離婚問題カウンセリング

夫婦カウンセリングのご相談の中には、離婚という選択肢を視野に入れて来られる方も少なくありません。「結婚生活を続けたい」という気持ちと、「もう離婚しかないのかもしれない」という気持ち。この相反する二つの道の間で揺れ動いている状態は、本当におつらいことと思います。この複雑に絡み合った思いを、一緒に整理していくお手伝いができれば幸いです。
離婚問題について考える
「愛を誓ったあの頃は、一体何だったのだろうか…」
そんな風に、遠い過去のことのように感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
日本ではグラフに示す通り、結婚した夫婦の3組に1組が離婚すると言われており、離婚は決して他人事ではない、身近な問題となっています※。離婚は若い夫婦に多いというイメージがあるかもしれませんが、最近では「熟年離婚」という言葉があるように、何十年も連れ添ってきたご夫婦が、人生の後半で離婚を決断することも珍しくありません。

離婚が多い年齢層としては、男性では30代後半、女性では30代前半というデータがあり、お子さんを授かり、まさに子育て真っ最中の時期に、離婚という大きな決断をされるケースも多く見られます。
元々は赤の他人だった二人が愛し合い、夫婦となり、一つ屋根の下で生活を共にするようになると、喜びに満ちた楽しい時もあれば、信頼関係にひびが入り、まるでどん底に突き落とされたようなつらい気持ちになる時もあります。離婚したくて結婚する人はいないはずですが、一体何が原因で、離婚を考えざるを得ない状況にまで至ってしまったのか、一度冷静に立ち止まって考えてみる必要があります。
ここでは、離婚問題に発展しやすいご夫婦やご家族のパターン、そして離婚のメリット・デメリットにも触れながら、離婚が本当に最善の選択なのかどうか、今一度考えるきっかけとなれば嬉しく思います。
※日本での年間の離婚件数は約17万件であり、婚姻件数約50万件の3分の1に相当します(令和4年統計より)。この数値から「3組に1組が離婚する」と言われることもありますが、実際には年間の婚姻件数と離婚件数を単純比較したものであり、すべての夫婦のうちの3分の1が離婚するという意味ではありません。
離婚に対する世間の目
根強い伝統的な家族観

ひと昔前に比べれば、離婚に対するネガティブなイメージは薄れてきていますが、それでもやはり、離婚に対する差別や偏見が依然として残っているのも事実です。
両親が揃っていて、一家の大黒柱である夫が外で働き、その夫を妻が家庭で支える、という伝統的な家族像や結婚観は、未だに根強く存在しています。そのため、離婚を選択すると、「人生の失敗者」「出来損ないの人間」といったレッテルを貼られてしまうのではないか、という恐れを感じる方も少なくありません。離婚をタブー視するような社会的な風潮があるからこそ、離婚への抵抗感が強くなり、なかなか離婚に踏み切れず、目の前にある問題を先送りにしてしまう… その結果、状況がさらに悪化していく、というケースが散見されます。
問題の先送りがもたらすもの
周りの目があるからと、仲の良い夫婦や温かい家庭を装っていても、根本的な問題から目をそらしているだけでは、いつかその関係は破綻してしまうでしょう。
何が、ご自身やご家族にとって一番幸せな選択なのか、感情的にならずに考えていくことが大切です。離婚を決断する前に、カウンセリングなど第三者を交えて、現状を整理し、問題の原因を探り、いくつかの解決策を検討してみることで、思いがけず夫婦関係や家族関係を再構築でき、離婚を回避できるケースも、実は多くあります。
健全な夫婦や家族とは?
いつも仲が良さそうに見える夫婦、笑いの絶えない家族… どうすれば、そんな関係になれるのでしょうか?また、どうすればその良好な関係を維持できるのでしょうか?
