適応障害カウンセリング

適応障害(適応反応症)とは、社会生活や家庭生活の中で生じる特定のストレスが原因で、心や体に不調が現れる状態です。周りの人にとっては「ごく普通の出来事」や「よくある変化」であっても、ご本人にとっては耐え難いほどの苦痛と感じられます。
その結果、うつ状態になったり、ひきこもりがちになったりすることも少なくありません。背景には、幼少期の親子関係などが影響している場合もあります。
※最近では、適応障害は「適応反応症」とも呼ばれています。
適応障害に気づきにくいのはなぜ?
適応障害(適応反応症)の大きな特徴として、そのストレスの原因(例:職場の異動、人間関係の変化など)が取り除かれたり、軽減されたりすると、心身の不調もそれに伴って改善するケースがほとんどです。
引越しによる生活環境の変化、職場の異動や昇進、進学、結婚など、新しい環境や状況がストレスとなり、それにうまく対応しきれずに、心や体に不調をきたしてしまうのです。
しかし、ご本人自身は「どうしてこんなに体調が悪いのかな?」「なぜこんなに気分が落ち込むのだろう?」と、その原因が特定のストレスにあることに気づいていない方も多いのが、適応障害の難しいところです。
適応障害は「ストレス関連障害」の一つです
適応障害(適応反応症)とは、進学、独立、結婚、就職、失業、病気など、人生における様々な環境の変化が起きた時に、その新しい状況にうまく馴染むことができず、心や体に様々な症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたしてしまう状態を言います。
適応障害は、外部からのストレスが原因となって症状が現れるため、「ストレス関連障害群」の一つに分類されます。
同じストレス関連障害には「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」や「急性ストレス障害」などがありますが、これらが戦争体験や災害、事故、暴力被害といった非常に強い衝撃的な出来事がきっかけで起こるのに対し、適応障害は、必ずしもそのような強烈な体験だけが原因となるわけではありません。

例えば、家族関係の悩みや、職場でのトラブル、友人との些細なすれ違いなど、周りの人から見れば「大したことではない」と感じられるような出来事によるストレスが、少しずつ積み重なって発症する可能性も少なくないのです。
適応障害によって起こる様々な症状
人はストレスを感じると、そこから生じる不安やイライラ感などを自分の中でコントロールしようとして、何らかの反応(ストレス反応)を起こします。これは、人間としてごく正常な反応であり、適度であれば病気でも異常でもありません。
しかし、適応障害に陥ると、このストレス反応が過剰に、そしてコントロールできないほど強く出てしまい、日常生活を送る上で様々な支障をきたすようになります。
適応障害の症状としては、主に以下のようなものが挙げられます。
精神的な症状
- 抑うつ気分
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気分が落ち込む、涙もろくなる、希望が持てない
- 不安感:漠然とした不安、心配事が頭から離れない、神経過敏になる
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漠然とした不安、心配事が頭から離れない、神経過敏になる
- 焦燥感・怒り
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イライラする、怒りっぽくなる、落ち着きがなくなる
- 意欲の低下
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何事にもやる気が出ない、興味や関心がなくなる
行動面での症状
- 仕事や勉強に集中できない、持続しない
- 普段通りの業績や成績を出せない
- 電話やメール、訪問などに返答せず、人との接触を避けるようになる(ひきこもり傾向)
- 問題飲酒、虚言、無断欠勤・欠席、万引きなど、衝動的・反社会的な行動
- 感情のコントロールが難しくなり、急に叫び出したくなったり、泣き出したりする
身体的な症状
- 睡眠障害(寝付けない、途中で目が覚める、寝すぎる)
- 食欲不振または過食
- 動悸、息苦しさ
- めまい、ふらつき
- 頭痛、肩こり
- 全身の倦怠感、疲労感
- 腹痛、下痢、便秘
- 吐き気
- 体の震え、痙攣
適応障害とうつ病の違いについて:適応障害は「特定のストレスに適応できないことで症状が生じる」のに対し、うつ病は「原因が特定できない場合も含め、気分の落ち込みが持続する」という違いがあります。適応障害の場合、ストレスの原因から離れることで症状が改善するケースが多いですが、うつ病の場合は環境を変えても症状が続くことが一般的です。ただし、適応障害が長引くことで、うつ病に移行する場合もあります。
