人間関係カウンセリング

人には大きく分けて二つのタイプがあると言えるかもしれません。
一つは、人間関係を通じてストレスを発散できる人。もう一つは、人間関係でかえってストレスを溜め込んでしまう人。

学校、職場、家族、ママ友…私たちの人生は、常に様々な人間関係と隣り合わせです。
もしあなたが人間関係に苦手意識を感じているなら、そこには必ず理由があるはずです。そして、その理由を探り、より楽に関わるための対策を講じていくことが、とても大切になります。

目次

人間関係:「自分らしく」いるために

心地よい人間関係の基準とは?

悩み 孤立 嫉妬 自己否定

職場、学校、家庭など、私たちはどの世代であっても、人間関係における対立や摩擦、壁にぶつかり、苦しむことがあります。
孤立感、疎外感、嫉妬…人間関係の悩みは、私たちが人間である以上、生きていく上で避けては通れない、普遍的なテーマと言えるでしょう。大小様々な形で、常に私たちのそばに存在します。

人間関係で悩みを抱えやすい方の多くは、日常的に関わる相手に対して、心の中に苦手意識を宿してしまいがちです。
その結果、顔を合わせるたびに精神的なストレスを感じ、心の疲労が蓄積していきます。そして、やがては身体にも不調が現れ、さらに苦しむことになりかねません。

私たちは、つい他人の心を推し量ろうとしてしまうものです。
「こんなことを言ったら、相手はどう思うだろうか?」と、自分に対する他者の評価や反応を必要以上に気にしてしまうことが、悩みの大きな原因となることがあります。
その結果、相手に合わせすぎる発言や行動をとってしまい、次第に「こんな自分が嫌いだ」という自己嫌悪や自己否定の気持ちを強めてしまうのです。

自分が自分のことを好きになれないと、「周りの人も、きっと私のことが嫌いに違いない」と思い込み、ますます人間関係に対して心を閉ざしてしまう…という悪循環に陥ることもあります。

自己否定の気持ちを抱え、心を閉ざしてしまった子どもたちは、不登校、非行、家庭内暴力といった形でSOSを発することがあります。大人であれば、出社拒否、退職、ニート、ひきこもり、家庭内暴力などの問題につながることも考えられます。

ですから、人間関係の悩みから抜け出すためには、これまでうまくいかなかったコミュニケーションのパターンや、対人関係に対する考え方を見直し、変えていくことが求められます。

そのための「考え方の土台の再構築」を、名古屋聖心こころセラピーの心理カウンセリングや、認知行動療法などの心理療法を通して、実現していくお手伝いができればと考えています。

職場の人間関係:ストレスが与える影響は甚大

人間関係に特に大きな問題がなく、比較的円滑で良好な職場環境であれば、程よい緊張感を保ちつつも、リラックスして仕事に取り組むことができます。
集中力も発揮しやすく、作業効率の向上や、仕事に対するモチベーションの維持にもつながるでしょう。

しかし、職場の人間関係に問題を感じている場合、特定の苦手な上司や同僚に対して、常に過剰なまでに神経を張り巡らせてしまうことになります。
その結果、当然ながら集中力を欠き、ミスを連発しやすくなり、やがて自己嫌悪感が高まり、仕事そのものに対する自信さえも失ってしまう…という悪循環に陥りやすくなります。

このように、仕事上の人間関係は、私たちの人生そのものにも大きな影響を与える可能性があります。
認知行動療法などでは、「相手を変えるより、自分の認知(ものの見方)を柔軟にする」というアプローチが有効とされており、聖心こころセラピーでも積極的に取り入れています

自己嫌悪 緊張 ストレス

子どもたちも、人間関係で悩んでいます

大人が家庭の外の社会で様々な人間関係に直面するように、子どもたちにも、学校や塾といった小さな社会の中に、複雑な人間関係が存在します。
大人と同じように、クラスや部活動、塾などで、友だちとの関係に悩み、苦しんでいる子どもたちは少なくありません。大人の世界も大変ですが、子どもたちの世界も、決して楽なことばかりではないのです。

子どもたちが、親の顔色をうかがうことなく、「困った」「つらい」と感じた時に、いつでも安心して話せるような家庭環境を日頃から作っておくことが、とても大切ですね。

人間関係には、少しの「いい加減さ」も必要?