尊重と思いやりの関係性
「仲が良い」と言っても、それは決して、誰かが一方的に我慢していたり、相手に依存したりしている関係ではありません。お互いを思いやり、一人の人間として尊重し合える関係です。もし意見が食い違うことがあっても、お互いの考えをきちんと伝え合い、相手の意見にも耳を傾け、最終的には双方が納得できる着地点を見つけるまで、建設的に話し合うことができる関係です。
コミュニケーションと時間の工夫
生活スタイルの違いから、すれ違いが生じることもあるでしょう。たとえ一緒に過ごす時間が十分に取れなくても、「おはよう」「ありがとう」といった日々の挨拶や感謝の言葉は欠かさず、すれ違いを悲観的に捉えるのではなく、「どうすれば夫婦の時間、家族の時間を作れるだろうか」と前向きに考えることができます。
子育てにおける親の役割
ご夫婦で望んで授かったお子さんに対しては、責任を持って育てていきます。お子さんは、親との関わりを通して、人生の楽しさや厳しさ、そして「自分はここにいていいんだ」という絶対的な安心感を学びます。そして、将来、社会で自立し、たくましく生きていけるように、親はサポートしていきます。そのためには、親自身も精神的に自立していることが重要になります。
もし、ご家庭内で揉め事が多かったり、冷え切った雰囲気があったりするならば、そこには必ず何らかの原因があるはずです。カウンセリングなど、第三者の視点を取り入れながら、その原因を整理していくお手伝いができます。
離婚に至るパターンとその兆候
離婚の原因や、離婚に至りやすいパターンには、どのようなものがあるのでしょうか?
離婚原因の多様性
離婚原因として最も多く挙げられるのが、「性格の不一致」です。もともと異なる環境で育った他人同士が結婚するわけですから、多少の価値観の違いはあって当然ですが、離婚に至るご夫婦の場合は、結婚生活を維持することが困難なほど、関係が破綻してしまっています。
その他にも、浮気や不倫によってパートナーを裏切り、信頼関係の修復が極めて難しくなってしまうケースもあります。DV(ドメスティック・バイオレンス)による身体的、精神的、経済的、性的な暴力や、モラルハラスメント(モラハラ)による精神的な支配なども、深刻な離婚原因となり得ます。近年では、性の不一致、いわゆるセックスレスが原因で離婚問題に発展するケースも増えています。
離婚のサイン:コミュニケーション不足
離婚に至る夫婦に見られる前兆として、夫婦間のコミュニケーション不足が挙げられます。「言わなくても分かってくれているだろう」「夫婦なんだから、これくらい察してほしい」といった言葉をよく耳にしますが、残念ながら、私たちは超能力者ではありませんから、相手の考えていることを正確に理解することはできません。たとえ夫婦であっても、言葉にして伝えなければ、すべてが通じ合うということはあり得ないのです。
会話のない冷え切った家庭で、笑顔や喜び、楽しさが生まれるでしょうか?あるいは、常にピリピリとした緊張感のある家庭ではどうでしょう。力を持つ者の機嫌を損ねないように、過度に気を遣い、怯えながら過ごすような状態が続いていませんか?不和を抱えたままの生活は、いつか必ず限界が来てしまいます。そうなる前に、早めに対処していくことが大切です。
離婚したいけれど、決断できない… その理由
離婚を本格的に考え始めても、なかなか最終的な決断に至らない、あるいは途中で挫折してしまう方が多いのが現状です。その理由は何でしょうか。
手続きの煩雑さと経済的な不安
まず、離婚の手続き自体が非常に煩雑で、時間も労力もかかります。弁護士に依頼すれば費用もかかりますし、決して簡単なプロセスではありません。また、先ほども触れたように、「世間の目」が気になってしまい、具体的な行動に移せない、という方も多くいらっしゃいます。
さらに、離婚後の経済的な不安も大きな要因です。特に専業主婦(夫)であったり、収入が不安定だったりする場合、離婚後の生活を一人で成り立たせていけるのか、という心配は切実です。
子どもに関する問題
お子さんがいる場合には、親権や養育費の問題も避けては通れません。どちらが親権者となり、お子さんを育てていくのか。離婚後も、お子さんのためにもう一方の親と面会交流を行うのか、それとも一切会わないのか。養育費は誰が、いつまで、いくら支払うのか…など、決めなければならないことが山積みです。
ジレンマと問題の先送り
夫婦関係を修復したい気持ちと、離婚しかないという気持ちの間で揺れ動き、どうしたら良いか分からない… そんなジレンマから、結局、問題を先送りにしてしまい、状況がさらに悪化してしまう、というケースも少なくありません。手遅れになる前に、早期に対処し、ご自身とご家族にとって、より幸せな未来を目指していくことが大切です。