適応障害の診断基準について
一般的に、以下の項目に当てはまる場合、適応障害の可能性が高いと考えられます。(※診断は必ず医師が行う必要があります)
- はっきりと特定できるストレス(単一または複数、継続的または反復的)が発症の原因であり、そのストレスが始まってからおよそ1か月以内に、気分や行動面での症状が現れている。
- その症状によって、原因となったストレスに不釣り合いなほどの強い苦痛を感じており、社会生活(仕事、学業、家庭生活など)において著しい障害が生じている。
- その症状が、死別反応(大切な人との死別による自然な悲嘆反応)や、他の精神疾患(うつ病、不安症、PTSDなど)の基準を満たさない。
- 原因となるストレス(またはその影響)がなくなった場合、症状は6か月以上は続かない。(ただし、ストレスが持続する場合は、症状も慢性化することがあります)
補足:ストレスが始まってから6か月以内に症状が治まる場合は「急性適応障害」、6か月以上症状が続く場合は「慢性適応障害」と呼ばれることがあります。
相談できる人やサポートしてくれる人が身近にいなかったり、転勤や転校などによって孤立しやすい状況にあったりすると、適応障害に陥りやすい傾向が高まると言われています。
適応障害という状態は、診断が難しい上に、周りの人からの理解も得られにくいという側面があります。
適応障害によって現れた症状であっても、例えば身体の不調だけを訴えて内科などを受診した場合、根本原因である適応障害だとは診断されにくいため、ご本人も自分が適応障害であることになかなか気づけないことがあります。

その結果、ご本人は「自分は甘えているだけなんじゃないか」「意志が弱いからダメなんだ」といった誤った認識によって、自分自身を責めてしまいます。
そうして、さらに憂うつな気分になったり、苦痛に苛まれたりする、という悪循環に陥ってしまうのです。
適応障害は、決して本人の弱さや甘えが原因ではありません。
ご本人が置かれている状況やストレスが、これまでの経験とは異なり、心の中でうまく整理したり、対処したりできずに、戸惑い、苦しんでいる状態なのです。
適応障害には、どのような治療やサポートが有効か
適応障害の改善のためには、主に「原因となっているストレスを軽減すること」と、「ストレスに対する適応能力を高めること」の二つのアプローチが中心となります。
1.環境調整(ストレスの軽減)
診断基準にもある通り、適応障害は原因となるストレスから離れたり、ストレスそのものがなくなったりすれば、症状が和らぐ、あるいは改善されることが期待できます。
例えば、仕事が原因であれば、一時的に休職したり、負担の少ない部署へ異動したりする。学校が原因であれば、休学したり、出席する授業を調整したりする、といった方法が考えられます。
少しの間、原因となっている環境から物理的に距離を置くことも、有効な手段の一つです。
しかし、現実的には、そう簡単に環境を変えられない場合も多いですよね。
ですから、名古屋聖心こころセラピーでは、今ある現実からただ逃避するのではなく、その中でどう適応していくか、という視点での改善をサポートすることを重視しています。
学校や職場以外の原因、例えば、恋人との関係に問題があれば、一時的に距離を置いたり、関係性を見直したりする。家族関係に問題があれば、その問題を家族全体で認識し、改善に取り組む、といったことも、適応障害への対応として考えられます。
ただし、ストレスを軽減しようとご自身だけで模索していると、かえって社会生活に支障が出てしまったり、あるいは、別の新たなストレスに直面した時に、症状が悪化してしまったりする可能性もあります。
2.精神療法(心理療法・カウンセリング)
そこで重要になるのが、精神療法(心理療法・カウンセリング)です。
セラピーでは、「なぜ自分は、この特定のストレス環境に適応できずにいるのだろうか?」その根本的な原因を、カウンセラーと一緒に探っていきます。
そして、認知行動療法などの手法を用いて、ご本人の物事の捉え方や考え方(認知)を、ストレスに対してより柔軟に対応できるような、しなやかなものへと改めていくお手伝いをします。
3.薬物療法(補助的な手段として)
また、不安や不眠といった適応障害による症状が非常につらい場合には、心療内科や精神科の医師の診断のもと、抗不安薬や抗うつ薬などを一時的に使用することも、選択肢の一つです。
ただし、これはあくまで症状を和らげるための対症療法であり、根本的な解決にはなりません。
しかし、薬物療法を一時的に、補助的に用いることで、つらい症状を軽減し、ご本人の負担をできる限り少なくした状態で、物事の捉え方や考え方といった根本的な部分を見直す「根本療法」(カウンセリングなど)に取り組む、という併用も有効な方法と考えられます。
適応障害が起こりやすい状況とは?