生真面目で、何事にも実直に取り組む性格の方は、他人の少しルーズな部分や、自分とは違う価値観を許せない、と感じてしまうことがあるかもしれません。
しかし、時には「まあ、色々な人がいるよね」「完璧じゃなくてもいいか」くらいの、少し「いい加減」な気持ちで物事を捉えられるようになると、ご自身の気持ちが少し楽になる場合があります。

「自分はこうだから、人もこうあるべきだ」という考え方は、周りに対してイライラしたり、腹を立てたり、結局はご自身が疲れてしまうことが多いものです。
夫婦関係や仕事関係においても、「どうしてこんな簡単なこともできないの?」と感じることがあっても、相手を無理に変えようとすることはできません。やはり、最終的にはご自身が辛くなってしまうでしょう。

それよりも、自分の考え方や相手への接し方を変えることで、意外にも周りの状況や関係性が変わっていく、ということもあります。
周りの人とは、「つかず離れず、適度な距離感」を持って付き合う、というスタンスで良いのではないでしょうか。

誰とでも深い親密な関係を築くのは難しいかもしれません。しかし、あなたの仕事ぶりや人柄をきちんと見て、評価してくれる人は必ず現れます。そんな相性の良さそうな人と、まずは軽く楽しめるくらいの友人関係を築いていく、というのも良い付き合い方だと思います。

自分に無理のない人間関係を築くために

友人関係を築く上で大切なのは、自分に無理のない範囲でお付き合いをするということです。
ありのままの自分を出しても、受け入れてくれる、一緒にいて心地よい相手を選ぶことで、あなた自身もリラックスして過ごすことができます。

恋人関係などでも、相手に合わせるばかりではなく、自分の好きなことや、やりたいことにも付き合ってくれるような、対等な関係を築ける相手を選ぶことが大切です。
むしろ、あなたが自分の好きなことに相手を巻き込めるような、そんな関係性の方が、より居心地が良いかもしれませんね。

相手に合わせてばかりいると、自分が疲れてしまうことはありませんか?
もちろん、相手に合わせることも時には必要ですが、最も大切なのは、あなたがあなたらしくいられる友人関係を築くことです。

気の合う仲間と一緒に過ごす時間は、とても楽しく、有意義なものになるでしょう。
自分の興味のあることや、大切にしている価値観などを、安心して話せる相手ができるように、あなた自身の考え方やコミュニケーションの仕方を変えていくことも必要になるかもしれません。
合わない相手と無理に付き合い続けると、だんだんと自分のペースが乱され、しまいには自分自身のことが嫌になってしまう場合もあります。

あなたが落ち込んでいる時には励ましてくれたり、前向きなアドバイスをくれたりするような、心から信頼できる友人を作ることが、あなたの人生を豊かにしてくれるはずです。

人間関係の距離感:深入りしすぎず、ほど良く

人間関係を築いていく上では、「この人とは、どのくらいの距離感で付き合っていくのが心地よいか」という、自分なりの目安を持つことが大切になってきます。
社会に出れば、様々なタイプの人と関わる機会がありますが、すべての人と深く親密になる必要はありません。自分がどの程度、その人と親しくなりたいかという視点も重要です。

例えば、会社の同僚やママ友との関係などは、家族との関係に比べれば、本来はそこまで深い繋がりを求めるものではないかもしれません。
もし、会社での人間関係やママ友関係の悩みが、あなたの家庭生活にまで悪影響を及ぼすほど深刻になっているのであれば、一度立ち止まって考える必要があります。「家族をないがしろにしてまで、維持しなければならない関係なのだろうか?」と自問自答してみることが大切です。

