双極症カウンセリング

躁状態の時には、過剰な自信やエネルギーから、計画性のない行動を起こしがちです。例えば、無謀なプロジェクトを立ち上げたり、突然会社を辞めてしまったり、といった衝動的な決断をしてしまい、後になって大きな問題を引き起こすことがあります。
一方、抑うつ状態の時には、集中力が著しく低下し、これまで興味を持っていたことにも関心が持てなくなり、仕事や勉強が全く手につかなくなることが多いです。
その結果、学業成績や仕事のパフォーマンスが低下し、目標を達成することが難しくなります。

双極症の症状は、人間関係にも大きな影響を及ぼします。
躁状態の時には、自信過剰な態度や、衝動的な言動が原因で、周りの人々との間に衝突やすれ違いが増えることがあります。例えば、相手の気持ちを考えずに一方的に話し続けたり、無計画な行動で周りを振り回したりすることで、信頼関係を損なってしまうこともあります。
抑うつ状態の時には、強い自己嫌悪や無力感から、人との接触を避けるようになり、孤立感を深めてしまうことがあります。
このような状況が続くと、人間関係の問題がさらに深刻化し、孤独感が強まってしまう悪循環に陥りがちです。

双極症は、身体的な健康にも悪影響を及ぼします。
躁状態の時には、睡眠時間が極端に少なくても疲れを感じないため、無理を重ねて体調を崩してしまうことが少なくありません。
抑うつ状態の時には、エネルギー不足から運動を避けたり、身だしなみを整える気力もなくなったりして、体調が悪化することがあります。
また、食欲が極端に増えたり減ったりすることもあり、体重の変動や食生活の乱れが生じることもあります。

双極症の激しい感情の波は、ご本人の精神面に大きな負担を与えます。気分の変動によって、自己肯定感が大きく揺らいだり、深い無力感に苛まれたりすることがあります。
しかし、双極症は、決して本人の性格や意志の弱さの問題ではありません。脳の機能的な問題が関わっていると考えられており、適切な治療と周りのサポートを受けることで、症状をコントロールし、安定した生活を送ることは十分に可能です。

心理カウンセリングや医師による治療を受けることで、感情の波を穏やかにする方法や、ストレスにうまく対処する方法を学び、生活の質（QOL）を改善していくことができます。
双極症という状態を正しく理解し、周りのサポートを受け入れながら、ご自身の生活を調整していくこと。それが、回復への大きな第一歩となります。

双極症は、家族内に同じ障害を持つ人がいる場合に、発症リスクが高まることが分かっています。親や兄弟姉妹に双極症の方がいる場合、ご自身が発症する可能性は、そうでない場合に比べて高くなります。
しかし、遺伝だけが原因で発症するわけではありません。遺伝的な素因を持っていたとしても、後述するような環境要因や生物学的要因が重なることで、発症に至ると考えられています。

脳内の神経伝達物質（セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど）のバランスの乱れが、双極症の気分の変動に関係していると考えられています。これらの物質が過剰になったり、不足したりすることで、異常な気分の高揚（躁状態）や、気分の落ち込み（抑うつ状態）が引き起こされる、という仮説です。
また、脳の特定の部位（感情や衝動のコントロールに関わる部分など）の機能や構造に、何らかの異常がある可能性も指摘されています。

強いストレスや、人生における大きな生活の変化、過去のトラウマ体験などが、双極症の発症の引き金（トリガー）となることがあります。
例えば、仕事上の大きなプレッシャー、失業、人間関係のトラブル、大切な人との死別や離別といった出来事が、症状を引き起こすきっかけになることがあります。

体内のホルモンバランスの変動も、双極症の症状に影響を与えることがあります。
特に女性の場合、妊娠や出産後、あるいは月経周期といった生理的な変化が、気分の波を不安定にし、症状を悪化させる要因となることもあります。

双極症の原因を理解することは、ご自身の状態を客観的に把握し、早期発見や早期介入につなげるために重要です。専門的な支援を受けることで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。

双極症は、世界的に見て、成人の約1%程度が生涯で一度は発症するとされています。これは、決して珍しい病気ではないことを示しています。
性別による発症率には大きな差はないとされていますが、症状の現れ方には性差が見られることもあります。
発症年齢については、通常20代前半から30代初めに初めて症状が現れることが多いとされていますが、それ以外の年齢で発症することもあります。

近年、双極症に対する社会的な認識が高まり、早期に症状に気づき、適切な治療や支援を受けることの重要性が強調されています。
症状が比較的軽度な段階であっても、早期に介入することで、症状の悪化を防ぎ、長期的な症状の管理や、生活の質の向上につながることが期待されます。

メディアやインターネットの普及により、双極症に関する情報に触れる機会が増え、一般の人々が自身の症状や、身近な人の変化に気づくケースが増えています。
これにより、以前よりも多くの人が、名古屋聖心こころセラピーのような心理カウンセリング機関や、医療機関に相談し、改善に向けて積極的に取り組むケースが増加していると感じています。

これは大きな誤解です。双極症は、単なる気分の波ではなく、躁状態と抑うつ状態という、極端な状態が、長期間にわたって日常生活に深刻な影響を及ぼす、脳の機能に関わる病気です。躁状態では社会生活に支障が出るほどの過剰な活動や衝動性が見られ、抑うつ状態では生活意欲を失うほどの極度の無気力や絶望感に苛まれます。

これも誤った偏見です。躁状態の時には、確かに衝動性が高まったり、イライラしやすくなったりすることはありますが、それが必ずしも暴力に結びつくわけではありません。実際には、双極症を持つ人の多くは、適切な治療とサポートを受けることで、穏やかな日常生活を送ることができます。