適応障害は、入学、入社、転職、転校、結婚、引越しなど、新しい環境に身を置いた時に起こりやすいと言われています。
これまでとは違う環境では、新たなストレス要因が増えたり、周りの人や新しいルールに合わせていかなければならなかったりと、心身への負担が大きくなりがちです。
まずは、自分が何に対してストレスを感じているのかを把握し、それに対してどう対処していくかを考えることが大切です。しかし、自分では何がストレスになっているのか、はっきりと自覚できていない場合もあります。
そして、気づかないうちに抑うつ的な気分に苛まれ、心が疲弊し、つらくなってしまう…というケースも少なくありません。
また、家庭内におけるストレス(例:夫婦間の不和、親子関係の問題、介護疲れなど)が原因となる場合も多くあります。
喧嘩が絶えなかったり、家族仲が悪かったりするなどの慢性的なストレスも、適応障害の大きな引き金となり得るのです。
これまで出来ていたことが、難しくなる… それが適応障害
新しい生活を始める際には、誰でも不安や心配を感じるものです。しかし、その不安や心配が積み重なり、現実の生活にうまく適応できなくなってしまうことがあります。
イライラしやすくなったり、人との交流を避けるようになったり…「なんだか、いつもの自分じゃないみたいだ」と、ご自身でも変化に戸惑うことがあるかもしれません。
これまで普通にできていたはずの学業や仕事などが、スムーズに進められなくなり、それがさらに気持ちを落ち込ませる原因にもなります。
適応障害になった場合、可能であれば、一旦そのストレスの原因から離れることで、症状が回復していくケースも多く見られます。無理は禁物です。
もし仕事が原因なのであれば、会社側と相談し、一時的に仕事量を減らしてもらったり、休暇を取ったりして、心身を休ませることも必要です。
学校が原因であれば、状況を見ながら少しずつ登校するようにし、無理に全ての授業に出席しなくても良いので、まずは教室の雰囲気に慣れていくことから始めましょう。
転居先などで、周りに知らない人ばかりで緊張してしまう、という場合もあるかもしれません。そんな時も、焦らず、少しずつ外に出て散歩するなどして、新しい街の雰囲気に慣れていくように努めましょう。
しかし、環境調整だけで根本的な解決に至らない場合も多くあります。なぜなら、適応障害の根本原因の多くは、「物事の捉え方」や「考え方の癖」にあるからです。
ですから、ただ環境から離れるだけでなく、カウンセリングなどを通して、ご自身の思考パターンを見直し、ストレスに対する耐性を高めていくことが、再発を防ぎ、より本質的な解決につながります。
名古屋聖心こころセラピーでは、カウンセリングを通して、あなたがこれまでとは異なる、より柔軟でしなやかな思考を身につけ、多少のプレッシャーや環境の変化にも、うまく対応できるようなレジリエンス(困難やストレスに対して柔軟に対応し回復する力)を身につけるお手伝いをします。
理由が分からず、「適応障害」と気づけない場合も
心や体に不調を感じていても、「まさか自分が適応障害だなんて…」と、その状況に気づけないまま、つらい日々を過ごしている方もいらっしゃいます。
また、身近に相談できる相手がおらず、一人で抱え込んでしまっている人も少なくありません。
そういった場合には、ぜひ一度、カウンセリングにお越しになり、ご自身が抱えている不安やストレスの正体を確認し、具体的な対策を立て、回復に向かって行動を起こしていくことが大切です。
適応障害の場合は、そのストレスとなる原因を具体的に特定し、それに対する適切な対処法を見つけることで、少しずつ良くなっていくケースが多く見られます。
また、カウンセリングを通して考え方や行動パターンの見直し、より自分らしい生き方へ近づいていくことで、ストレスそのものに対する耐性(レジリエンス)を高めていくことも可能です。
一人で悩んでいる時間は、本当につらいものです。もし、ご自身の心身に何らかの変化を感じたら、まずは信頼できる身近な人に相談してみることから始めてみましょう。
会社であれば上司や同僚、学校であれば先生やスクールカウンセラー、あるいはご家族など、誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
そして、より専門的なサポートが必要だと感じたら、適応障害に詳しいカウンセラーと共に、改善に向けて具体的な行動を起こしていくことが、非常に有効な手段となります。