会社の同僚やママ友は、多くの場合、仕事や子育てといった共通の目的のために、一時的に一緒にいる人たちです。ですから、本来の意味での「友人」とは、少し性質が異なります。もちろん、話が合ったり、助け合ったりすることもあるでしょうが、必ずしも深く付き合う必要はないのかもしれません。

その距離感をうまく掴めないと、つらい思いをすることになります。ですから、「この人とは、どのくらいの付き合い方が自分にとって適切か」ということを、自分の中で意識的に判断していく必要があるでしょう。

「今、ここ」に集中することの効果

会社の仕事やママ友との関係なども、まずは自分の気持ちを大切にすることが基本です。
仕事の同僚やママ友との関係は、「広く浅く」が心地よい関係性である場合も多いので、「人は人、自分は自分」という割り切った価値観で関わってみるのも良いでしょう。時には、少し無関心なくらいが、ちょうど良い場合もあります。

近所付き合いも同様です。近くに住んでいるので、挨拶程度の関わりは必要かもしれませんが、それ以上に深く関わる必要はないかもしれません。
自分にとってプラスになるような、心地よい人間関係を大切にし、そうでない関係は、無理に維持しようとせず、整理していくという考え方も有効です。

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「友達が欲しい」「仲間外れにされたくない」と思うあまり、結局は自分に無理をして、本当は気の合わない人と付き合っていませんか?
そのような関係は、一時的には孤独感を紛らわせるかもしれませんが、長期的にはつらい思いをすることが多く、「自分って、一体何なんだろう?」と、かえって自己肯定感を下げてしまうことにもなりかねません。

「今ここに集中する」という姿勢は、マインドフルネスにも通じる考え方で、不安や評価へのとらわれから距離を取る手助けとなります。職場は仕事をする場所であり、ママ友関係は子どもたちが健やかに過ごせるための情報交換や協力の場である、というのが基本的な目的です。ですから、その中で完全に自分の気持ちと一致する人を見つけるのは、少し難しいかもしれませんし、そもそもそこまで求める必要があるのでしょうか?
そんな時、一番の良き理解者となってくれるのは、案外、配偶者や子ども、あるいは昔からの友人など、身近な存在である場合も多いものです。

その点をきちんと理解し、大切にすべき関係を見極めて毎日を過ごすことができれば、あなたの人生はより楽しく、有意義なものになっていくでしょう。

人間関係は、焦らず、少しずつ慣れていくもの

「人間関係が苦手だ…」と、その悩みばかりに目を向けてしまうのではなく、まずは目の前にある「やるべきこと」に集中してみるのも良い方法です。
職場であれば、まずは仕事に一生懸命取り組む。ママ友関係であれば、子どものことにしっかりと意識を向ける。学校であれば、勉強や部活動に打ち込む。
そうした日々の積み重ねをしっかり行うことも、実は人間関係を円滑にする上で大切な要素なのです。

何かに真剣に取り組む姿を通して、自然と会話が生まれたり、共感してくれたり、一緒に頑張れる仲間ができたりすることもあります。

誰かに何かを言われたことばかりを気にするのではなく、今、自分の目の前にある「やるべきこと」に意識を集中させる。そうすることで、あなたの姿勢に共感する人や、「自分はこう思うんだけど…」と意見を交換できる人が、自然と周りに現れてくるかもしれません。

夫婦関係においても、相手の考え方を知ろうと努めたり、自分の考え方を正直に伝えたりすることで、関係性がより深まっていくことがあります。
どの人間関係を大切にしたいのか、自分の中で優先順順位をつけ、自分の時間も大切にすることを忘れないようにしましょう。

時には、自分から話しかける勇気も大切

学校などで、自分から話しかけるのが苦手で、ただじっと、誰かが話しかけてくれるのを待っている…という消極的な方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、待っているだけでは、なかなか関係性は広がりません。

話してみなければ分からないこともたくさんあります。話してみて、やっぱり合わないな、と感じることもあるかもしれませんが、まずは接点を持ってみることが大切です。コミュニケーションを取ることで、新たな発見があったり、思わぬ共通点が見つかったりすることもあります。
いじめられている、といった特殊な状況でなければ、少し勇気を出して、自分から話しかけてみる、という行動も試してみてはいかがでしょうか。