双極症は、高血圧や糖尿病のように、慢性的な経過をたどることが多い病気であることは事実です。しかし、「完全に治らない」というわけではありません。適切な治療とセルフケアを継続することで、症状をコントロールし、安定した状態を維持することは十分に可能です。多くの人が、病気とうまく付き合いながら、充実した生活を送っています。カウンセリングなどを通して、一人ひとりに合った考え方や対処法を見つけることが、回復への鍵となります。

これもよくある誤解ですが、双極症は、本人の意志や気合だけで症状をコントロールできるものではありません。脳の機能的な問題が関わっていると考えられており、自己管理だけでは限界があります。症状が悪化する前に、早めに専門的な支援（医療やカウンセリング）を受けることが非常に重要です。

双極症を持つ人が、職場や学校で困難に直面することがあるのは事実です。しかし、適切な治療を受け、周りの理解とサポート、そして環境調整（例：業務量の調整、柔軟な勤務時間、休憩の確保など）があれば、十分に社会で活躍し、能力を発揮することができます。

双極症は、症状の現れ方や、気分の波のパターン、発症のタイミングなどが、人によって大きく異なります。躁状態が激しい人もいれば、抑うつ状態が長く続く人もいます。すべての人が同じ経過をたどるわけではないため、一人ひとりの状況に合わせた、個別化された支援が必要です。

まず、双極症という病気について、正しく理解を深めることが、最も重要なサポートの一つです。気分の波がどのように現れるのか、どんな時にサポートが必要なのか、どのような接し方が望ましいのか、といったことを学び、無理解や誤解に基づく言動を避けることが大切です。

双極症の方にとって、安定した、予測可能な日常生活を送ることが、気分の波を穏やかに保つ上で重要です。ご家族や友人は、ご本人が規則正しい生活を送れるように、さりげなくサポートすることが求められます。
例えば、一緒に決まった時間に寝起きしたり、規則正しく食事を摂るように促したり、家の中を落ち着ける空間に整えたり、過度なストレスがかからないように配慮したり、といったことが助けになります。

ご家族や友人は、ご本人の気分や行動の変化に、早期に気づくことができる大切な存在です。躁状態や抑うつ状態のサインを見逃さず、もし変化が見られたら、ご本人と相談の上で、早めに専門家（主治医やカウンセラー）に連絡を取ることが重要です。
例えば、躁状態の時には、過剰なエネルギーや衝動的な行動が見られることがあります。症状がひどくなる前に、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

ご本人が助けを求めている時や、精神的な支えを必要としているタイミングを、敏感に察知することも、ご家族や友人の重要な役割です。
抑うつ状態の時には、強い無力感や孤独感に苛まれていることがあります。そんな時には、ただそばにいて、話を聞いてあげるだけでも、大きな支えになります。
躁状態の時には、過剰なエネルギーが症状の一部として現れていることを理解し、無理に行動を制止しようとするのではなく、危険な行動につながらないように見守り、冷静に対応することが大切です。
どんな時も、無理に何かを強制するのではなく、優しく寄り添い、必要であれば治療を受けられる環境を整えることが大切です。

双極症を持つ方をサポートすることは、ご家族や友人にとっても、精神的に大きな負担がかかる場合があります。そのため、サポートする側が、ご自身の心身の健康を保つことも、同じくらい重要です。
一人で抱え込まず、他の家族や友人と協力したり、家族会などのサポートグループに参加したり、あるいはご自身がカウンセリングを受けたりすることで、ストレスを軽減し、より効果的に、そして持続的にサポートできるようになります。

双極症を持つ方が、ご自身の症状や、気分の波が起こるきっかけ（トリガー）を理解することは、症状を管理していく上で非常に重要です。
心理的な支援として、ご自身の気分の変動パターンや、ストレスや不安がどのように症状に影響するのかを、客観的に認識できるようサポートすることが大切です。自己理解が深まることで、症状の予兆を早期に察知し、悪化する前に対処法を取る準備ができます。

双極症の方は、感情のコントロールが難しいと感じることがあります。
心理的な支援の一環として、自分の感情を客観的に認識し、それを適切に調整していくスキルを身につけることが有効です。
それには、これまでの考え方の癖（認知の歪み）に気づき、それをより現実的でバランスの取れた考え方へと修正していく作業（認知行動療法など）が役立ちます。
また、リラクセーション法やマインドフルネスなどを日常生活に取り入れることで、感情の波を穏やかに保つ練習も有効です。

双極症の方が、孤立感を感じないように、家族や友人、主治医、カウンセラーなど、様々な立場の人々が連携し、ご本人を支えるシステム（サポートシステム）を構築することが大切です。
信頼できる、安心できるサポートネットワークを持つことは、心理的な健康を維持し、回復を促進する上で、非常に良い影響を与えます。
周りの人々が、どのようにサポートすれば良いのかを具体的に理解し、ご本人が一人で問題を抱え込むことを防ぐように努めます。

双極症の方は、病気の症状や、それによって生じる様々な困難から、自信を失いやすい傾向があります。
心理的な支援として、日常生活の中で達成可能な、小さな目標を設定し、それを一つひとつクリアしていく過程で、「自分にもできるんだ」という感覚（自己効力感）を高めていくことが重要です。
目標は、現実的で、達成可能なレベルのものであることが望ましく、小さな成功体験を積み重ねることで、失われた自信を取り戻す手助けとなります。