離婚が子どもに与える影響
離婚によって、お子さんは多くの場合、どちらか一方の親に引き取られることになります。本来であれば、お父さん、お母さんの両方と共に過ごすはずだった時間が、必然的に少なくなってしまいます。特にお子さんがまだ小さい場合には、親からの絶対的な安心感を得る機会が減り、愛着形成が十分に行われない可能性があります。その結果、成長するにつれて、人間関係の築き方や自己肯定感などに、何らかの不具合が生じやすくなることも指摘されています。
子どもが抱える心の負担
お子さんは、離婚によって傷ついている親の姿を見て、甘えることを我慢したり、わざと「いい子」として振る舞ったりして、親に心配をかけないように努めているかもしれません。しかし、心の奥底では、常に満たされない思いや、愛情不足を感じている可能性があります。そうした感情が積み重なり、何かをきっかけに、問題行動として爆発してしまうこともあります。
世代間連鎖のリスク
親の不仲や家庭内の不和は、「世代間連鎖」しやすいと言われています。つまり、親が経験したような夫婦関係のパターンを、無意識のうちに自分自身のパートナーシップで繰り返してしまう、ということです。親と同じようなタイプのパートナーと結ばれ、同じような問題に直面してしまう、というケースも少なくありません。
お子さんへの影響は、決して小さなものではありません。だからこそ、可能であれば、安易に離婚を選択するのではなく、夫婦や家族関係の再構築に向けて、できる限りの努力をしてみることをお勧めします。これまで色々な方法を試してみたけれど、なかなか改善しなかった… という方も、諦める前に、一度カウンセリングでご相談してみませんか?
「離婚」を切り札にする関係
ご夫婦の一方が、「離婚」という言葉を切り札のように使い、相手を支配しようとしているケースがあります。
支配と依存の関係
特に、モラハラ傾向があったり、妻(夫)に経済力がないことを見下していたりする場合、「何か気に入らないことがあると、すぐに『離婚するぞ!』と言って相手を脅し、自分の思い通りにコントロールしようとする」といった行動が見られます。
このような場合、夫婦間の共依存やDV(精神的DVを含む)が疑われます。共依存とは、例えば、「自分を犠牲にしてでも相手に尽くすことでしか、自分の存在価値を見出せない人」と、「自分の気が済むまで相手に尽くしてもらうことで満足感を得る人」とが、お互いに強く依存し合っている関係性を指します。
気づかれにくい支配構造
家庭内で行われるDV、特にモラハラのような精神的な暴力は、外部からは非常に気づかれにくいという特徴があります。相手を徹底的に追い詰め、精神的に支配し、コントロールしているような状況であっても、周りの人はその深刻さに気づかないことが多いのです。「夫(妻)がいなくては、私は生活できない」と思い込まされるような状況を作り出し、離婚をチラつかせながら相手を支配することは、決してあってはならないことです。もし、ご自身がそのような状況にあると感じたら、まずは冷静にご自身の置かれている状況を客観的に見つめ直し、早急に専門家などに相談するなど、問題解決に向けて動き出す必要があります。
「離婚できない」と感じる心の呪縛
「離婚したい気持ちはあるけれど、私にはできない…」
そういった声をお聞きすることがあります。この場合も、根底には夫婦間の共依存関係が隠れている可能性があります。
依存と自己肯定感の低さ
「パートナーを失ってしまったら、今よりもっと生活が苦しくなるのではないか」「パートナーがいなくなったら、自分は自分らしくいられなくなってしまうのではないか」といった強い不安を抱えている場合があります。あるいは、パートナーからそう思い込まされている、ということもあるでしょう。
もともと自分に自信がなく、自己肯定感が十分に育まれていない場合、依存しているパートナーがいなくなることを、まるで世界の終わりのように感じてしまうのです。
問題の本質を見つめる
「離婚できるか、できないか」という表面的な問題にばかり目が向きがちですが、より深く掘り下げていくと、問題の本質は別のところにあることが多いです。夫婦や家族になったから問題が生じた、というよりも、ご自身が幼少期から培ってきた物事の考え方や捉え方のパターンが、現在の環境やライフスタイルの変化に適応できず、不和や不調を引き起こしやすくなっている、という可能性が考えられます。
夫婦関係や家族関係を見つめ直すことはもちろん大切ですが、同時に、ご自身の内面(考え方の癖など)にも視点を当ててみることで、これまで気づかなかった大きな発見があるかもしれません。
これからの夫婦・家族・親子関係を考えるために
あなたは、これから先の人生を、どのように送っていきたいですか?
