拒食症カウンセリング

拒食症は、スリムな体型への強い憧れから始まることがありますが、その裏には、スリムではない自分への嫌悪感や、自己肯定感の低さ、自己否定感の強さといった心の状態が隠れていることが多いです。そして、その根底には、親子関係の問題、特に「条件を満たさなければ愛されない」という歪んだ考え方が影響していることがあります。
拒食症(摂食症・神経性食欲不振症)とは
拒食症とは、文字通り「食べることを拒む症状」です。正式には「神経性食欲不振症」や「思春期やせ症」、「神経性無食欲症」などと呼ばれ、主に10代から20代の若い女性に多く見られる症状です。初期は痩せたことによって一時的に達成感や満足感から病気への認識が乏しいことがあります。しかし、無理なダイエットや、スリムな体型への過剰な憧れから、体や心に大きな負担がかかっていきます。
拒食症のサイン
女性であれば、健康維持やスタイルキープのために、多少の食事制限をすることは珍しくありません。しかし、もし「食べること」に対して強い恐怖心や罪悪感を伴っているようであれば、それは拒食症の段階に入っているサインかもしれません。

拒食症の主な特徴としては、食べることや太ることへの強い嫌悪感から、食事を極端に拒否し、その結果、著しく痩せてしまうことが挙げられます。
さらに症状が重くなると、体が食事を受け付けなくなり、食欲そのものが失われ、少し食べただけでも吐き気を感じるようになってしまうことさえあります。
周囲の心配と本人の認識のズレ
拒食症が心身に与えるダメージは非常に深刻なため、周りのご家族や友人は心配し、当然、治療を勧めるでしょう。しかし、ご本人の意識の中では「自分は痩せている」とは感じられていないことが多いため、治療の必要性を感じていないケースが少なくありません。そのため、心配してくれる周囲の声に対して、かえって反発してしまうこともあります。
また、周りからは「ただの痩せすぎだから、ちゃんと食べれば治る」と、簡単に考えられがちな拒食症ですが、実際にはそれほど単純なものではありません。心の問題や生活環境、人間関係など、様々な要因が複雑に絡み合って発症しています。そのため、薬を飲めば治る、といった一般的な病気とは、かなり異なると考える必要があります。
摂食症を克服するためには、まずご自身が拒食(あるいは過食)の状態にあることを自覚し、「必ず治すんだ」という強い意志を持つことが、大切な第一歩となります。
まずは拒食症チェックをしてみましょう
以下の項目に、あなたはいくつ当てはまりますか?
- 生理不順がある(あるいは生理が止まっている)。
- 立ちくらみやめまいが時々ある。
- 食後の体重増加が、かなり気になる。
- 何かを食べた後に、強い罪悪感を感じてしまう。
- 食事の後、吐かずにはいられない気持ちになることがある。
- 最近、体が冷えやすく、冷房などが特に苦手だと感じる。
- 食べ物のカロリーが、非常に気になる。
- 食べ物を見ると、嫌悪感を感じる時がある。
- 他の人が食事をしているのを見て、おぞましいと感じることがある。
- 体重が減っていくと、気分が良くなる、安心する。
- 普通の量の食事でも、量が多く感じられ、完食するのが難しい。
- 周りからは「痩せている」と言われるが、自分ではそうは思えない。
- 少しでも痩せようとして、常に動き回ったり、過度な運動をしたりしている。
- 他の人のスタイルが気になり、自分の体型と常に比較してしまう。
- 日常生活の中で、「痩せること」が最も重要な関心事になっている。
いくつ当てはまりましたか? もし3つ以上該当するようでしたら、拒食症の予備軍かもしれません。5つ以上当てはまる場合は、拒食症の段階に入っている可能性がかなり高いと考えられますので、注意が必要です。
拒食症の「急性期」とは?