適応障害を克服するために:ストレスへの耐性を高める
適応障害の場合、原因となっているストレスから自分自身を引き離すことが、症状改善のためには大切です。しかし、学校や職場がストレスの原因である場合、現実的には、そう簡単に「避ける」ことが難しい場合も多いですよね。
ご自身でも「何かつらいな」と感じていながらも、その感覚をうまく言葉にできなかったり、周りに理解してもらえなかったりして、つらい状況を我慢しながら、なんとかやり過ごしている、という方も多いのではないでしょうか。
特に、仕事や学業は、私たちの生活の基盤となる大切なものですから、「行かなくていい」と一概に言えるものではありません。
そのような場合には、環境を変えることだけを考えるのではなく、ご自身の内面にある、ネガティブな認識や考え方や行動パターンを見直していく、、というアプローチが必要になります。

ストレスを感じている原因があるのであれば、そのストレスを少しでも和らげる工夫をしたり、あるいは、そのストレスに対して、もっとうまく対処できるようなスキルを身につけたりすることが必要です。
大きなストレスはもちろん負担ですが、適度なストレスは、むしろ日々の生活に張りを与え、成長を促すために必要なものでもあります。
大切なのは、自分にとってのストレスと、どのように向き合い、付き合っていくか、その方法を見つけていくことです。
考え方や行動パターンの見直しが、適応障害の予防・改善につながることも
- 何か失敗することを、極端に恐れてしまう
- 何事も、完璧にこなさなければ気が済まない
もし、あなたがこのような完璧主義的な傾向や、失敗を過度に恐れる性格を持っている場合、それがストレスへの適応を難しくしている可能性があります。
聖心こころセラピーでは、そうした考え方や性格の偏りを、より柔軟でバランスの取れたものへと変えていくためのカウンセリングも行っています。
何事も自分の思い通りに、スムーズにこなそうとすると、うまくいかなかった時に大きなダメージを受け、深く傷ついてしまうことがあります。
また、環境が変われば、人間関係なども一から構築し直す必要があり、慣れるまでには時間もエネルギーもかかります。
普通であれば、環境が変わることへのストレスは、時間とともに次第に薄れていくものですが、ご自身の中にどうしても譲れないこだわりや、気になる点があると、新しい環境に適応しきれない、という場合もあります。
あるいは、やる気が空回りしてしまい、かえってうまくいかなくなる、というケースもあるかもしれません。
たとえ自分の望まない環境に置かれたとしても、そこで何とかやっていかなければならない、という場面もありますよね。そんな時にも、しなやかに状況に適応していく力を身につけることが大切です。
適応障害の背景には、その人自身の考え方やストレス対処スタイルが関係していることもあります。名古屋聖心こころセラピーのカウンセリングでは、より柔軟に状況に対応できるよう、考え方の癖に気づき、対処の幅を広げるための支援を行います。
焦らず、少しずつ環境に慣れていくことも大切
適応障害は、その環境に適応しきれないことから、心身に様々な影響が出てくる状態です。ですから、その環境での過ごし方を少し変えてみるだけでも、状況が改善することがあります。
もし、環境に適応しにくいと感じるのであれば、
- 誰か信頼できる相談相手を見つける
- 環境に適応しやすいように、自分の考え方を少し変えてみる
といったことが必要になるでしょう。
気分が落ち込み、暗い気持ちになりがちなのであれば、「よし、今日はここまでやってみよう」「少し気分転換にこんなことをしてみよう」というように、意識的に自分の気持ちを切り替える工夫をしてみるのも良いかもしれません。
ゆっくりと休養することも大切ですが、学校や会社は日々の生活の糧を得るためにも必要な場所ですから、完全に離れてしまうことが難しい場合も多いでしょう。
また、結婚などで新しく家族ができた場合にも、これまでの生活パターンとの違いや、相手との価値観のズレなどから、これまでとは違う種類のストレスを感じることがあります。
だからといって、すぐに別れてしまうわけにもいきませんよね。少しずつ時間をかけて、新しい生活に慣れていき、お互いに許容できることと、どうしても譲れないことについて、しっかりと話し合っていくことが必要になります。
適応障害の原因:何があなたにとってストレスなのか?
