすることもあります。

口では色々な理由をつけて正当化しようとしますが、結局のところ、自立しようという気持ちそのものが非常に薄く、常に「依存できる相手(寄生できる相手)」を探し、その人に頼り切って生活している、という状態が特徴的です。ご本人も、「自分一人では生活していけない」と強く感じています。

小さな子どもが親に頼るのは当たり前のことですが、大人になってもその意識が抜けきれず、自分のことを自分で決められない、という事態に陥ってしまいます。そして、もし自分の意志で行動してもうまくいかなかった場合には、その不満を依存している相手にぶつけてしまう、ということも起こりがちです。

自分の人生を自分で決められない苦しさ

自分の人生を、自らの意志で切り開いていこう、という意識が希薄なため、常に誰かに頼り切ったり、依存したりしてしまいます。そして、その依存している相手の幸せが、まるで自分の幸せであるかのように振る舞うことで、心の安定を保とうとします。

他人の人生を生きることの危うさ

しかし、その関係性がうまくいかなくなると、非常に大きなショックを受け、抑うつ状態に陥ってしまうことも少なくありません。

「人のために尽くすことが、自分の生きがいだ」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。その献身的な姿は、周りからは美しく見え、称賛されることもあるでしょう。しかし、その根底で、「自分自身」という存在が失われてしまっているとしたら、それは大きな問題です。摂食症などの問題を抱えている方にも、同様の傾向が見られることがあります。

例えば、「ご飯も食べられないほど弱っている自分」を演じることで、家族からの心配や世話を引き出そうとする心理が働くこともあります。「病気になることで、周りから心配してもらえる」「病気でなければ、自分の存在価値がない」といった、歪んだ思い込みに囚われてしまっている可能性もあります。

人生には、本来、たくさんの興味深いことや楽しいことが溢れています。それに気づこうともせず、あるいは気づく機会を自ら閉ざし、他人の力に頼って生きることは、非常にもったいないことではないでしょうか。

依存性パーソナリティ症に見られる幼い言動

大人になれば、物事を論理的に考え、話し合いの場では筋道を立てて説明するなど、合理的なコミュニケーションをとることが一般的です。しかし、依存性パーソナリティ症の傾向がある場合、感情的な反応や、年齢にそぐわない幼い言動が前面に出てきてしまうことがあります。

感情的なコントロールの難しさ

例えば、自分の思い通りにならないと、大声で泣き出したり、時には物に当たったり、暴力をふるったりして、相手を従わせようとすることもあります。その姿は、まるで小さな子どもが、自分の要求を通すために、親を困らせている状況によく似ています。

相手に依存でき、その関係性が安定している間は問題がないように見えても、何らかの理由でその関係性が壊れそうになると、パニック状態に陥ってしまい、自分の力ではどうすることもできず、立ち直れなくなってしまう方もいらっしゃいます。

周囲の関わり方の難しさ

周りの人が、無理に自立を促そうとすると、ご本人がさらに引きこもってしまったり、パニックを起こしてしまったりする危険性もあるため、慎重な対応が必要です。しかし、だからといって、いつまでも依存を許容し続けるのではなく、ご本人が少しずつでも自立に向けて歩み出せるように、周りの人も根気強くサポートしていくことが大切です。

最初から高い目標を設定すると、くじけてしまいやすいですが、まずは「自分にもできるかもしれない」と思える範囲から、自分で何かをやり遂げる経験を積み重ねていくことが、自信を取り戻し、人生を楽しむことへの大切な第一歩となります。

過保護・過干渉は自立の妨げになる

幼い子どもは、力も知恵も大人ほどありませんから、できないことがたくさんあります。親が子どもの世話を焼くのは、ごく自然なことです。しかし、成人してからも、親が子どもの世話を焼き続けたり、子どもが何かを決めようとする時に過剰にアドバイスをしたり… といった傾向は、依存性人格障害・依存性パーソナリティ症を抱える方のご家庭で、多く見受けられることがあります。

親が子の成長を阻むケース

自立心の強いお子さんであれば、親に反発してでも自分の意志を貫こうとするかもしれません。しかし、十分に自立心が育まれなかったお子さんの場合、自分の意思を持たず、親に依存することでしか行動できない、という状況に陥ってしまうことがあります。しかし、何かの出来事をきっかけに、その親子関係が崩れた時に、自分の中に確固たる意志がないことに気づくのでは、少し遅すぎるかもしれません。

人生で何かに躓いた時には、お子さん自身が自分の頭で考え、乗り越えていく経験が必要です。しかし、その躓く石(困難や失敗)すらも、親が先回りして取り除いてしまえば、本当に大きな壁にぶつかった時に、自分自身の力で立ち直れなくなってしまう可能性があります。お子さんの依存を支えている親御さん自身も、その関わり方について、真剣に考え直す必要があるでしょう。

時には「見守る」ことも大切

相手に依存して生きていくことは、ご本人にとっては、一種のサバイバル術であり、生きていくための一つの手段なのかもしれません。自分を弱く見せることで、様々な困難や責任から身を守ろうとしている、という可能性もあります。

他人軸で生きることのもろさ

しかし、自分の人生であるにも関わらず、その判断基準が常に「他人」になってしまっている状態は、「自分軸」を持たないため、経験から学ぶことができず、非常に脆いものです。