拒食症であっても、ご本人が痩せるために活発に運動したり、動き回ったりしている場合、周りからは元気で健康的に見えるため、その深刻な状況が見過ごされてしまうことも少なくありません。
改善しやすい時期
拒食が進行し、極度の低体重状態になると、筋肉や骨にも十分な栄養が行き届かなくなり、様々な身体的な問題が徐々に現れ始めます。この段階になると、周りの人もご本人も、「これは大変だ、何とかしなければ」と、はっきりと拒食症であることを自覚し、強い危機感を覚えるようになります。この時期を「急性期」と呼びます。慢性化してしまった状態と比べると、この急性期は、拒食症が比較的改善しやすい時期であると言われています。

拒食症が引き起こす危険な身体症状
極端な「やせ」や低栄養状態が続くと、貧血や骨粗鬆症などを引き起こすことがあります。また、急激な体重減少は、心臓や血管などの循環器系、肝臓などの機能に異常をきたし、脳の萎縮が起こる可能性も指摘されています。
様々な身体への影響
さらに、自己誘発嘔吐や下剤の乱用によって、体内の水分とミネラル(電解質)のバランスが崩れ、皮膚の乾燥、循環器系の異常などを引き起こします。それが原因となって、肌荒れや髪の毛のトラブル(抜け毛など)が現れたり、逆に産毛が濃くなったりしてしまうこともあります。
その他にも、拒食症は、無月経(生理が止まる)、味覚の異常、不整脈、白血球の減少など、数えきれないほどの合併症を引き起こす可能性がある、非常に恐ろしい病気なのです。
本来、美しくなるために、外見を良くするために始めたはずのダイエットが、このような体のトラブルを引き起こし、かえって外見を損ねてしまう結果になっている、ということを、まずご本人が自覚する必要があります。
拒食症が引き起こす精神的な症状
栄養不足は、体だけでなく、心にも深刻な影響を与えます。
精神的な合併症
拒食症に最も合併しやすい精神疾患の一つが、「うつ病」です。気分がひどく落ち込み、何もする気が起きなくなり(無気力)、「自分はなんてダメな人間なんだ」と、強く自己否定してしまうことも少なくありません。
また、「こんなに痩せ細ってしまった自分を、人に見られたくない」という気持ちから、人と会うことに強い恐怖を感じてしまい、「パニック障害」や「対人恐怖症」などを引き起こすこともあります。
負の連鎖
このような不安定な精神状態が原因となって、ひきこもり、自傷行為(リストカットなど)、他の依存症(アルコールや薬物など)といった、さらなる問題を生み出し、拒食症の患者さんをますます苦しめることになってしまいます。まさに、抜け出すことの難しい泥沼状態です。
拒食症は、明らかに「心の問題」です
食事がコントロールできなくなる理由として、体が食習慣の異常に慣れてしまう、という側面もありますが、最も大きく関係しているのは、やはり「心」の状態です。
心理的なアプローチの重要性
拒食症を引き起こす心の状態は、非常に複雑であり、根深いものであることが多いです。そのため、「誰でもこの薬を飲めば治る」「この治療法さえ受ければ必ず治る」といった、画一的な治療法が存在しないのが、医療現場での現状でもあります。
しかし、拒食症の方が、異常なほどの「太ることへの恐怖」を抱いていたり、ご自身の体型に対するイメージ(ボディイメージ)が著しく歪んでいたりすることから、心理的な問題から目を背けることはできません。拒食症の治療には、一人ひとりの心に丁寧に寄り添い、その方に合ったオーダーメイドのアプローチが必要不可欠なのです。
拒食症の方が抱える「恐怖のルール」
拒食症の方の「痩せたい」という願望や、「太ることへの恐怖」は、異常なまでに強く、ご本人の体型に対して、周りが「もう十分痩せているよ」といくら伝えても、ご本人が満足することはありません。「あと〇キロ痩せないと、まだダメだ!」と、痩せることへの目標を、さらにエスカレートさせていってしまうのです。
独自の厳格なルール
さらに、拒食症の方は、ご自身の中で確固たる「マイルール」を確立していることが多く、食事の量やカロリー計算などを、徹底的に行おうとする傾向があります。
その「太らないためのマイルール」を守るために、家族と一緒に食事をとることを避けたり、出された食事をこっそり捨ててしまったり… といった、異常とも言える食行動をとってしまうことがあります。しかし、ご本人は、それが異常であるとはなかなか自覚することができません。
拒食症を引き起こす心理的な背景