適応障害の場合、様々な種類のストレスが複雑に絡み合っており、「何となく体調が優れない」「気分が晴れない」といった漠然とした不調として現れることも多くあります。
そんな時には、まず「自分は、具体的にどのようなことに、どの程度強くストレスを感じているのか?」そして、「それに対して、どのような行動をとっていけば良いのか?」ということを、客観的に探求し、明らかにすることが大切になってきます。
無理な負荷がかかっているのであれば、休むことも必要です。しかし、できることなら、今の生活を大きく変えることなく、ストレスへの対処法を身につけ、ストレスそのものに対する耐性を高めていきたいですよね。
聖心こころセラピーのカウンセリングでは、そのための積極的なコーチングも行っています。
学校や仕事がストレスの原因である場合、それが人間関係によるものなのか、仕事や学業の内容そのものによるものなのか、あるいは量や環境によるものなのか、自分でしっかりと原因を見極める必要があるでしょう。
多少つらいことが重なったとしても、カウンセリングやコーチングを継続していくことで、ストレスに耐えうる精神的な力を身につけていくことは可能です。
また、時には、自分から積極的に行動を起こしたり、周りの環境に馴染み、溶け込んでいく努力が必要になる場合もあります。
ただ逃げるのではなく、新しい考え方やスキルを身につけ、二度と同じ問題で立ち止まらないように、適応障害の問題解決に向けて、一緒に対応していきましょう。
問題を一つひとつ整理し、解決していく
適応障害になっている場合、家庭、仕事、学校など、生活の様々な場面で、何らかのフラストレーションを抱えていることが少なくありません。
そのような場合には、一度にすべてを解決しようとせず、できるところから、取り組みやすいところから、一つひとつ変えていくのが良いでしょう。
例えば、学校が辛いのであれば、まずは親御さんにその気持ちを話してみる。親御さんも、お子さんの様子を注意深く観察し、「どんなことにストレスを感じているのか」を把握できれば、より適切な対処がしやすくなるでしょう。
頭ごなしに「学校に行きなさい!」と言うのも良くありませんし、「行かなくていいよ」と安易に言うのも、根本的な解決にはなりません。できれば、少しずつ学校に通えるように、焦らず、段階的に慣れていくことを目指しましょう。
学校に友達がいなくて辛い、という場合には、自分から誰かに何かを尋ねてみるなど、小さなきっかけから始めてみましょう。少しずつクラスの雰囲気に馴染む努力をし、自ら行動を起こしてみることも、状況を変えるきっかけになるかもしれません。
自分がどんなことにストレスを感じているのかを、まずは自分自身が認識することが、対策を立てるための第一歩です。カウンセリングなどを利用して、自分の心を整理していくことも、非常に有効な方法です。
休み休み、少しずつ改善していくペースで
特定の環境に適応できないことが、適応障害の原因となります。そのため、どうしてもその対象から逃げ出したくなったり、避けたくなったりする気持ちが強くなるのは自然なことです。
しかし、完全に避けてしまうのではなく、少しずつ関わりを持ちながら、ストレスに対する耐性を徐々に高めていくことも、長期的には必要になってきます。
自分の中で、どうしても気になる点や、引っかかることがあるのであれば、「なぜ自分は、そのように考えてしまうのだろう?」と、その背景にある思い込みや価値観を整理していくのも良いでしょう。
何かに夢中になっている時には気づかなかったけれど、ふと時間に余裕ができた時に、「これからどうすれば良いのだろう…」と、途方に暮れてしまう、というケースもあります。
環境が変わった時などは、特にストレスを感じやすい時期です。そんな時こそ、今一度、自分の中にある思いや感情をしっかりと認識し、カウンセリングなどを通して、「これからどうしていくのが、自分にとって一番良いのか」を、じっくりと考えていく良い機会と捉えましょう。