人間は誰しも一人では生きていけませんから、自分よりも能力が高い人や、経済力のある人に頼りたい、という気持ちが生まれること自体は、理解できなくもありません。しかし、もしその頼っている相手が力を失ってしまった時、あるいは、否応なしに自分が一人で生きていかなければならなくなった時に、依存的な状態に陥っていると、どうして良いか分からなくなり、さらに深刻な状況に陥ってしまう可能性があります。

そうならないためにも、親御さんや周りの方は、時にはぐっとこらえて手や口を出さず、ご本人の力で行動を起こせるように、温かく見守ることも大切なのです。

自分で考え、判断し、行動する力を育む

依存性人格障害・依存性パーソナリティ症の背景には、多くの場合、親子関係の問題が深く関わっています。お子さんの自立を促すためには、親御さんが少し距離を置いてみたり、一から十まで世話をするのではなく、自分でできるようにサポートしたり、様々な問題を自分の力で解決できるように見守ったりすることが必要になってきます。

失敗から学ぶ機会を

もちろん、命に関わるような危険な状況にある場合には、ためらわずに助けの手を差し伸べる必要があります。しかし、それ以外の場合には、お子さんのペースに合わせて、「自分一人でも問題を解決できた」という成功体験を積み重ねていくことが、変化への大きな力となります。むしろ、親としては、お子さんが失敗することを恐れるのではなく、失敗から学ぶことを奨励するくらいの気持ちでいることが大切です。

時には、つらい状況にあっても、すぐに助け舟を出さずに見守ることが必要な場合もあります。もし助ける場合でも、お子さんの自立心を損なわない範囲で行う、という配慮が大切です。

「見捨てられ不安」と向き合う

親や配偶者などに頼り、相手に合わせることで、自分の安全や生活が保障される、という経験を繰り返していると、それが当たり前のパターンになってしまうことがあります。しかし、その場合、周りの人もそのことを理解した上で、「ここまでは手伝うけれど、ここからは自分でやってみよう」というような、適切な線引きを行うことが必要になってきます。

自立へのチャレンジ

何でもお世話をしてくれる存在は、とても有り難く、楽に感じられるかもしれません。しかし、同時に、それはあなたの自立を妨げる存在でもある、ということを知る必要があります。自立できない状態では、社会的な信用を得ることも難しくなりますし、いつまで経っても「子どもっぽい人だな」と思われてしまう原因にもなりかねません。自分のことは、自分で責任を持ってできるようになるために、主体的に取り組んでいくことが必要です。

そのためには、まずご自身の中にある自立心を育て、「自分の力で何かをやってみよう」とチャレンジする気持ちを持つことが大切になってくるでしょう。それでも、どうしても自分に自信が持てない、という場合には、ぜひ名古屋聖心こころセラピーにお越しください。カウンセリングを通して、自己肯定感を高め、自分に自信を持って一歩を踏み出せるように、お手伝いをさせていただきます。

自分を助けてくれる人に対しては、感謝の気持ちを持ちつつも、自分の人生は、自分の力で歩んでいくのだ、ということを忘れないでください。誰かの顔色をうかがいながら生きるのではなく、自分の心の声に耳を傾け、自分の好きなこと、やりたいことができるように、少しずつ気持ちを変えていくことも大切です。依存している誰かとの関係は、いつか変わることも、終わることもあるのですから。

自分自身を信じて、あなたの力を試してみませんか?

自立心をサポート 「自分の力でやってみよう」と一歩を踏み出す気持ち 感謝の気持ちを持つ

「依存性パーソナリティ症」克服に向けて

「依存性パーソナリティ症」の方は、パニック障害などの不安症や、うつ病などを発症して初めて、ご自身が誰かに過度に依存していることに気づく、というケースも少なくありません。改善への第一歩は、まず、ご自身が依存的な状態にあることを自覚し、認識することから始まります。

新しい関係性を築くために

これまで繰り返してきた、不健全な依存関係から抜け出し、相手と対等で、お互いを尊重し合える関係を築いていくためには、心の奥底にある「寂しさ」や「不安」といった感情と向き合い、それを解放していく必要があります。

名古屋聖心こころセラピーでは、カウンセリングやコーチングはもちろんのこと、必要に応じて認知行動療法や潜在意識に働きかけるアプローチなどを取り入れ、「考え方や捉え方」に変化を促していきます。そして、相手の言動に振り回される生き方から抜け出し、ご自身の意志に基づいた生き方ができるように、「大切な自分という存在」を、ご自身の力で確立していくお手伝いをします。

相手に翻弄される不安定な人生から脱却し、自分自身の足でしっかりと立てる、安定した人生を目指して、一緒に歩んでいきましょう。

参考文献・参考資料

  • 矢幡洋(2004) 『依存性パーソナリティ障害入門』 日本評論社
  • 岡田尊司(2004) 『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』 PHP研究所
  • アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023) 『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院

この記事の著者

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

この記事の監修者

公認心理師・臨床心理士。教育支援センターやスクールカウンセラーとして不登校支援や保護者相談、教職員へのコンサルティングに従事。心療内科や児童発達外来にて心理検査・カウンセリングも担当。現在はオンラインカウンセリングや、心理学と仏教を融合させたセミナー活動などを行っている。

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