「太ることへの恐怖」や「独自の厳しいルール」の背景には、「完璧でなければ、私は愛されない」という、心の奥底にある強い思い込みが隠れていることがよくあります。
性格傾向と親子関係
摂食症に陥りやすい方は、周りに気を遣う優しい「優等生タイプ」であったり、何事も完璧にこなそうとする「完璧主義の努力家」であったりすることが非常に多く、理想の自分と現実の自分とのギャップに耐えられない、という性格的な特徴を持っていることがあります。
拒食症のきっかけとしては、外的な要因として「痩せていることが美しい」とされる現代の社会風潮や、女性の社会進出に伴うストレスの増加などが挙げられます。しかし、ご本人は無自覚なことが多いのですが、実はその根底には、親御さんに対する強い不満や満たされない思いが隠れていることが少なくありません。
特に、母親との関係は、摂食症の発症に大きく影響すると言われています。幼少期や思春期に、母親に十分に甘えることができなかった、あるいは、ありのままの自分を受け止めてもらえなかった、と感じている方が、その満たされない欲求を、摂食症という形で表現しているケースが、非常に多いのです。
愛情への渇望と歪んだ思考
幼少期・思春期の「お母さんにもっと愛されたい」という純粋な気持ちが、いつしか「人に愛されるためには、何か条件を満たさなければならない」→「痩せて綺麗になれば、もっと褒めてもらえる、愛してもらえる」という、極端で歪んだ考え方を生み出してしまい、自分自身を激しいダイエットへと追い込んでいってしまうのです。
また、ご両親の不仲や、家庭内のトラブルなどを目の当たりにして育った場合、「あんな親たちのようには、私は絶対になりたくない」という強い思いが、巡り巡って、結果的に拒食という行動に向かわせていることもあります。
特に、幼少期のお子さんは、母親が苦労していたり、父親に対して我慢ばかりしている姿を見ていると、「母親のような、男性に支配される人生にはなりたくない」「“大人の女性”になることは、つらいことなんだ」と、無意識のうちに感じてしまうことがあります。
そして、ご自身の体が女性として成熟していくにつれて、まるで母親に近づいていくような感覚を抱き、「“女性”であることを拒否したい」という気持ちが、無意識のうちに働き出すのです。その結果、女性らしい丸みを帯びた体へと成長することに対して、異常なほどの恐怖心を抱いてしまうのです。
痩せ続けることが「達成感」になってしまう心理
スレンダーでモデルのような体型の女性は、見た目も美しく、魅力的かもしれません。また、細く、どこか儚げ(はかなげ)な女性は、それだけで「守ってあげたい」と思わせるような存在でもあるでしょう。
美しさの基準と心の病
しかし、もしその心の奥で、食べることを頑なに拒否しているのであれば、それはもはや、通常の「美しさ」と呼べるものではなく、拒食症という精神的な病気に陥っている状態と言えます。
拒食症は、同じ摂食症である過食症とは異なり、命に関わる危険性が高い症状です。実際に、極度の栄養失調(衰弱死)で亡くなる方も少なくなく、非常に危険な状態を放置することはできません。何らかの対策を、早急に講じることが必要です。
「綺麗になったね」と言われたい、その裏にあるもの
最初は、軽い気持ちで始めたダイエットだったかもしれません。食事の量を少し減らし、運動をすることで、体がだんだんと痩せていき、スリムになっていく。その過程で、周りの人から「痩せたね」「綺麗になったね」と言われることが嬉しくて、それが励みとなり、ダイエットがさらにエスカレートしていく、ということもあります。
痩せることへの執着
しかし、それが度を超えてしまうと、「食べること」そのものへの恐怖を感じるようになったり、自分の体型を過剰に気にするあまり、体重などの数字に異常なまでにこだわるようになったりする場合が出てきます。
体重は、本来、健康的に毎日を過ごすための、一つの目安(バロメーター)に過ぎません。しかし、その数字を減らすことに全神経を集中させてしまい、明らかに健康が損なわれているにも関わらず、その危険な習慣をやめることができない、という状況に陥ってしまうのです。
「太るのが怖いから、ご飯を一口でも余分に食べられない」「低カロリーのものばかり選んでしまう」など、痩せることに取り憑かれてしまい、健康的な生活を送る、という視点が完全に失われてしまう場合もあります。「痩せたい」という気持ちが強まり、食べたことを無かったことにするための「嘔吐」を繰り返し始めると、次第に本格的な拒食症へと進行していく可能性もあります。
スリムになることで「承認欲求」が満たされる?