適応障害は、短期間で克服できるケースも多い
うつ病のように、特に理由がなくても気分が落ち込んだり、気が滅入ったりする状態が長く続くのとは異なり、適応障害の場合には、原因となっているストレスが緩和されたり、それに対する捉え方が変わったりすると、比較的早く良くなるケースも多くあります。
最初は、つらくてその場から逃げ出したい、と感じるかもしれません。しかし、カウンセリングなどを通して、自分の考え方の偏りや歪みが原因であることに気づき、より柔軟な考え方を身につけていくことで、ストレスが軽減され、適応障害の状態から抜け出していくことは可能です。
これまで興味がなかったことにも、少し勇気を出して挑戦してみる。周りの人に働きかけて、自分のことをもっと知ってもらう努力をしてみる。
一朝一夕には難しいかもしれませんが、自分の殻に閉じこもらずに、少しずつ外の世界と関わっていくことで、症状が和らいでくることも多いのです。
様々なことにストレスを感じていたとしても、それを完全に排除してしまうのは、社会生活を送る上では現実的ではありません。適度なストレスとはうまく付き合いながらも、毎日を楽しく、有意義に過ごせるようになることが、私たちの目指すゴールです。
周りの人に、あなたの状況を理解してもらうことも大切
適応障害に陥ると、「自分が弱いからだ」「甘えているだけだ」「怠けているだけなんじゃないか」などと、自分を責めてしまいがちになります。
しかし、問題は決してそんなことではありません。ストレスに対するあなたの反応が、一時的に過敏になっている状態なのです。その過敏さを和らげ、ストレスに対する適切な対処法を身につけていけば、ストレスにもっと強く、しなやかになっていきます。
時には、少し無責任なくらい、「いい加減」になることも、自分を守るためには必要かもしれません。その「さじ加減」を身につけるためにも、ぜひ一度、当セラピーにご相談ください。
そして、あなたがどんなことに悩み、苦しんでいるのかということを、信頼できる周りの人に知ってもらうことも、状況を改善するためには大切なことです。親御さんであったり、会社の上司であったり、学校の先生であったり…。あなたの状況を理解してもらうことで、必要な配慮やサポートを得られやすくなるかもしれません。
まずは、「自分は今、つらい状況にあるんだ」ということを、自分自身がきちんと認識すること。そして、「そのつらさは、一体どこから来ているのだろう?」と、その原因を探っていくことが必要です。
漠然とした不安も、その正体を見極め、原因が分かれば、具体的な対策を立てることが可能になります。原因を取り除くことができれば一番良いですが、それが難しい場合でも、原因を知ることで、無理をしなくなり、「この程度なら大丈夫」という自分なりの対処法が見えてくることにも繋がります。

体調の変化にも注意し、適切なサポートを
適応障害になると、不眠や不安感など、心だけでなく体にも様々な不調が現れることが少なくありません。
もし、症状がひどく、日常生活に大きな支障が出ている場合には、不安を少しでも和らげるために、医療機関を受診し、一時的に精神安定剤などの薬物を用いることも有効な場合があります。
不安で眠れない、イライラして身近な人に当たってしまう、といった状況が続くようであれば、まずは薬物療法で症状を落ち着かせ、様子を見ることも大切です。
そして、少し症状が落ち着いてきたら、カウンセリングなどを通して、ご自身の根本的な性格や考え方のパターンを見つめ直し、整理していく作業に取り組みましょう。そして、今後、二度と同じような状況で適応障害に陥らないための、ストレスへの対処法などを学んでいきます。
その環境に慣れ、適応していくためには、「どのように考え、行動すると良いのか」ということを、カウンセラーと一緒に考えていきましょう。