「この人なら話しやすそうだな」と思う人に、まずは挨拶からでも良いので、声をかけてみましょう。
友人関係ができてくると、「自分の、ちょっとダメだな…」と思っていた部分も、意外と相手は受け入れてくれている、ということに気づくこともあります。「ああ、あの子は私のことを、ちゃんと分かってくれていたんだな」と感じられる瞬間は、とても嬉しいものです。

友人の数がたとえ少なくても、あなたのことを理解し、受け入れてくれる人が一人でもいるということは、あなたの毎日を大きく変える力になります。
大人になってからでも、そうした心から信頼できる関係を築けた人は、人生の大きな支えとなります。人との距離を縮めるためには、時に自分から声をかける勇気も必要です。ただし、人前で話すことに強い不安を感じるなど、社交不安がある場合には、段階的なアプローチが効果的です。

人間関係の極意は「ほど良い距離感」

適度な距離感 違う存在 

親であれ、友人であれ、配偶者や子どもであっても、相手との間にある程度の適切な距離感を持って付き合うことは、健全な関係を保つ上で、とても大切であり、必要なことです。

相手も自分とは違う一人の人間ですから、自分のことを100%完璧に分かってくれる人というのは、残念ながらほとんどいないでしょう。
色々な価値観の違いやすれ違いがあったとしても、それでも尚、友好的に関わってくれる存在がいるのであれば、そのことを「有り難い」と感じられる時が、きっと来るのではないでしょうか。

家族の個性が強すぎて、どうしても苦手だと感じる場合もあるかもしれません。そんな時でも、「自分は自分、相手は相手」と割り切り、できるだけ上手く付き合っていく方法を探せると良いでしょう。
そのためには、やはり、ご自身の考え方や捉え方を少し変えてみる、というアプローチが有効になるかもしれません。

名古屋聖心こころセラピーでは、そのような人間関係の悩みに対しても、あなたがより良い人間関係を築き、維持していくための具体的なアドバイスや、考え方の改善を積極的に行っていきます。

ママ友・お母さん同士の人間関係の悩み

お子さんが通う学校や保育園などでの、お母さん同士の付き合いに関する悩みのご相談も、以前に比べて非常に増えてきています。
「仲間はずれにされたくない…」
「どうやって付き合っていけばいいか分からない…」
「何を話したらいいのか分からない…」

本来、お母さん方はお子さんのサポート役であり、お母さん同士の付き合いは、もっとサラッとした、軽い関係であっても良いはずなのですが、ご本人にとっては、なかなかそう割り切れず、深刻な問題となってしまうことが多いようです。

母親同士での良好な人間関係を築くことにこだわりすぎ、無理をして周りに合わせてしまいがちになり、自分の意見や考えを素直に表現できず、周りとの間に壁を感じて、自然な会話に溶け込めずに悩んでいらっしゃる方は、意外と多いのです。

名古屋聖心こころセラピーの心理カウンセリングや心理療法では、あなたが無理なく、自然体でいられる「自分」を再発見し、どんな人間関係の中であっても、あなたらしく、生き生きと過ごすことができるような考え方に切り替えていくためのお手伝いをさせていただきます。

参考文献・参考資料

  • 坂本安・高橋靖恵(2009) 友人関係における心理的距離のズレと疎外感との関連 パーソナリティ研究 17巻 3号
  • 小山望・早坂三郎(監修)(2017)『人間関係ハンドブック』 福村出版
  • 吉川晴美ほか(著)(2017)『人間関係の理解と心理臨床:家庭・園・学校・施設・職場の問題解決のために』 慶應義塾大学出版会

この記事の著者

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

この記事の監修者

公認心理師・臨床心理士。教育支援センターやスクールカウンセラーとして不登校支援や保護者相談、教職員へのコンサルティングに従事。心療内科や児童発達外来にて心理検査・カウンセリングも担当。現在はオンラインカウンセリングや、心理学と仏教を融合させたセミナー活動などを行っている。

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