離人症カウンセリング

その中でも、名古屋聖心こころセラピーで離人症の方のカウンセリングをしていて、一つの傾向として見られるのが、「離人症と親子関係」の深い結びつきです。

あなたは子どもの頃、親御さんや先生など、目上の方から、ガミガミと、あるいはくどくどと叱られた経験はありませんか？ 親御さんは、お子さんに「正しくあってほしい」という思いから叱るわけですが、もし、その叱っている内容が本来の問題点からズレていたり、過去のことを持ち出してきたり、他の子と比較したりすることが続くようであれば、「またか…」という気持ちになり、今まさに自分が叱られているという現実から意識をそらすために、全く別のこと（他事）を考えてしまう、ということもあったのではないでしょうか。

「あの棚の置き物は、あんな所にあったかな…」「この部屋にある赤い物は、1個、2個、3個…」というように、叱られている自分をよそに、他のことに意識を向けてしまう。まさに、「心ここにあらず」の状態です。

親と子の間に、疑いようのない深い信頼関係や絆がしっかりと築かれていれば良いのですが、親子間のコミュニケーションがうまくいっていなかったり、親御さんのその時の気分によって叱られたり叱られなかったり、といった不安定な関わりが続くと、関係性の不安定さや混乱から、離人症に繋がりやすくなる可能性があります。

また、虐待があるような親子関係では、お子さんがひどい言葉を浴びせられたり、暴力を振るわれたりしている最中に、意識を別の場所へ飛ばし（他事を考え）、何とかしてそのつらい状況をやり過ごそうとする、という行動に出ることがあります。そうした経験を繰り返すうちに、次第に心と体が分裂したかのように感じられるようになり、大人になってからも、きつく叱られたり、強いストレスを感じたりした時に、子どもの頃と同じような離人体験をしてしまう、というケースがあります。

このように考えると、離人症状は、つらい現実から自分を守るために、無意識のうちに身につけた「心の防衛反応」の一つとも言えるでしょう。本来であれば聞き流したり、受け止めきれなかったりするような、あまりにも強い刺激やストレスに対して、心を麻痺させたり、現実との間に膜（シールド）を作ったりすることで、自分自身を守ってきたのかもしれません。

何事にも真面目に取り組み、人当たりが良く、周りの人に細やかな気配りができる、とても優しい性格の方が、離人症には多いように思います。しかし、その真面目さや優しさは、果たしてご本人が心から望んで発揮しているものなのでしょうか。

もしかしたら、小さい頃から、何かある度に親御さんから注意を受け、大きな期待をかけられ、常に親の顔色をうかがいながら、「期待に応えなければ」と勉強や習い事に真面目に取り組んできた、という子ども時代を送ってこられたのかもしれません。そして、受験の失敗や、進学先での成績不振、あるいは学校でのいじめなど、強いストレスがかかったことをきっかけに、「今ここにいる自分の存在意義が分からない」「周りの友達との間に壁を感じる」「まるで別世界を生きているようだ」といった感覚に襲われ、会話についていけず、無理に作り笑いをするものの、何が面白いのか全く分からない、といった症状に悩まされるようになることがあります。

争いごとを好まず、穏やかな毎日を望んでいる方にも、離人症は多いように感じます。「誰かが我慢すれば、その場が丸く収まるのなら…」と、率先して自分の意見を飲み込み、波風立てずに平和を保とうとします。たとえ自分が不快に感じていても、人と競い合ったり、対立したりすることを、極端に避けようとする傾向があります。

しかし、そうして自分の本当の気持ち（感情）を抑圧し続けることで、心の中にはストレスが溜まり続けていきます。そして、初めは強いストレスを感じた時にだけ現れていた「自分が自分でないような感覚」が、次第に日常生活の中でも頻繁に現れるようになり、「自分という存在が、一体何なのか分からない」と、深く悩まれることもあります。

離人症を発症すると、「自分が自分でないような感覚」や、「現実味のない感覚」が頻繁に続くようになります。自分自身のことだけでなく、時には親しい友人のことさえも、「この人は誰なんだろう？」「なぜ、ここにいるんだろう？」と、その存在が現実のものとして理解できなくなり、孤立感を深めてしまうことがあります。また、感情の起伏が少なくなり、表情があまり顔に出なくなることで、周りからはボーッとしているように見えたり、集中力に欠けているように見えたりすることが多くなります。

その様子を周りの人が見ると、「やる気がない」「怠けている」と誤解してしまうかもしれません。例えば、上司が熱心に指導しているにも関わらず、本人は「心ここにあらず」の状態であれば、お互いの間に認識のズレ（不一致）が生じ、不快な感情が生まれてしまうでしょう。まずは、ご本人がそのような状態にあることを理解し、焦らず、少しのんびりと過ごせる時間を与えてみることも、改善に向けた一つのステップとなるかもしれません。