私たちは、誰もが自分らしく、幸せに過ごしてほしいと心から願っています。そのために、まず大切になるのが、「変わりたい」というご自身の前向きな気持ちです。私たち聖心こころセラピーでは、その「変わりたい」というお気持ちを全力で応援し、サポートさせていただきます。
自分を変えることから始める
残念ながら、他人を直接変えることは非常に困難です。ですから、まずは「自分自身が変わっていこう」という心持ちを持つことが、変化への第一歩となります。ご夫婦がお互いに「自分を変えていこう」と決意し、具体的な行動に移していくことで、相乗効果が生まれ、関係が劇的に改善していくケースも多く見てきました。「相手が100%悪くて、私には一切非がない」という考え方は、多くの場合、少し極端な捉え方かもしれません。
安全確保を最優先に
ただし、もし身の危険を感じるような状況にある場合は、何よりもまず、ご自身の安全を確保することを最優先に考えてください。勇気がいることかもしれませんが、問題がこれ以上大きくなる前に、できるだけ早く、私たちのような専門機関にご相談ください。状況によっては、弁護士と連携して対応することも可能です。
離婚問題からの脱却に向けて
「離婚はしたくないけれど、今の状況をどうしたら良いか分からない…」
そんな風にお悩みでしたら、ぜひ一度、名古屋聖心こころセラピーの夫婦カウンセリングにご相談ください。ご夫婦揃ってお越しになるのが難しい場合は、まずはお一人からでも大丈夫です。問題から目をそらさず、解決に向けて一緒に取り組んでいきましょう。

様々な世代の夫婦が訪れる場所
当セラピーには、結婚して間もない若いご夫婦から、人生経験豊富な中高年のご夫婦まで、様々な事情を抱えた方々がご相談にいらっしゃいます。近年、夫婦カウンセリングの認知度が高まり、問題が深刻化する前に、早期から積極的に解決に取り組もうとされる若いご夫婦が増えてきたように感じます。お互いに未来に向けて努力する意欲が高まり、健全な関係を再構築して、新たなスタートを切っていくご夫婦を、私たちはこれまで数多く見てきました。
熟年夫婦の課題と未来
熟年夫婦のご相談は、長年の問題が積み重なり、根深いものとなっているケースも少なくありません。しかし、「人生100年時代」と言われる今、お子さんが巣立った後や、定年退職後の人生を、今のパートナーと本当に共に歩んでいけるのか、改めて冷静に考えてみる必要があります。複雑に絡み合ってしまった問題の根源はどこにあるのかを一緒に探り、失われた信頼関係を再構築していくお手伝いをします。
一度は愛を誓い合ったお二人です。ご夫婦それぞれが、一人の人間として精神的に自立し、ご自身の人生を幸せに生きられるように。そして、「あの時、離婚しなくて本当に良かった」と心から思える日がくるように。今こそ、関係改善に向けて、一歩を踏み出してみませんか?
参考文献・参考資料
- 小田切 紀子(2004) 離婚に対する否定的意識に影響を与える要因-首都圏の一般成人を対象にして- 家族心理学研究 第18巻 第1号
- 曽山いづみ(2018) 離婚家庭に対する心理的支援の現状調査 日本心理学会大会発表論文集
- 厚生労働省(2022) 令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/index.html