拒食症に陥っている方の心の中には、「痩せて綺麗になりたい」という思いだけでなく、それ以上に、「誰かに認められたい」という強い承認欲求が隠れていることがあります。
愛情確認としての「痩せ」
本来であれば、ご両親から無条件に愛され、「あなたは、そのままで素晴らしいんだよ」と認めてもらう経験を通して、自己肯定感は育まれていきます。しかし、何らかの理由で、「自分は十分に認めてもらえていないのではないか」「痩せて、か弱い存在でいることで、自分はやっとここに居場所があるのだ、許されているのだ」というような、歪んだ認識に陥ってしまっている場合があります。
体重が減り、痩せていくこと自体が、まるでゲームをクリアしていくような「面白さ」や「達成感」に感じられてしまい、痩せることをやめようとしない、という場合も多いのです。
社会的なプレッシャーと誤った価値観
若い女性の中には、スリムな体型になることへの強い憧れを持っている方も多く、また、「食欲に負けてしまう自分は、醜くてダメな存在だ」というように感じてしまうこともあります。
お菓子やご飯などを我慢し、細い体型を維持することが、まるで自分の存在価値(アイデンティティ)を保つために不可欠なことであるかのように感じ、「太っている自分は醜い、価値がない」といったような、誤った価値観を持ってしまっている場合もあります。
心身のバランスを崩してしまう拒食症
拒食症になると、心と体の両方のバランスが大きく乱れてしまいます。その結果、健康的な生活を送ることが困難になり、考え方も極端で偏ったものに変わっていきがちです。
食への罪悪感と歪んだ認識
生きていくために食事を摂ることは、私たちにとって必要不可欠な、ごく自然な行為です。そして、本来であれば、美味しいものを食べることは、大きな喜びや楽しみであるはずです。それにも関わらず、「食べること」に対して強い罪悪感を抱いてしまう、ということがあります。
「食べる」という行為自体が、まるで醜いことのように感じられ、「食べてしまう自分は、ダメな人間だ」という自己否定感が強くなり、ますます「痩せること」への憧れが強くなっていく、という悪循環に陥ってしまう場合も多いのです。
10代から20代の女性は、特に自分の容姿に対して憧れを抱いたり、逆にコンプレックスを感じたりしやすい年頃です。ダイエットも、自分をより魅力的に見せるための一つの方法として、ごく普通に行われているかもしれません。しかし、それがストイックになり過ぎてしまうと、気づかないうちに拒食症へと繋がっていくケースがあるのです。
スリムさよりも「健康的な美しさ」を理解する
太り過ぎは、将来の生活習慣病のリスクを高めるため、避けた方が良いでしょう。健康のためには、やはり適正な体重を維持することが大切です。しかし、実は、少しぽっちゃりしているくらいの方が長生きできる、という統計データもありますし、男性の中には、スリムな女性よりも、むしろ少しふくよかな方が好きだ、という方も、実は多くいらっしゃいます。
客観的な視点の重要性
周りの人からは「もう十分に痩せているよ」と言われているのに、ご自身ではそのことを認識できず、過剰なダイエットに突き進んでしまってはいませんか?「もう少し食べた方が良いんじゃない?」と心配されることはありませんか?
もしかしたら驚かれるかもしれませんが、一般的に男性が女性に望む理想の体型は、女性自身が理想とする体重よりも、約5キロほど重いという調査結果もあるのです。
女性がスリムさを求めるのは、男性からの視線よりも、むしろ同性である他の女性からどう見られるかを意識している場合が多い、とも言われています。
大切なのは、ご自身の主観的な思い込みにとらわれるのではなく、客観的な視点を持つことです。そして、見た目の細さだけを追求するのではなく、栄養バランスの取れた食事をきちんと摂ることが、心身ともに健全で、本当の意味で美しい状態を保つために、何よりも必要になってくるのです。
過去の「からかわれた経験」が引き金になることも
子どもの頃、あるいは思春期に、ご両親や友人など、誰かに「太っている」とからかわれた経験はありませんか? その時のつらい記憶が、心の傷となり、「太っていること」に対して、過剰な恐怖心を抱くようになってしまう、という場合も少なくありません。
周囲の反応と自己認識
また、痩せたことによって、周りの人の態度が変わった(例えば、急に優しくなった、ちやほやされるようになったなど)という経験があると、「やっぱり、痩せていないと私は注目してもらえないんだ…」という思い込みが、さらに強固になってしまう場合もあります。
もちろん、ほとんどの親御さんやご友人は、あなたが太っていようが痩せていようが、そんなことで態度を変えることはないはずです。しかし、もし身近な存在である親御さんなどから、「太っているね」「痩せている方が綺麗だよ」といった言葉を繰り返し言われることで、ダイエットへの意欲が過剰にかき立てられてしまう、というケースもあります。
それが、健康的な範囲内で行われているうちは良いのですが、ストイックになり過ぎると、食べることへの罪悪感が強くなり、だんだんと食べられなくなってしまい、心身の不調が現れてくる場合もあります。
体重増加への過剰な恐怖
拒食症の方は、体重が増えることに対して、日々過剰な恐怖を感じています。
矛盾する思いと食行動
余計なカロリーを摂取すれば、ある程度体重が増えるのは、体が健康である証拠とも言えます。しかし、拒食症の方は、「食べたい」という自然な欲求と、「でも、絶対に太りたくない」という強い思いとの間で、常に矛盾した気持ちを抱えています。そして、多くの場合、「太るのが嫌だから食べない」という選択をしてしまうのです。
もし、「太っていても、痩せていても、ありのままの私でいいんだ」「外見だけで私の価値は決まらないんだ」ということを、心から実感できるようになれば、食べるという行為に対しても、それほど罪悪感を抱くことなく、自然とちょうど良いバランスに落ち着いてくることが多いものです。
しかし、「痩せている女性がもてはやされる」という社会的な風潮や、ご自身の思い込みから抜け出せず、「自分ももっと注目されたい」「ちやほやされたい」という思いが強すぎると、過剰なダイエットへと突き進んでしまうことがあるでしょう。
栄養欠乏がもたらす体力・気力の低下
拒食症に陥ると、体に必要なエネルギーが極端に不足するため、十分に体を動かすことができなくなってしまいます。食べる量を極端に減らしているにも関わらず、痩せるために毎日3時間も激しい運動をしている、といった状況は非常に危険です。
心身への深刻な影響
栄養が足りなくなると、体力だけでなく、気力までも失われてしまいます。家に閉じこもりがちになり、何もする気が起きなくなり、そんな自分が情けなく感じられ、自分を責める気持ち(自責の念)に苛まれてしまう… ということはありませんか?