強い不安感や無力感があり、「自分はダメな人間だ」という自己肯定感の低い状態が続いている中で、ふとした瞬間に、これまで感じていた感覚とは異なる、現実味のない、ふわふわとした感覚に襲われることがあります。

周りの人からの励ましの言葉や、期待が、かえってプレッシャーとなり、離人症の症状が持続的に、そして頻繁に起こるようになると、日々の生活に楽しみを感じられなくなり、空虚感や孤独感を抱えたまま過ごすことになってしまいます。規則正しい生活を送ることも難しくなるため、睡眠不足や疲労が蓄積し、日常的に離人状態や現実感の喪失が起こりやすくなる、という悪循環にも繋がりかねません。

まず、強い不安感を和らげ、生活リズムを整え、そしてうつ病に至った根本的な原因を探り、改善していくことで、自ずと離人症の症状も改善してくることが期待できます。

PTSD（心的外傷後ストレス障害）は、自然災害や事故、虐待、DV、レイプといった、非常に強いストレスや強烈なショック体験によって心身に深い傷を負い、時間が経過してからも、その時に感じた強い恐怖や不安が、まるで今起こっているかのようにリアルに再現され（フラッシュバック）、苦しむ状態です。

そうした深刻なトラウマ体験だけでなく、人生において受け入れがたいと感じる出来事や、生きる気力を失うほどのつらい体験が、離人症を引き起こすきっかけとなるケースもあります。

「自分を自分として感じられない」「まるで夢を見ているような、現実感のない異空間にいるようだ」といった離人状態は、耐え難いほどの恐怖や不安から自分を守るために、感覚を麻痺させたり、つらく苦しいと感じている自分を「本当の自分ではない」と思おうとしたりするための、心の防衛反応であるとも考えられます。

安心できる環境の中で、つらい経験や深く傷ついた原因について、無理なく、少しずつ言葉にしていくことができれば、やがて分裂していた自己感覚が統合され、「今、ここに生きている」という確かな感覚と、それに伴う自然な感情を、しっかりと取り戻すことができるでしょう。

離人症の他の項目でも触れたように、「離人症は親子関係に起因するケースが多い」と考えられます。親子関係だけでなく、様々な要因が複雑に絡み合って、症状が現れるケースがあります。

「心ここにあらず」という状態は、多くの人が経験したことのある感覚かもしれません。しかし、それが持続的に、そして頻繁に現れ、日常生活に支障が出ていると感じているようであれば、離人症の可能性も考えられます。離人症の改善には実績のある名古屋聖心こころセラピーへ、早期にご相談されることをお勧めします。

子どもは、自分と外の世界との境界線や関係性がまだ曖昧であるため、離人症的な感覚を体験しやすいのかもしれません。加えて、最近では、二次元のアニメやバーチャルリアリティ（VR）など、非現実でありながらも非常にリアルに再現された世界に触れる機会が多くなりました。その一方で、本来であれば実世界で体験するはずの、人との直接的な出会いや、五感を使ったリアルな体験が少なくなってしまったことも、自分と外界との境界線の曖昧さを助長している一因なのかもしれません。

しかし、離人症は決して子どもだけの問題ではありません。大人になり、年齢を重ねるにつれて、就職、昇進、結婚、転職、出産、親の介護など、様々なライフイベントを経験し、人生はどんどん現実味を帯びてきます。

人間関係や所属するコミュニティなどが変化していく中で、子ども時代の未解決な問題が、現在の生き方そのものに大きく影響を与えていたり、これまでに身につけてしまった歪んだ、生きづらい考え方のパターンが、ストレスの積み重ねによって心や体に不調を引き起こしてしまったり…。また、突然のショッキングな出来事によって心身ともに深いダメージを受け、立ち直ることが困難になり、ただただ「今を生きさせられている」ような感覚に支配されてしまう…。

そうした、あまりにも重い現実を受け入れがたいと感じた時に、結果として自己防衛的な反応とも言える離人症の症状が出現してくる、と考えられるのです。

名古屋聖心こころセラピーにも、離人症の症状に悩まされる方が多くいらっしゃいます。離人症状の現れ方や強さは人それぞれですが、多くの方に共通して見られるのは、やはり親子関係や家庭環境が発症に大きく関わっていること、そして、ご自身の人生であるにも関わらず、どこか主体性に欠け、「これだ」と決めて自分の道を歩めていない方が多い、という印象です。

特に、子ども時代というのは、生きていく上で親の存在が絶対的です。そのため、親子関係の中で生じてしまった、もしかしたら間違っているかもしれない考え方や行動パターンに、大人になっても気づかないまま成長し、知らず知らずのうちに自分自身を苦しめてしまっている、ということがよくあります。