あなたの考え方には、もしかしたら一定の癖(思考パターン)があって、それがストレスへの適応を妨げているのかもしれません。もっと考え方を柔軟にしていくことができれば、これまでストレスだと感じていたことが、それほど気にならなくなる、ということも十分に可能です。
環境を変えるという選択肢だけでなく、自分の考え方を変えてみるという選択肢も、ぜひ取り入れてみてください。
一人で考えていると、どうしても同じ考え方のループにはまってしまいがちです。聖心こころセラピーの認知行動療法などを通して、「自分の考え方の、こういう点が良くなかったのかもしれないな」「これからは、こういう風に考えて行動していけばいいのか」という具体的な気づきや学びを得ることができれば、あなたの生き方そのものが、ずっと楽になるはずです。
一人でストレスに対処するのが難しいと感じる場合には、セラピストと一緒に考え、環境に順応していく力を養っていきましょう。
もし、家族関係などに原因がある場合には、家族にきちんと話をすることで、環境そのものを変化させていくことも可能です。
自分一人ではなかなか難しいことでも、専門家と一緒に相談し、自分の認知(物事の捉え方)を改めていくことで、自分が変われば、周りの環境も変わっていく、ということを実感できるはずです。
より良い生活を送れるように、ストレスから解放され、あなたらしい生き方ができるように、自分の考え方を変えるだけでなく、具体的な行動にも変化をもたらしていきましょう。
適応障害の改善のために、今できること
適応障害は、その原因となるストレスがなくなれば、多くの場合、半年以内に症状が治まると言われています。
しかし、そのストレス要因が、会社や学校、あるいは家庭環境など、そう簡単には「取り除く」ことができないものである場合も多いですよね。
そのような場合には、困難やストレスに対して柔軟に対応し回復する力であるレジリエンスを身につけ、できることから少しずつ取り組んでいく中で、気づけば前に進んでいたというような形で、自分のペースでつらさへの感じ方を柔軟にし、回復を目指せるようにサポートしていきます。
適応障害は、適切な対処と治療を行えば、必ず改善するものです。
しかし、適応障害の状態が長く続いてしまうと、その症状からうつ病や他の依存症などを併発してしまい、回復までにかかる期間も長くなってしまう可能性があります。
できることなら、ストレスを強く感じ、「何かおかしいな」と違和感を覚えた時点で、早めにご自身が適応障害に陥っていないか、専門機関で相談したり、セルフチェックをしたりすることが、短期間で症状を改善させるための最善策と言えます。
「自分の根性がないだけだ」「努力が足りないんだ」「カウンセリングを受けるなんて、恥ずかしい…」
そう感じてしまい、なかなか最初の一歩を踏み出すのが難しい、と感じるかもしれません。
しかし、まずは適応障害の改善のため、そして、あなた自身の未来のために、勇気を出して、私たちのようなセラピーの場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
聖心こころセラピーでは、あなたの症状や状況に合わせて、カウンセリングやコーチングなどを効果的に組み合わせ、人に対する過剰な緊張感や苦手意識を改善しながら、適応障害からの回復を目指します。
環境や状況に左右されすぎない、しなやかで、他者と協調しながらも自分らしさを保てる、そんなあなたへの再構築を、私たちが全力でサポートします。
参考文献・参考資料
- 池田朝彦(2019) 日本における「適応障害」患者数の増加 社会政策学会誌『社 会政策』 第12巻 第2号
- 平島奈津子ほか(2023) 適応障害(適応反応症)の予防と対策 医歯薬出版株式 会社『医学のあゆみ』 287巻 4号
- アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神 疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院