栄養不足は、体だけでなく、脳のエネルギーも低下させます。そのため、物事に対して意欲的に取り組んだり、前向きに行動したりすることが、次第に難しくなっていくのです。
ご自身の生活習慣や栄養状態を客観的に把握し、もしエネルギー不足であること、そしてそれが心身に様々な悪影響を及ぼしていることを、きちんと理解できれば、現状を打破したいという気持ちが生まれ、少しずつ考え方を変えていくきっかけになるかもしれません。
家族間のトラブルが拒食症の原因になるケースも
拒食症に陥ってしまったのは、自分個人の問題だけだと考えがちですが、実は、あなたが成長する過程で築かれてきたご自身の性格や考え方のパターンが、大きく関係しています。
性格傾向と家庭環境
例えば、完璧主義であったり、「良い子」でいようと常に頑張る傾向があったり、親御さんにとって「手の掛からない、聞き分けの良い子」であったりした場合など、一見問題がないように見えるお子さんでも、摂食症を発症しやすいと言われています。
それは、親御さんからの愛情を得るために、無意識のうちに一生懸命努力し続けている結果が、拒食症という形で現れている場合もあるからです。
もし、「自分の体型がどうであれ、両親や友人は、いつもと変わらずに接してくれるんだ」ということが、心から実感できれば、症状が少し改善に向かう可能性もあります。そのためには、まず、ご家族の間にあるかもしれないトラブルや、コミュニケーションの問題などを、きちんと把握することも大切かもしれません。
自己肯定感とコミュニケーション
ご自身に自信を持ち、「そこまで完璧でなくても大丈夫なんだ」ということが分かると、少し気持ちも楽になってくるでしょう。また、お互いのコミュニケーション不足も、拒食症の一因となっている可能性もあります。ご家族で何らかの形でコミュニケーションを取り、お互いの気持ちを理解し合う時間を持つことも、拒食症の改善には有効な場合があります。
拒食症克服に向けて、私たちができること
拒食症の方や過食症の方、摂食症で苦しんでいる方々の多くは、「親子関係の問題」が、心の深い部分で未解決のままになっているケースが少なくありません。拒食症も過食症も、ご本人やご家族は気づいていないことが多いのですが、その根底には親子関係の問題が潜んでいることが、実は非常に多いのです。たとえ、職場でのストレスがきっかけで拒食・過食になったように見えても、その元をたどれば、「親子関係」の中で形成された認識の歪みが、結果として「摂食症」という形で現れている、ということも考えられます。

根本原因へのアプローチ
名古屋聖心こころセラピーには、摂食症でお悩みの方も多くお越しいただいておりますが、私たちは、「拒食」や「過食」といった表面的な症状に直接アプローチするだけではありません。
魔法をかけているわけではありません。カウンセリングを通して、あなたが過去に、ご自身の家庭環境の中で無意識のうちに身につけてしまったかもしれない、あなた自身に合っていない考え方や捉え方を、より自然で、あなたらしい考え方に修正していくお手伝いをします。そうすることで、心と体の間にあった不協和音が消え、そして気がつけば、摂食症という苦しみも、次第に終息を迎えていくことが期待できます。
私たちは、拒食・過食などの摂食症に対する解決策を、これまでの多くの経験を通して心得ています。どうか一人で抱え込まず、私たちと一緒に、早期解決を目指していきましょう。
拒食症からの回復は、決して不可能なことではありません。
拒食症の心理テスト
参考文献・参考資料
- 西園マーハ文(2017) 摂食障害における病識と治療 精神経誌 119巻 12号
- アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院